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2015年1月17日 (土)

田中鵬看著『詰将棋集』 その10

 最終局は「双玉還元玉煙詰」という前人未踏の異色の作品でお楽しみを願おう。
 双玉とは王様を二枚使用したもので、詰将棋の本質からいえば邪道の感なきにしもあらずだが、「煙詰」の定義が最多の駒から最少の駒にあるので、あえて最高の駒数四十枚使用の「双玉煙詰」を創作してみたわけ。筆者の「双玉煙詰」の第三号局であるが、内容が豊富なところから本局を選んでみた。作品は全体的に淡泊で手順は安易の域をでないが、逆王手の採り入れ、還元玉、受方桂不成、大駒の合駒、と盛沢山の趣向を凝らしてある。ユリカゴより墓場まで有為転変、死苦はつきものだが49より出でて49で詰む。百十九手の長道中は人生街道にさも似通つていよう。
 双玉を邪道とみないなら、本局は詰将棋史上屈指の大傑作に仲間入りできるであろう。

双玉還元玉煙詰「人生」

詰将棋パラダイス 昭和三十七年十月号に発表

Para61651357

48金、59玉、49金、同玉、38銀、58玉、47角、57玉、59龍、66玉、77と、同桂不成(第一図)

(第一図は77同桂不成まで)

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※奇手77桂不成
48金~49金は29龍を世に出す手段。38銀の"両王手"に58玉は当然の逃げ、ここで49龍は57玉、47龍、68玉で失敗。47角~59龍~77とは必然手。77とに同桂不成が鬼手。成ればどうなるか?

第一図以下…87同銀、同と、67歩、同玉、58龍、66玉、78桂、同と、76と、同玉、78龍、86玉(第二図)

(第二図は86玉まで)

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※龍の追撃
第一図の77同桂不成のところで同桂成では67歩、同と、同銀、同玉、58龍、66玉、ここで67歩と打てるので同成桂、76とで早詰。77銀~67歩~58龍~78桂は手順の攻め。76と~78龍に86玉が本筋。

第二図以下…77龍、85玉、75と、94玉、85と、同玉、74角、94玉、95歩、84玉、75龍、93玉(第三図)

(第三図は93玉まで)

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※昇竜
77龍と一歩近づく。85玉に75と~85とは邪魔駒消去で、74角と跳躍活用を図る。94玉が最善の逃げで、95歩に84玉、75龍に93玉と、スルリスルリと巧妙に体をかわす。

第三図以下…94歩、同玉、85龍、93玉、83角成、同成桂、94歩、同成桂、92と、同玉、94龍、82玉(第四図)

(第四図は82玉まで)

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※角を犠牲に龍の追撃
94歩は取らざるを得まい。85龍と迫り93玉に83角成と犠牲に供する。同成桂に94歩と打ち、92とと捨てて94龍と進撃。93合駒は84桂~81とがあり簡単。82玉の逃げは当然。

第四図以下…81と、同玉、71歩成、同金、同香成、同玉、74龍、72角、62金、同金、同と、同玉(第五図)

(第五図は62同玉まで)

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※"逆王手"に注意
81とと軽く捌いて71歩成、同金に83龍と突つ込んでは、82角合の"逆王手"でアツといつても後の祭りだ。71香成~74龍と追撃。72角の大駒合は、"煙詰"では他に例が一局あるだけ。62金と打つてキレイに精算する。

第五図以下…61金、同角、同桂成、同玉、53桂、同角、43角、51玉、52角成、同玉、53歩成、同玉(第六図)

(第六図は53同玉まで)

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※一連の軽手
61金でもう一度キレイに駒交換をする。53桂が軽手で逃げはいずれも早詰。同角に43角~52角成が軽手。53角を奪取したところでは向かつて左半面はキレイに消滅して、主役の龍以外の駒は見当たらぬ。

第六図以下…35角、42玉、43と、同玉、44龍、52玉、53龍、41玉、31と、同玉、22と、同玉(第七図)

(第七図は22同玉まで)

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※龍角一体の攻撃
85角と一コマ離して打たねば効果はない。42玉に43ととくれてやり44龍、52玉、53龍は必然の追い手順。41玉に31とと軽く捨てて22とで銀を入手。龍追い回されていよいよ終盤を迎える。

第七図以下…33銀、21玉、51龍、12玉、42龍、13玉、24角、同香、22龍、14玉、24銀成、同飛(第八図)

(第八図は24同飛まで)

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※難解な変化
83銀と打ち51龍~42龍に13玉は必然手の連続だが、次の24角に対する同飛の変化が難解だが解説のスペースがない。御研究願いたい。24銀成、同飛のところ15歩、同玉、24銀不成の手順前後は小キズだ。

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引用者注記
24角に対して同飛は同銀成、同玉、25飛、34玉、45龍、33玉、35飛、22玉、42龍、13玉、25桂、24玉、44龍、15玉、16歩、同玉、27銀左、15玉、26銀、16玉、17銀直まで113手。
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第八図以下…15歩、同玉、16香、同玉、27銀左、同成香、同銀、17玉、18香、同金、同銀、同玉(第九図)

(第九図は18同玉まで)

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※"逆王手"
15歩~16香と玉を誘う。王と玉との対決だ。27銀左に同成香は"逆王手"だが同銀ですぐはずせる。17玉に18香と打ち金を入手する。盤上二枚飛と二枚玉の対抗で面白い形だが、収束は目前にある。

第九図以下…28金、19玉、
29金、同飛成、同龍、同玉、23飛、39玉、28飛成、49玉、48龍(詰上り図)まで百十九手詰

(詰上り図は48龍まで)

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※人生の終末
28金、19玉、29金、同飛成、同龍、同玉で王様二枚だけとは寂しい。23飛と打ち28飛成と帰つて48龍までにて大団円となる。49(死苦)に始まり49(死苦)に終わる。人生観の象徴というべきか。

