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2017年8月 1日 (火)

有田辰次好作集

 本名、加藤玄夫。有田辰次の筆名の方が良く知られている。1919年4月生まれ。千葉県の人。
 将棋日本では加藤稔、戦前の将棋世界と旧パラでは本名。10年ほどの空白があり、1963年の近代将棋から有田辰次、将棋世界では加藤俊介の筆名を用いていたようだ。
 息長く活躍した作家である。特に1965年から68年にかけての発表作が非常に多い。
 この作者の作品は一局だけ紹介済み。


1.1964/12 近代将棋

50693204

12と、
同玉、13銀、同玉、22角、12玉、11角成、13玉、22馬、同金、
11飛成、12金、22銀生
まで13手詰

12同銀は、24銀打、同銀、同銀成、22玉、11角、32玉、33角成、21玉、32銀まで11手。

 11とが必要そうに見えて、実は邪魔駒。22金の形にして、11飛成を実現するために手数をかける。



2.1965/05 近代将棋

50693392

43馬、23玉、24銀、14玉、26桂、同銀、23銀生、15玉、14飛、同香、
16歩、24玉、34馬、13玉、12銀成
まで15手詰

12玉は、34馬、23飛合、同馬、同歩、13飛、21玉、23飛成、22合、41飛成、31合、33桂まで同手数駒余り。
23同玉は、34馬、13玉、14歩、同玉、24馬まで13手。

 豪腕が有田の魅力だ。
 24銀から26桂のあたり不詰感が漂うが、14飛からピッタリ詰む。変化も無駄がない。
 第25期塚田賞(短篇)受賞作。

塚田九段
 解いてみようという気を起こさせる。これは短篇に限らず大切なことである。その意味で今期候補に上がった作品は、その良さを持ったものであるが、中でも山田、酒井、有田、三君のは特に印象に残った。
 …有田君のは右二作に較べると全体に無理がないし、作品が練れている。きわだった手はないが、一手一手にコクがあり、簡素な形で紛れを持たせたあたり、仲々玄人っぽい。奇をねらわずとも良い作品が出来るという好見本である。

作者
ラッキー・セブン
 遅作の私としては偶然の助けもあって、割合に短時間で完成した作品です。「実戦に現れたとしてもおかしくない自然な形」をという私の好みの点からも良く出来たと思っていましたが、投稿当時は受賞など考えてもいませんでした。
 其の後も入選した事だけで満足していたのですが、(入選確定とウヌボレテいた図が噫ー悲しいかな、没か?郵便事故か?待てど暮らせど……という経験は私だけではないと思います)
 翌月の解説が意外に好評だったので、初めてかすかに期待を抱きました。然し短篇は数が多い上に2月号の山田作、他にも良いものがあって全く自信はありませんでした。そんな訳で入選七回目の本作が、受賞の栄に浴した事は本当にラッキーセブン望外でした。
 初受賞だけに喜びも一入です。
 非才のため奇作珍作、は仲々創れそうもありませんが、今後も時間の許す限り創作に打込み百回入選を目標として頑張りたいと思います。
(「近代将棋」1965年8月号より)



3.1965/08 近代将棋

50693386

26銀、同玉、37銀、15玉、26銀、同玉、25飛、同玉、35馬、15玉、
26銀、同香、24馬
まで13手詰

25同香は、48馬、36玉、37馬まで11手。

 本局でも、ちょっと気がつきにくい邪魔駒消去が現れる。48銀がある状態では、25飛、同香で詰まない。なければ変化の通り48馬と転じることができる。



4.1966/08 将棋世界

46802861

94飛、93飛合、同飛成、同桂、82金、同玉、84飛、83桂合、同金、同銀、
94桂、73玉、74金、同銀、82飛成
まで15手詰

93歩・銀合は、83金打、同銀、同金、同玉、74銀、94玉、85金まで。
93桂跳は、同飛成、同玉、85桂、82玉(94玉は84金打、95玉、86金)、73金打、同銀、同金、92玉、82金打まで。

 93金合ならどうなるかと思ったら、金は出尽くしている。74と配置では詰まないのだ。
 不動のまま角が残るが、変化(特に93桂跳)に利いているだけでなく、詰上りにも一役買っている。
 『古今短編詰将棋名作選』補遺第33番。



5.1966/07 近代将棋

50693637

13銀生、31玉、22飛成、同角、同銀生、42玉、31角、同龍、33銀生、同玉、
34馬、42玉、54桂、41玉、51金、同玉、61馬、同玉、62金
まで19手詰

13同玉は、14金、12玉、34馬、23歩合、同金以下。
22同玉は、14桂、12玉、34馬、23歩合、22金、13玉、24角、同歩、23金打、14玉、24馬まで17手。


山田修司
 紛れが一ぱいの作だがなかでも初手34桂が強力。以下31玉、21金、同銀、42金、同龍、同桂成、同玉、33銀生、同角、43飛、32玉、33飛成、同玉、34馬、42玉、33角、31玉…とらしき手が続きなかなか読みを打切れない。
 作意は再三の銀不成を中心とした鮮やかなもので特に31角、同龍と犠打を放ち、一転33銀不成と身を翻すあたりは捨駒の魅力を最大限に見せつけてくれる。いうなれば三代宗看の味。収束はまた、看寿風に切れ上がっていて申分なく、全体に力感あふれる秀作となっている。
(『古今中編詰将棋名作選』解説)

 この時の塚田賞(中篇)は北川邦男作と桑原辰雄作で、塚田九段の選評はこの作品には一言も触れていないが、私見では本局が優っていると思う。



6.1966/11 近代将棋

50693736

19香、18歩合、同香、同と、14歩、22玉、33歩成、同金、21飛、同玉、
31と、22玉、62龍、31玉、41馬、21玉、43馬、同桂、31馬、同玉、
42と、22玉、43と、32角合、同と、同金、13角、33玉、45桂、43玉、
53桂成、33玉、32龍、同玉、43金、21玉、31角成、同玉、42成桂、22玉、
32金
まで41手詰

22玉は、33歩成以下、作意を進み34玉なら、32龍、25玉、35龍まで。
17桂合は、同香、同と、14飛、22玉、33歩成、同金、34桂、同金(21玉は31と、同玉、42と、21玉、31と、同玉、33龍以下)、52龍、32香合、同龍、同玉、34飛、33香合、42と、22玉、32金、13玉、14馬まで。
16歩合は、同香、22玉、33歩成、同金、52龍、32香合、21飛、同玉、31と、同玉、42と、22