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「近代将棋」1987年3月

鵬看の詰将棋エッセー
煙詰は誰でも作れるのか

田中鵬看

 詰将棋。何という素晴らしい芸術的代物であろう。私が昭和三十五年、煙詰四局を引っさげて本誌へデビュー。超人よ大天才よと、詰棋界を騒がせて二十七、八年になる。今では煙は誰でも創作出きると言う御仁まで出てきた。今は平凡なる煙は通じないのである。しかし一流作家で、煙を一局すら創作していない方は、無数にいる。
 「煙は誰でも作れる」この一語に私は立腹した。私は煙しか創作出きない力量しか持っていないように聞こえたからである。本誌が十八才の折、私は全駒無防備玉を二局創作した。兄の"ひとり旅"で、テレビ(読売)の11PMに内藤九段と出演した。もちろん新聞週刊誌にも書き立てられた。弟の"恋路"は玉の逃げなどの別れもなく、すべて限定手でまとめ、と金は五段目までに押さえた。創作時間はわずか10時間。そんな芸当が出来る作家が、当時はいたであろうか? その後、本誌二十才の折、種々の歩なし図式を連載した。
 話はさかのぼり、黒川一郎氏が趣向を入れた煙を創作すれば、私は都玉、還元玉、双玉等、種々のおもむきを変えた煙を連発した。新聞にでかでか書き立てられ、毎日新聞の本欄には、十号、十一号と煙が出きるたびに掲載された。まるで台風のように…。三年半前に死亡した父は、友人知人にあれは(煙のこと)いくらくらいの金になるのかと聞かれ、一銭にもならぬと答えた。友人は、なァんだ金にはならんのかと、馬鹿にされたとの事。
 以来私は煙創作を止めた。父がいとおしくてならなかったのである。私も病苦と闘いながら創作してたので、ことさら詰棋創作から遠ざかったのである。しかし私は死火山ではなく、時々噴火した。まるで三原山のように…。詰棋と、マラソンと、重量挙げ、は苦しいばかりで金にはならないのであった。しかしマラソンは金になるようになったのである。イギリスのマラソンで優勝した瀬古は900万の賞金をせしめたのである。億万長者で詰棋が大好き、そんなスポンサーがなあと、幾度思った事か。
 話は一転、1519手詰の超長手数詰を創作した、橋本孝治という天才が出現したのだ。二年も三年もかけて大作を作る人は多い。これは天才とはいえない。ごく短期間で、各れ一人の力で奇抜な作品を創作出きる人が天才である。又、煙に戻るが、小生の五局目、雲龍は三時間で完成した。誰も信用しないであろうが事実である。遠角を入れるのに入れるのに三日かかった。結局余詰があったが、数秒で修正した。私の難点は、自陣の小駒成駒が多かったことである。それで自陣の小駒成駒のない"完全周辺めぐり還元玉煙詰"を温存していたが、七條兼三氏に先を越された。コロンブスの卵ではないが、早い者勝ち。しかし私はそれに異存がある。なぜか後から生まれた人は損をするからである。又、今だに看寿看寿というが、昭和の詰棋は最早看寿を完全に抜いている。第二期黄金時代であるが、まだ歯が抜けている。或る人から黒川氏と私のいない詰棋はアクビが出ると便りがあった。黒川氏は私が尊敬する方であるがもう引退すると言うような便りがあったのである。
 東の豪腕、駒場和男氏、西に怪物田中鵬看がいることをお忘れなく。若い人は私を知らぬ人が沢山いると思う。私は病弱でなければ棋士になっていたと思う。もし私が棋士になっていたら、詰棋界も大きく変っている事だろう。
 超長手数詰について又少し語ろう。私は超長手数詰にはあまりというより全く手を染めなかった。なぜなら命を賭けて創作した新扇詰(873手詰)の奥薗氏。そっとしてあげておきたかったからである。そこへ山本昭一氏の"メタ新世界"(941手詰)私は改作して1000手超えを狙ったが、991手で失敗。そこへ1519手詰。実は私の取っておきの素材だったのです。馬鋸を使用しなければと数年前より考えていた。慢性気管支炎で半年棒に振ったばかりに先を越された。作品は実にうまく仕込まれている。これを破れるか? 新人類は何を考えるかわからない。今だに私のカムバックを希望しすすめる人が多数いる。持病を三つも四つも持っている私には大作を作る事は苦痛この上ない。しかしもう一花も二花も咲かす所存である。黒川流と一寸変った趣向詰(あまり疲れない)を主に創作する気。とにかく敵は誰でもなく、病が最大の難敵なのである。
 何かとごちゃごちゃ書いたが、詰棋の諸君の頑張りを願う。大いに奇作大作傑作を創作し暴れんことを。

 戯作二題

 たわむれに創作した作品。歩18枚と香4枚の無防備玉、還暦61才の人に捧げる。特に京都府(香と歩)の人に捧げる。洒落である。還元玉でもある。歩と、と金と、成香で追う趣向は看寿の作にあるのは承知であるが、序の趣向と組合わせてあるので新趣向である。小生はかに座。玉が横に這うので、表題は「かに」にした。かにの漢字が見えない、天眼鏡で見ても。困ったものである。

 これもたわむれ作品。変化、紛れは香歩問題と同様、安易なので省略する。表題はどなたか、つけて下さい。



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引用者注記

おかしなところもあるが、すべて原文のまま。

は61手詰。
は47手詰。

このあと作者は曲詰を
6局発表しただけです。


おわり

2015年1月16日 (金)

田中鵬看著『詰将棋集』 その9

 本局を一見して、諸賢はまず奇異の感に打たれたことだろう。盤上に王様一人ぼつち、四方八方皆敵駒だ。正に一匹狼である。
 此の「全駒使用無防備玉」は創作至難説が濃厚だつたもので、"煙詰"が"希少価値"の王座を失つた現在、此の「全駒使用無防備玉」あたりが、人智で創作できる範囲の最も困難な部類に入るのではないか?未だ未開で創作の可能性ある困難な"条件作"は二三あるが、筆者は秘かにその開拓を企てている。
 本局は筆者の身の上に起こつた事柄を詩い上げた抒情作品である。私は或る人に恋をした。年令の相違はどうしようもなく、悶悶の日を送り遂に破局。私は地平の果てにただ一人佇んでいるような寂漠たる心境に陥り、第一作「ひとり旅」を完成。本作もその余韻を詩つたもので「恋路」と命名。一人だけ寂しく彷徨する恋の路は他ならぬ片想いを表現しているわけ。筆者の涙の結晶で生まれた珍品なのだ。

全駒使用無防備玉「恋路」

近代将棋 昭和四十三年四月号に発表
塚田賞受賞

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86金、同玉、77金、96玉、95馬、同玉、94と、96玉、95と、同玉(第一図)

(第一図は95同玉まで)

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※入玉阻止
"無防備玉"玉に味方がなく無防備状態からきた名称である。初手を95馬では87玉と潜られてつかまらぬ。86金から77金でまず入玉を阻止する。95馬~94と~95とと捌いて74飛に自由を与えよう。

第一図以下…94飛、同玉、93桂成、95玉、85と、同玉、76銀行、95玉(第二図)

(第二図は95玉まで)

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※ひとり旅
94飛と長打の威力で96玉を許さない。同玉に93桂成は絶対手。95玉の逃げも必然の一手で、85とと寄つて76銀行が本筋。76銀引では詰まない。頼る味方の一人もなく寂しい玉の"ひとり旅"である。

第二図以下…94成桂、同玉、84と、同玉、75銀右、94玉、85銀、同玉、86金(第三図)

(第三図は86金まで)

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※"軽趣向"
94成桂、同玉、884とに95玉は、85と、96玉、87金で詰み。同玉に75銀右と繰り出す。94玉に85銀と軽く捨てて86金と進撃。ここらあたりの手順は"と金"と金銀で奏でる軽い"趣向"といえる。

第三図以下…94玉、93と、同玉、83と、同玉、74銀右、93玉、84銀、同玉、85金(第四図)

(第四図は85金まで)

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※"趣向"に酔う
94玉に93と~83とと引いて軽やかに局面は移り変わつて行く。74銀右から84銀と美しい銀の調べに諸賢を夢の桃源郷に誘う。85金と迫る。金銀協力しての攻撃作戦だ。玉はジリジリ後退の一途を辿る。

第四図以下…93玉、83銀成、同玉、73と、同玉、63歩成、83玉、73と、同玉(第五図)

(第五図は73同玉まで)

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※軽妙なサバキ
93玉に83銀成で銀は消えてしまつた。同玉に73とと思い"と金"を捌く。63歩成に83玉は必至。73とと軽快に押しやつて、中央の"と金"の運用を図る。89桂がなければ"煙詰"と思われる程のサバキだ。

第五図以下…64と行、83玉、74と、72玉、63と右、61玉、51桂成、同玉、41歩成(第六図)

(第六図は41歩成まで)

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※"と金"の活躍
64と行が正しい。83玉と逃げて手をかせぐのが本筋。74とから63と右は必然手。61玉と急転直下追い落された。51桂成、同玉に41歩成と裸の王様を追い回す。一匹狼だがなかなか音を上げない。

第六図以下…61玉、51と、同玉、42と、同玉、32香成、51玉、42成香、同玉、23香成(第七図)

(第七図は23香成まで)

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※15角の射程を生かす
61玉の逃げに51とと押売りして、42とには同玉の一手。32香成、同玉では23香成で本筋に入るが二手早詰になる。51玉の逃げが正解。42成香で23香成は61玉で詰まぬ。42成香~23香成が本手。

第七図以下…41玉、32成香、同玉、33歩成、31玉、21香成、同玉、11香成、同玉(第八図)

(第八図は11同玉まで)

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※三枚香の犠牲
41玉の逃げは正しく、31玉では21香成と先にやつても本筋に入ることができる。32成香と軽く捨て33歩成。31玉に21香成~11香成に31玉は、42と、22玉、12歩成、23玉、24との早詰。

第八図以下…12歩成、同玉、24角、21玉、12飛成、同玉、13角成、同玉、24と、同玉(第九図)

(第九図は24同玉まで)

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※豪快大駒捨て
12歩成から24角の"アキ王手"は必至。21玉に12飛成、同玉に13角成の連続大駒捨ては、本局の収束をピリッと引き締めたものにしてある。24ととスリ込む。12玉なら押して行くまで。同玉で終局近しを感ずる。

第九図以下…34と行、14玉、25銀、15玉、26金、同玉、27金、15玉、16金(詰上り図)まで九十三手詰

(詰上り図は16金まで)

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※恋は終りぬ
34と行に13玉は23とで早い。14玉に25銀、15玉に26金と捨て、27金~16金とスリ上がつて終局を迎える。一枚の無駄駒もなく、見事なサバキは芸術品の香りさえしよう。


私は或る人に恋をした。
まったくどうでもいいことだが、入院中に看護師さんに恋したらしい。

つづく

2015年1月15日 (木)

田中鵬看著『詰将棋集』 その8

 本局も「煙詰」である。百二十七手詰の長尺物で「煙詰」史上では三位にランクされる長編だ。筆者の十一号局にあたり、作品完成の日にたまたま"初雪"を見たので表題に採り入れた。どうして消えるのかと心配されるような駒が、いとも鮮やかに「初雪」の消える如く捌けて行く。難解さはないが序盤より数十手、二枚角の連携に持ち込むまでの手順は、「煙詰」であるだけに抜群の巧妙さと自負している。特に67角の八面六臂の大活躍には目を見張るものがあろう。
 余談になるが、「煙詰」にも新機軸を採り入れたものも出現しているので、紹介しておこう。大駒を除き盤上三十五枚の小駒が詰上り三枚になる「小駒煙詰」で現在六局存在する。(筆者も一局あり)盤上四十枚の駒が詰上り三枚になる「双玉煙詰」で筆者のみ三局完成。盤上三十九枚の駒が詰上り四枚で都にて詰む「都玉煙詰」で、某氏が三局だけ完成したのである。「煙詰」よりいずれも創作は至難を窮める。
 余談はさておき本題の玉は雪隠で討ち取られるのだ。

煙詰「初雪」

近代将棋 昭和三十八年四月号に発表
塚田賞受賞

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69龍、59金、58角、38玉、48と、28玉、27と、同銀成、29金、同玉(第一図)

(第一図は29同玉まで)

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※好手29金
盤上三十九枚の駒配置、詰上り駒三枚になる妙趣をジツクリと味わつていただこう。69龍は"此の一手"で、48とでは89玉と相手にされず歩詰になる。59金は必至。58角~48と~27とは必然の成り行き。29金も絶対手だ。

第一図以下…59龍、39金合、同龍、同玉、49と、28玉、39金、18玉(第二図)

(第二図は18玉まで)

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※短い龍の一生
59龍と金を奪取。18玉の逃亡には19歩、17玉、18金、同成銀、同歩、同玉、36角以下詰み。39金合は、止むを得まい。同龍と切つて捨て局面の進展を図る。49と、28玉に39金と平凡に迫つて行く。18玉は当然の逃げ。

第二図以下…59龍、39金、同龍、同玉、49と、28玉、39金、18玉(第三図)

(第三図は28銀まで)

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※金銀の攻撃
19歩は軽手。取れば29金打の即詰だ。17玉に18金と打つて精算銀を入手する。ここで36角のノゾキは27歩合で失敗。29銀から28銀が平凡ながら正着。序の手順は平易の域を出ないが、今後のサバキが楽しみだ。

第三図以下…16玉、26と、同玉、37銀左、15玉、16歩、同玉、27銀、同玉(第四図)

(第四図は27同玉まで)

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※二枚銀の活躍
16玉は絶対の逃げ、26とと捨てて37銀引が本筋。15玉と一歩遠ざかるが、16歩と叩いて玉を吊り出す。27銀と捌くのが軽手で同玉の一手。58角はグツと玉を睨んでいる。

第四図以下…38と、16玉、27と、同玉、28金、16玉、49角、15玉、26銀、同玉(第五図)

(第五図は26同玉まで)

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※角の活動開始
38と~27とと捌いて56角に自由を与える。28金、16玉は当然の応酬。49角と引いて玉に長打力を見舞う。15玉は絶対。26銀と捌き一歩一歩と玉を追い込み締め上げて行く。14玉の逃げは24と以下早詰だ。

第五図以下…27金、15玉、16金、14玉、24と、同と、15香、同と、同金、同玉(第六図)

(第六図は15同玉まで)

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※金のスリ上がり
27金、15玉、16金は必然の推移だ。24とと成香を奪う。同玉は、34角成以下簡単。同とに15強、同と、同金、同玉は当然手の応酬。すでに三分の一の駒は盤上より姿を消し二枚角の活躍を思わす。

第六図以下…16角成、24玉、34と左、13玉、14歩、同玉、58角、13玉(第七図)

(第七図は13玉まで)

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※二丁角の威力
16角成。14玉の逃げは58角、24玉、34と行、13玉、24と、同玉、34馬以下、一歩使用せずに本筋に入るので早詰を生じる。24玉が本筋。34と行、13玉に14歩のタタキで58角と玉を射程に入れる。

第七図以下…24と、同玉、34馬、13玉、12馬、同玉、67角、21玉(第八図)

(第八図は21玉まで)

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※馬の最後
24とのサバキから34馬と馬角の協力で玉は次第に後退の一手を辿る。13玉の逃げに12馬は英断。同飛は14金の一発だ。同玉に67角とのぞく。よくチョロチョロする角で玉にとつては憎き奴だろう。

第八図以下…22金、同飛、同と、同玉、23飛、31玉、42と、同玉、51銀不成、同玉(第九図)

(第九図は51同玉まで)

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※大物飛の入手
22金で飛を入手する。23飛の直打が急所で、24飛と離しては31玉で不詰になる。31玉に42とは当然手。51銀不成と桂を奪取、同玉以外の逃げはいずれも簡単な早詰。

第九図以下…53飛成、61玉、71歩成、同玉、73香、82玉、72香成、同玉(第十図)

(第十図は72同玉まで)

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※新スター龍の誕生
向かつて右半分の盤上はキレイに消滅してしまつた。53飛成。新しき主役の誕生で、後半の追い込みの立役者となるのだ。61玉に71歩成と香を獲得、73香が軽手。82玉に72香成と軽く成り捨てる。同玉以外仕方あるまい。

第十図以下…94角、81玉、93桂、91玉、51龍、82玉、62龍、93玉、85桂、同成香(第十一図)

(第十一図は85同成香まで)

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※角の跳躍
よく活躍した角ではあるが最後の御奉公の三段跳94角だ。81玉に93桂は必至。91玉も絶対手。51龍と突つ込む。82玉に62龍と近づかねば73玉とトン走される。93玉に85桂は当然ながら軽手。

第十一図以下…73龍、94玉、85と、同玉、86と、同桂、同歩、94玉、95香、同玉(第十二図)

(第十二図は95同玉まで)

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※収束近し
73龍と迫り94玉に85とと香を入手。86と、同桂、同歩も必然の手段。86同玉では73と以下早詰。94玉と後退するのが本筋。95香には同玉の一手。最早大半の駒は消え失せ週末の侘びしさを感じる。

第十二図以下…96歩、同玉、88桂、同金、97香、86玉、77と、97玉(第十三図)

(第十三図は97玉まで)

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※小味な手順の妙
96歩と香を奪取、同玉に88桂が好手。同金で金の守備位置は変更した。97香の追打ちをかける。同玉は88と以下簡単。86玉の逃げは玉の最後のアガキだ。77とに止むなく97玉と逃亡する。

第十三図以下…88と、同玉、87と、99玉、98金、同玉、78龍、99玉、88龍(詰上り図)まで百二十七手詰

(詰上り図は88龍まで)

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※雪隠で御臨終
88と、同玉、87と、99玉で玉は雪隠まで追い詰められた。98金が最後の軽手で78龍と急降下、99玉に88龍までの大往生となる。延延百二十七手、"煙詰"の解後感は如何なる詰将棋よりスカツとしよう。



煙詰」史上では三位
この時点では
黒川一郎作「金烏」(詰将棋パラダイス1964/02)141手詰
近藤善太郎作「初夢」(詰将棋パラダイス1970/02)131手詰
に次ぐものです。
 

黒川一郎作「金烏」「詰将棋パラダイス」1964年2月

Para61652373

28銀右、29玉、39金、18玉、27銀、同と、29金打、17玉、28金直、16玉、
27金、同玉、28金、16玉、17歩、15玉、25と、同玉、36銀、15玉、
16歩、同玉、27金、15玉、14と、同玉、24と、同玉、35銀、14玉、
15歩、同玉、26金、14玉、13と、同玉、23と、同玉、34と、同と、
同銀、13玉、14歩、同玉、25金、13玉、12と、同玉、22と、同玉、
32歩成、同歩、53香成、77歩、同馬、同銀成、33銀左成、同歩、同馬、同桂、
同銀生、11玉、23桂、21玉、22歩、12玉、13歩、同玉、24金、12玉、
11桂成、同玉、21歩成、同玉、32銀生、11玉、12歩、同玉、23金、11玉、
21銀成、同玉、32香成、同龍、同金、同玉、42成香、同玉、44飛、52玉、
43飛上成、61玉、63飛成、71玉、41龍、82玉、81龍、同玉、92香成、同玉、
84桂、82玉、72龍、93玉、73龍、83桂、94歩、同玉、95香、同桂、
同成桂、同玉、75龍、94玉、95歩、83玉、72龍、84玉、96桂、95玉、
75龍、96玉、85龍、97玉、87金、同成銀、98歩、同成銀、同金、同玉、
89銀、97玉、88銀、98玉、87龍、89玉、77銀、79玉、88龍、69玉、
68龍
まで141手詰

23と、同玉、22と左、24玉、35銀、14玉、41馬、32銀合、同馬、同歩、26桂、15玉、16銀までの余詰あり。

 この余詰については、「将棋雑記」黒川一郎研究128に記載されています。




近藤善太郎作「初夢」「詰将棋パラダイス」1970年2月

Para66704509

12飛成、同玉、13と、同玉、14歩、12玉、13歩成、同玉、24と、12玉、
22歩成、同玉、32香成、同と、同香成、同玉、33と右、41玉、42銀、同金、
同と、同玉、43と、51玉、52金、同金、同と、同玉、63歩成、同と、
64桂、同と、53歩、同玉、54歩、同と、63金、同玉、54龍、62玉、
17馬、26桂、同馬、同歩、63歩、61玉、73桂、同歩、62歩成、同玉、
73香成、同玉、74と、同成香、83と、同玉、74龍、82玉、84香、83歩、
同香生、91玉、92歩、同玉、93歩、91玉、81香成、同玉、82歩、同玉、
94桂、81玉、92歩成、同玉、72龍、93玉、82龍、94玉、85銀、95玉、
96銀、同玉、85龍、97玉、98歩、同馬、同金、同玉、43角、99玉、
96龍、89玉、34角成、79玉、99龍、68玉、88龍、59玉、49金、同玉、
67馬、39玉、57馬、29玉、47馬、18玉、27銀打、同歩成、同銀、同玉、
36馬、17玉、77龍、28玉、37龍、29玉、47馬、18玉、19歩、同玉、
17龍、18金、37馬、29玉、18龍、同玉、28金、19玉、38金、29玉、
28馬
まで131手詰



この時点での小駒煙は次の6局?

作家名 作品名 発表誌 発表年月 手数
黒川一郎 嫦娥 詰将棋パラダイス 1963/10 103
駒場和男 驟雨 近代将棋 1965/05 101
藤井孝一 詰将棋パラダイス 1966/01 101
黒川一郎 雪女 詰将棋パラダイス 1966/01 111
花田尚一 詰将棋パラダイス 1970/04 105
田中鵬看 神武東征 詰将棋パラダイス 1970/07 115

黒川作と駒場作の間に、作者は小駒煙を「ある地方新聞に発表」(『近代将棋図式精選』P198)とありますが、それが「神武東征」の原図なのかどうか分かりません。

「都玉煙詰」の某氏とは、いうまでもなく駒場和男氏です。



つづく

2015年1月14日 (水)

田中鵬看著『詰将棋集』 その7

 二局目は「趣向詰」を解剖してジツクリと楽しんでいただこう。「趣向詰」とはどんな詰将棋か、簡単に考えるなら、同一手順の繰り返しが三、四回以上である詰将棋のことである。その趣向が難解か斬新奇抜であればある程、趣向の繰り返しが長ければ長い程、趣向が単発でなく複数で変化に富んでいるもの程、「趣向詰」としては優秀なのだ。
 「趣向詰」は長手数詰になるにもかかわらず、同一趣向の作が生じ易く、後者が知らずに発表されることがしばしばある。その場合後者の作品は、趣向の類似している度合いで作品価値はゼロになるのだ。"趣向詰は早い者勝ち"とよくいわれるのはその由縁だ。本作の後半の趣向の一部分に類似したものがすでに江戸時代の作品にある。もちろん筆者があとから知つたことではある。しかし本作の趣向は単発ではなく、右に左に玉を追う道程は非常に面白く楽しめよう。玉の往復二回半、「津波」の如き動きに一~四の線はキレイに消えて「煙詰」となる。あたかも"津波"に押し流されてしまつたかのように……。

趣向詰「津波」

詰将棋パラダイス(発行所名古屋市南区呼続町1-32文勝ビル402号)昭和三十六年四月号に発表
詰パラ大学院賞受賞

Para61650243

64成香、同玉、54と、74玉、65と、同玉、56銀、74玉、65銀、同玉(第一図)

(第一図は65同玉まで)

15jan10a_3

※ジヤマ駒消去
64成香と捨て、54とは、遠く12角が23金の質駒を見越して道を開けたのだ。65と~56銀~65銀と消すのは39馬のニラミを通すに他ならない。56の地点へ玉が出れば23角成が待つている。

第一図以下…29馬、38香、同馬、同と、56と、74玉、64と、同玉(第二図)

(第二図は64同玉まで)

15jan10c_2

※好手56と
29馬と寄つて合駒を強要する。38銀合では同馬、同と、56と、同玉、23角成以下の早詰。38香合が正手。同馬と切つて56とが好手。取れば23角成以下の早詰。74玉の逃げは必至。64とと手順の攻撃を続行。

第二図以下…65香、74玉、73と、同玉、93飛、72玉、62歩成、同金、同香成、同玉(第三図)

(第三図は62同玉まで)

15jan10d_3

※"趣向"の幕開き
65香は絶対手。これで香が三本並んだ。一波乱起きそうだ。73とと飛を奪取して93飛の離し打ちは当然手。72玉の逃げにこれより本番の"趣向"に突入する。62歩成から精算して金を入手する。

第三図以下…52歩成、同金、同香成、同玉、42歩成、同金、同香成、同玉(第四図)

(第四図は42同玉まで)

15jan10e_2

※香襖
52歩成、同金、同香成、同玉でまた金を入手。このように一連の手順を繰り返すのが"趣向詰"なのだ。42歩成、同金、同香成、同玉で玉方の金三枚はキレイにはがされて、玉の守備陣も手薄になつた。

第四図以下…32と、52玉、42金、62玉、52金打、72玉、71金、同玉(第五図)

(第五図は71同玉まで)

15jan10f_2

※妙着71金
32とは取れない。31と、同玉、21金以下の早詰があるからだ。52玉に42金、62玉に52金打と今度は金の並べ打ちだ。72玉に62金打では82玉、92飛成以下不詰だ。71金が絶妙の一手で局面は進展する。

第五図以下…61金、同玉、51金、同玉、41と、同玉、23角成、同龍、33桂、同龍(第六図)

(第六図は33同龍まで)

15jan10g_3

※桂を一掃
61金、同玉、51金と順次桂をハガシに掛かる。41と、同玉、ここで31とと手拍子に桂を取つてしまつては同玉で失敗。23角成と金を入手しておかないと後続手に窮する。同龍に33桂と"新趣向"の展開。

第六図以下…31と、51玉、43桂、同龍、41と、61玉、53桂、同龍、51と(第七図)

(第七図は51とまで)

15jan10h_2

※桂と"と金"の変奏曲
31とは手順だが同龍は43龍で簡単。51玉と逃走。43桂に逃げる手は龍の守備力が止まつていて容易な詰み。同龍に41ととダニの如く喰いつく。61玉に53桂、同龍の一手だ。こうして逐次玉を寄せるのだ。

第七図以下…71玉、63桂、同龍、61と、72玉、62金、同龍、同と、同玉(第八図)

(第八図は62同玉まで)

15jan10i_2

※龍の捕獲
51とと趣向は続く。71玉に63桂、同龍と同手順の応酬だ。61とに初めて72玉と二段目へ上がる。62金と打つて精算飛を獲得する。一~四線の筋は飛以外の駒はなくスツキリとして気持よかろう。

第八図以下…65飛、64歩合、同飛、52玉、54飛、42玉、44飛、32玉、43飛行成(第九図)

(第九図は43飛行成まで)

15jan10j_2

※妙防64歩合
65飛は限定打。変化が多くて書き尽くせぬが35成銀にネライをつけて打つた飛だ。64歩合が最善の防手。桂では早詰。同飛から52玉、54飛~44飛と寄り、43飛行成で玉の御臨終も近づいた。

第九図以下…21玉、22歩、31玉、91飛成、22玉、82龍、11玉、13龍、21玉、22龍(詰上り図)まで九十一手詰

(詰上り図は22龍まで)

15jan10k

※二枚龍の収束
21玉が最善の逃げ、22歩に31玉と最後の抵抗を試みる。91飛成と二丁龍で追撃されては玉もたまるまい。82龍、11玉に13龍と回つて22龍までの完結をみる。"二丁飛車に追われた夢を見た"である。



 引用者注記
 本局は、63飛上成、41玉、42歩、31玉、33龍、21玉、81龍、12玉、32龍、22合、21龍寄以下の余詰があります。


 とりあえず思い出すのは
九代大橋宗桂『将棋舞玉』第8番(1786年)でしょうか。

12mai0008

11角成、31玉、23桂、同龍、21馬、41玉、33桂、同龍、31馬、51玉、
43桂、同龍、41馬、61玉、53桂、同龍、51馬、71玉、91飛成、72玉、
73金、同龍、61龍、83玉、73馬、同玉、72飛、84玉、64龍、95玉、
92飛成、86玉、97龍、同玉、67龍、86玉、97龍、76玉、66金、同玉、
67龍
まで41手詰



つづく

2015年1月13日 (火)

田中鵬看著『詰将棋集』 その6

 巻尾の5局の解説を順次掲載します。

2

 その前に、答え合わせがしたい方はどうぞ。

作品番号 作意
7手詰 第31番 22金、同玉、34桂、12玉、32龍、同銀、22金
第39番 32金、同金、42飛成、同金、43桂、同金、32金
第43番 83角成、同玉、94角、同歩、84歩、93玉、73龍
第48番 49金打、同香成、28龍、同玉、17馬、同玉、27金打
第50番 16金、同と、35銀、同銀、15飛成、同玉、25金
9手詰 第52番 65桂、同金、74角成、同玉、73飛、同玉、84金、同馬、63龍
第57番 42飛、32歩、33角、同桂、23歩、31玉、43桂生、42玉、53金
第58番 23金、同桂、31飛成、同玉、41飛、22玉、32金、同玉、42飛成
第59番 23金、同玉、15桂、12玉、22飛、同玉、14桂、31玉、23桂生
第60番 24桂、同飛、21銀、同飛、22金、同飛、13銀、21玉、33桂生
第66番 12龍、同玉、22金、同玉、33桂左成、同桂、23香、同玉、13金
第67番 22金、同銀、13銀、同銀、21飛成、同玉、32銀、22玉、23銀打
第68番 24桂、同金、13金、同龍、23金、同龍、21角成、同龍、13金
11手詰 第73番 13角、同玉、12飛、同香、15飛、22玉、12飛成、同玉、23金、11玉、12香
第75番 13金、同玉、24角、12玉、13角成、同玉、14龍、同玉、11飛成、同銀、15香
第76番 15桂、同馬、24銀、同馬、33金、13玉、25桂、同馬、23金、同玉、33飛成
第77番 21角、31玉、43桂、同馬、32角成、同玉、31飛、同玉、33香、同馬、21飛成
第85番 37金、同歩生、38角、同歩生、28銀、18玉、19銀、27玉、28歩、17玉、35馬
第88番 42龍、同玉、33角生、同桂左、43歩生、31玉、32歩、同玉、52龍、31玉、42龍
第90番 31龍、同玉、23桂、同飛、22角、同玉、34桂、31玉、41馬、同玉、42金
13手詰 第91番 14飛、13角合、同飛成、同玉、14飛、23玉、12角、同香、24飛、13玉、22飛成、同歩、24銀成
第92番 81角成、同玉、63馬、71玉、81馬、同玉、73桂、71玉、63桂、同歩、61桂成、同玉、62金
第93番 23桂成、同玉、35桂、22玉、32角成、同玉、23銀、21玉、32金、11玉、22銀成、同角、23桂生
第94番 73銀生、同玉、74飛、82玉、71角成、同金、93角、同玉、94歩、82玉、71飛成、同玉、72金
第101番 23角、同金、31飛、22玉、12飛、同玉、32飛成、22金、23桂成、11玉、22龍、同銀、12金
第102番 31角成、同玉、42銀、22玉、32角成、13玉、14歩、12玉、13金、11玉、21馬、同玉、22金打
第105番 23馬、11玉、12香、同飛、33馬、22歩、23桂、21玉、32馬、同玉、42銀成、21玉、31成銀
15手詰 第111番 33角、12玉、22角成、同玉、33金、11玉、12香、21玉、32金、12玉、23馬、同玉、33銀成、12玉、22金
第112番 23歩成、同桂、11飛、同銀、25桂、12玉、32飛成、22金合、21龍、同金、 24桂、22玉、21馬、同玉、32金
第117番 24桂、11玉、22龍、同玉、32桂成、12玉、21角、11玉、22龍、同金、 12歩、同金、同角成、同玉、22金
第120番 22角、21玉、32角、12玉、24桂、同歩、11角成、同玉、21角成、同玉、 23香、31玉、22香成、41玉、32成香
第129番 13歩成、同金、14桂、同金、23歩、12玉、13歩、同金、21飛成、同玉、 31角成、同玉、13馬、同香、22金
17手詰 第134番 33馬、同金、32金、同金、12金、同香、23香、11玉、21香成、同玉、 31金、11玉、23桂、同金、21金、同玉、31龍
19手詰 第135番 11角成、同玉、23桂、同銀、22角、21玉、13桂、12玉、24桂、同銀、 11角成、同玉、21桂成、同玉、23香、12玉、22香成、13玉、23金
21手詰 第142番 23角成、同金、14銀、同金、23飛、12玉、21銀、11玉、22飛成、同玉、 32香成、13玉、23桂成、同玉、33歩成、13玉、12銀成、同玉、22成香、13玉、23成香
23手詰 第144番 22と、同玉、13歩成、同玉、24と上、12玉、23と左、11玉、22と、同玉、 33と左、31玉、32歩、21玉、22歩、11玉、12歩、同玉、23と上、11玉、21歩成、同玉、22と

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 「煙詰」…それは妖しくも美しい、詰将棋という姿をかりて結実された一個の芸術品ではありますまいか。そう称した人がいる。
 今から約二百年の昔、時の名人伊藤宗看の弟大天才伊藤看寿(贈名人)によつて第一号局が誕生、いまやその氾濫時代とも呼ばれている。「煙詰」とは実に華麗で、鑑賞する人をして魅了せずにはおかない詰将棋の芸術品ともいうべきところか。盤上三十九枚の駒が王手王手と詰めあげて行くうちに、駒は木の葉でも散るように消えてゆき、詰上りに駒三枚になるという魔術のような作品のことで、解後感の爽快さは筆舌に尽くし難いものがあろう。
 二百年の泰平の夢を破り、昭和二十九年に某氏により第二号局が誕生、現在は粗製濫造され、新機軸の「煙詰」をも含めて約六十局に達している。希少価値の王座よりすべり落ちた「煙詰」ではあるが、その創作の困難さは大変である。筆者は現在十五局発表している。「煙詰」の希少価値を落した張本人は筆者であるが仕方あるまい。なお「煙詰」創作に達成した人は、現在まで約二十名に達している。

還元玉煙詰「アトラス」

近代将棋(発行所東京都世田谷区宮坂1丁目42番22号)昭和三十五年五月号に発表
塚田賞受賞

50692104

79と、同玉、78金、89玉、88金、同玉、87と、同玉、77龍、96玉、95と、同玉(第一図)

(第一図は95同玉まで)

15jan10a_2

※玉の飛翔
百手オーバーの長道中ゆるりと参ろう。79とは絶対手といえよう。79同玉のところ同金では収束になつて早詰を生じる。78金~88金~87とで玉を吊り上げる。77龍から95とは必然の追撃。

第一図以下…75龍、94玉、93と、同玉、82馬、同成香、同銀不成、同玉、83歩成、同玉、73歩成、同成桂、89香(第二図)

(第二図は89香まで)

15jan10b_2

※至妙"89香"
75龍に94玉、93とから82馬が好手。94玉は72馬で95香まで。82で駒を精算して83歩成~73歩成と軽手の連発。89香が絶妙窮まる遠香で、遠大なネライは収束近くで諸賢にわかろう。

第二図以下…72玉、73龍、同玉、65桂、72玉、74飛、61玉、62歩、同玉、73飛成(第三図)


(第三図は73飛成まで)

15jan10c

※龍のバトンタツチ
72玉の逃げは必至で、歩の中合は数十手先で早詰になる。73龍と切つて捨て65桂は、44飛の今後の活躍を見越してのことだ。74飛と長打力を発揮して玉にネライをつける。61玉に62歩は絶対手。73飛成も必然手。

第三図以下…61玉、63龍、71玉、73龍、61玉、53桂不成、同と、51歩成、同玉、53龍(第四図)

(第四図は53龍まで)

15jan10d

※二代目龍の始動
頼みの立役者二代目の龍が誕生した。61玉に63龍、71玉に73龍と執拗に追撃の手を緩めない。再度の61玉に今度は53桂と跳ねられる。同とに51歩成と軽く成り捨て、53龍と玉を追う。

第四図以下…41玉、31歩成、同玉、22歩成、同玉、34桂、同成香、42龍、21玉、13桂(第五図)

(第五図は13桂まで)

15jan10e

※玉の横バイ
41玉に31歩成~22歩成と軽やかに捌く。もう諸賢もとつくの昔にお気付きのことと察する。盤上の駒が次々と消え去つていく過程を。84桂で桂を入手、42龍と追い込み13桂と迫る。

第五図以下…11玉、31龍、12玉、21龍、13玉、25桂、同成香、14と、同玉、25と(第六図)

(第六図は25とまで)

15jan10f

※龍の追い回し
11玉と雪隠へ逃れる。31龍、12玉、21龍、13玉と絶対手の応酬だ。25桂は香を質駒にする手段。同成香はどつちで取つても一緒。14とで玉を誘つて25とと香を取るのはネライの実現。

第六図以下…同成香、15香、同成香、同歩、同玉、16歩、同玉、17歩、同玉、18香(第七図)

(第七図は18香まで)

15jan10g

※タタキ歩で玉を呼ぶ
25同成香に15香でサツパリと精算する。16歩~17歩と叩き玉を連れ出し、18香のデンガク刺しで馬の入手を図る。序盤89香の妙手に中合はないといつた。歩の中合でもしていれば、18歩で簡単だ。

第七図以下…18同馬、同と、同玉、36角、19玉、12龍、28玉、18龍、39玉、49と、同玉(第八図)

(第八図は49同玉まで)

15jan10h

※好手36角
18同馬に同とと角を捕獲。36角の限定打が58の地点へ利かした好手だ。19玉、12龍、28玉に18龍と大回転を図る。49とと金を入手。最早収束も間近い感がする。

第八図以下…58角、同金、39金、59玉、49金打、同金、同金、同玉、48金、59玉(第九図)

(第九図は59玉まで)

15jan10i

※玉を裸にする
初手の79とに同金は収束で早詰が生じると述べた。79金の形なら58龍で詰む。58角~89金が軽手。49金打に68玉は89香の威力で詰み。二十五手目の89香の意義はおわかりであろう。

第九図以下…58金、69玉、68金、79玉、78金、89玉、88金、99玉、98金、89玉、88龍(詰上り図)まで百七手詰

(詰上り図は88龍まで)

15jan10j

※金のズリ押し
58金以下は金をズリ押して最後は龍のトドメとなる。89の地点より発して89の地点に還元した玉、正に"アトラス"である。最初盤上に三十九枚の全駒が詰上り三枚になつた。煙の如く駒は消え失せたのだ。


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「約二十名」とありますが、まえがき執筆時点で完全作(とされていた作品)を発表していたのは18名ではないかと思います。
煙詰作者(1971年2月まで)
貧乏煙や小駒煙も含む

作家名 発表誌 発表年月 手数
伊藤看寿 将棋図巧第99番 1755 117
黒川一郎 風ぐるま 1954/03 95
植田尚宏 王将 1954/09 111
駒場和男 風ぐるま 1956/03 93
巨椋鴻之介 近代将棋 1960/01 117
北川明 近代将棋 1960/01 99
田中鵬看 近代将棋 1960/05 ※107
長谷川愈洋 近代将棋 1961/09 121
藤井孝一 詰将棋パラダイス 1963/03 99
田中至 詰将棋パラダイス 1963/12 93
横田進一 詰将棋パラダイス 1963/12 121
山田修司 詰将棋パラダイス 1964/05 ※93
黒岩郁典 詰将棋パラダイス 1966/08 85
若島正 詰将棋パラダイス 1968/09 97
佐藤吉男 詰将棋パラダイス 1969/01 105
森田拓也 詰将棋パラダイス 1969/09 121
近藤善太郎 詰将棋パラダイス 1970/02 131
花田尚一 詰将棋パラダイス 1970/04 ※105

※田中鵬看(輝和)は同時に4局発表。107手詰は最長手数の「アトラス」
※『近代将棋図式精選』の不完全指摘表(森田銀杏氏作成)に
長谷川愈洋作は不詰作であることが記載されているが、初手から19手詰の余詰もある。この時点では完全作とされていたようである。
※山田修司作は貧乏煙、同時に歩無し煙65手詰も発表。花田尚一作は小駒煙



引用者注記
先後記号は省略。及び「7九玉」は「79玉」のように表記を変えた。
あとは原文のまま。次回以後も同様。

つづく

 

2015年1月12日 (月)

田中鵬看著『詰将棋集』 その5

15手詰

第111番 『詰将棋工学母艦』第24番に収録。
111

第112番
112

第117番
117

第120番
120

第129番
129


17手詰

第134番
134


19手詰

第135番
135


21手詰

第142番
142


23手詰

第144番
144


 25手詰は当初予定していた作品が潰れ、一局だけ残った完全作はあまり良いとは思えませんでしたので省略します。


つづく

2015年1月11日 (日)

田中鵬看著『詰将棋集』 その4

 今回は11手詰と13手詰、次回は15手詰~23手詰です。

11手詰

第73番
073

第75番
075

第76番
076

第77番
077

第85番 『詰将棋工学母艦』第504番として収録されています。
085

第88番
088

第90番
090


13手詰

第91番
091

第92番
092

第93番
093_2

第94番
094

第101番
101

第102番
102

第105番
105

つづく

2015年1月10日 (土)

田中鵬看著『詰将棋集』 その3

 本書の収録作が150局であることは既に述べました。
 内訳は次の通りです。

手数 局数 完全作 実戦型※
3手詰 10 10 6
5手詰 20 19 10
7手詰 20 16 11
9手詰 20 20 14
11手詰 20 17 12
13手詰 20 17 11
15手詰 20 18 15
17手詰 4 2 3
19手詰 4 2 3
21手詰 4 3 1
23手詰 4 2 3
25手詰 4 1 2
合計 150 127 91

※実戦型には端の桂または香がある作品も含む。

 これらの作品には、入玉図や中段玉もあるので、新聞用というわけでもなさそうです。
 これとは別に、長篇5局の解説があります。

 序文、まえがきを読んで、本書の内容を最も正確に言い当てていると思ったのは、もちろん作者です。実戦型の作品が多いことからも推測がつくと思いますが、詰将棋マニア用の作品集ではありません。従って、マニア向きの内容を期待されている人には、手応えのない作品ばかりということになりますので、その辺りお含みおきのほどを。

 本書の中は、こんな感じです。これを見てもマニア向けでないことがわかります。
Photo

 解くのに苦労する作品はほとんどないと思いますので、作意手順は書きません。
 さすがに3手、5手は易しすぎるので、7手詰から。抜萃して紹介します。

第31番 近代将棋1962年2月修正図

031

 この図の「近代将棋」発表図は左右反転形で、玉方93歩でなく攻方94歩で、余詰がありました。
 『詰将棋集』には将棋雑誌に掲載された作品が、他に2局ありました。塚田賞作品(「近代将棋」1962年5月9手詰)は収録されていません。


第39番 この図は紹介済みですが。

039

第43番
043

第48番
048

第50番
050


9手詰

第52番
052

第57番
057

第58番
058

第59番
059

第60番
060

第66番
066

第67番
067

第68番 『詰将棋工学母艦』第122番として収録されています。
068

つづく

2015年1月 9日 (金)

田中鵬看著『詰将棋集』 その2

 以前紹介したことのある田中鵬看著『詰将棋集』の続きです。
 まずは序文。原文のまま。
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序文

 田中鵬看(輝和)氏の詰将棋作品集-これは愛棋家の夢ではないかと思います。
 田中さんは「煙詰」で彗星のごとく登場した稀代の天才です。
 昭和35年に「近代将棋」にいきなり4局の「煙詰」を投稿してこられた時の私たちの驚きと感動は今でも忘れることはできません。
 「煙詰」は看寿がつくつて以来、もつとも創作しがたい神秘的な詰将棋とされていました。それが田中さんの手にかかると、あたかもシンコ細工のように出来上がつてしまうのです。この人に棋神が乗り移つているとしか、私には考えようがありません。
 こんどの作品集は巻末に「煙詰」の神品が何局か収録されていますが、ほとんどが、従来あまり田中さんが見せなかつた短篇です。これも面白いし、手数の短いものにも鬼才田中さんの片鱗がうかがわれて素晴しいと思います。
 この詰将棋集によつて、詰将棋の深さや芸術性をより認識していただければ、田中さんとしても作者冥利につきるのではないでしょうか。

 昭和46年2月 近代将棋社社長 永井英明
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序にかえて 詰将棋黄金時代

 詰将棋の元祖は「大橋宗桂」とされている。彼は弘治元年(1555年)京都に生まれた町人であつたといわれる。碁の本因坊算砂(この人は将棋も強かつた)の推挙により、将棋の上手として織田信長に仕えた。前名は宗慶、宗桂は信長より賜わつたという。信長の死後は豊臣秀吉に、そして豊臣家没落後は徳川家に使えた。徳川家康は碁・将棋を好み、碁打ち・将棋指しに俸禄を与え、碁所(ところ)将棋所の制を設けて保護した。その制度が出来たのが慶長年間、慶長5年(1600年)が関ケ原の合戦、豊家滅亡の大坂夏の陣が元和元年(1615年)であるから、大体その頃であり、350余年前の事である。
 「大橋宗桂」は初代名人として将棋所の司となり、詰将棋50題を収めた「象戯図式」を幕府に献上した。これが現在に伝わる最も古い将棋の本で又、最古の詰将棋の書とされている。この原書は大版と中版とあり、中版は西村英二氏(全日本詰将棋連盟関西支部長)が所持しておられます。
 以来350年。その間といつても明治までの江戸時代と、明治期、大正期、昭和に入つて45年を経て今日に到つた。
 極めて大ざつぱにいつて、詰将棋の歴史は江戸時代に絢爛たる花を咲かせて終つた(黄金時代を樹立して了つた)と断言してよい。
 特に
※三代伊藤宗看(七世名人)の"詰むや詰まざるや百番"こと「無双百番」
※贈名人伊藤看寿の"象戯奇巧図式"こと「将棋図巧」(百番)の二書は詰将棋書の二大聖典といわれ、今日までもとより、日本に詰将棋というものの存在が認められる限りは、永久に価値不変の宝典として敬仰されてゆくべき書である。
 江戸時代には、右の外に数多くの詰将棋作品集が作られ、その殆どは今日も残つており、我々はそれを入手する事は可能であるがそれらすべてのものは、前記の二書の前に並べる時は恰も太陽の前の月(?)のように色あせたものというのも過言ではない。
          *          *          *
 江戸時代が終り明治に入り、大正に移つたが、詰将棋不毛の時代というべきである。僅かに大正末期より信州松本に於て発行の「将棋月報」という雑誌に於て生色を取り戻し、一応の華は咲かせたものの、戦争により昭和19年その燈も消え、そして敗戦。
          *          *          *
 昭和20年4月、私の手に依つて名古屋から「詰将棋パラダイス」が発刊、幾多の曲折はあつたものの旧新通じて通巻200号を超えて、毎月発行している。いま発行中の「近代将棋」も野党誌として奇くも同年同月に創刊せられ、詰パラと並んで詰将棋の発展に寄与してきた。
 今回、本書を刊行された田中氏は近代将棋誌上に一挙数局の"煙詰"を携えて彗星のごとく登場した異才である。
          *          *          *
 序文としては異例の長さとなつたが、私は決して詰将棋の歴史を述べようとして筆を費しているのではない。
 江戸時代に黄金時代を現出した詰将棋界が明治、大正、昭和(戦争)を経て、遂に第二の黄金時代を迎えたことをいいたかつたのである。これは決してオーバーないいかたではない。
 いま詰将棋界で活躍している人達を挙げれば、本書の田中氏をはじめとして、北原義治(東京)山田修司(札幌)田中至(北海道)岡田敏(川崎)小西逸生(別府)山中竜雄(広島)植田尚宏(愛知)藤井国夫(東京)柏川悦夫(浦和)門脇芳桂(東京)その他数え上げたらキリのない位の有力現役作家がひしめいている。
 ここで各位は、将棋指しの名前が出て来ぬのを不思議に思われるかも知れぬが、右に挙げた諸氏に比肩し得る将棋指しとしては塚田九段、二上八段、内藤八段、清野七段くらいのものであつて他の人達は名前を挙げるのを躊躇する。そのことは将棋指し自身がよく知つている筈であり、将棋指しは指将棋が生命であるから決して恥ではない。
 かくの如き百花繚乱を指して第二の黄金時代と申し上げるのである。
          *          *          *
 田中鵬看氏の実力の全貌を本書が余す所なく伝えているかということになれば、それは一寸ためらわれる。しかし本書が同氏の持つ詰将棋力の底知れぬ深さと芸の重みをうかがうには決して材料不足とはいえない。
 こうした作品集は本書の外にも、二、三にとどまらないが、すべての実力作家(前記各氏)の珠玉のような作品集が続々上梓されることが望ましい。本書がそうであるように、昭和詰将棋黄金時代の精華を刻みおく記念塔として。

 昭和46年2月 全日本詰将棋連盟幹事
   同連盟機関誌「詰将棋パラダイス」
   編集主幹 鶴田諸兄
   (〒457 名古屋市南区呼続町1
         文勝ビル 402号)
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まえがき

 詰将棋は実に華やかである。その中には必ず一つ以上の盲点が隠されていて、凡手の連続に終始せぬはずだ。玉の意表を衝く、好手妙手の連発で玉を射止める爽快さは、詰将棋を知る者のみわかる醍醐味といえよう。
 詰将棋においては、難解な作品が必ずしもよいとは限らない。本編に取りまとめた150曲の作品中、佳作傑作と自負できる作品は数少ない。初心者の方にも正しく理解して楽しんでいただくためにも、あえて大衆を主眼に、手頃な作品を選んでみた。初心者には三手詰の問題でもその必要性は十分にある。何事も基礎が大切である。基本をおろそかにしては、棋力上達の妨げとなるのは当然のことである。
 詰将棋に強くなれる秘訣。それは詰手筋を数多く、会得することが先決問題だ。安易だからといつて甘く考えず、難解だからといつて避けるようでは、詰将棋に強くなるには失格だ。ジツクリ時間をかけ、根気よく、自分の頭で消化できるまで考慮してもらいたい。くれぐれも駒を動かさず、できるだけ解答を見ずに解くことをおすすめする。努力なくして上達の見込みはない。解答を知つてしまつたのでは、コロンブスの卵同様、巧妙窮まる好手妙手も、ただの凡手としか映らぬからだ。頭で読むよう心掛けてもらいたい。さすれば自然に"考える習慣"も身につき、詰将棋の真髄に触れることもできよう。
 詰将棋特有の技術をマスターして、実戦における終盤に応用すれば、いかほどの利点があるかはかりしれぬ。何事も締めくくりが肝要だ。終盤まで必勝の将棋を、詰めが甘いばかりに負けた苦い経験は、諸賢も数知れずあろう。実戦の詰めは、詰将棋より遙かに易しい。詰将棋に強くなれば、難解窮まる終盤戦に突入しても、何ら臆することなく、勝利に導くことができよう。
 本書によつて終盤の実力を養成し、実戦に臨んで好敵手をアツといわせてもらいたいもの。詰将棋即ち、"寄せ"の実力を身につけることこそ、実戦に強くなる秘訣と信ずる。詰手筋をかみしめながら、ゆつくりと楽しんでいただきたい。
 なお巻尾を飾る大作五題は、実戦とは縁遠きものにて、詰将棋の真髄ともいうべき作品である。鵬看の魔術とでもいうところか。よろしく御鑑賞、お楽しみの程を願いたい。
 末文になつたが、本書の出版にあたり、東洋印刷(株)社長上林棟一氏に大いなる激励と支援を得、また増田義雄氏のご協力がなかつたら世に出ることがなかつた。深く感謝の意を表する。

 昭和46年2月 田中鵬看
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つづく

2013年10月 7日 (月)

田中鵬看著『詰将棋集』

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1971年7月15日発行。
発行元:東洋印刷(株)出版部
発売元:(株)近代将棋社

田中鵬看氏といえば煙詰、という連想のはたらく人がほとんどだろうが、この書には3手詰から25手詰まで150局収録。
特別付録として他に
「アトラス」近代将棋1960/5
「津波」詰将棋パラダイス1961/4
「初雪」近代将棋1963/4
「恋路」近代将棋1968/4
「人生」詰将棋パラダイス1962/10
の5局がおさめてある。
「津波」「恋路」以外は煙詰。

永井英明氏と鶴田諸兄氏の序文がある。

同書第39番の可愛らしい作品。7手詰。

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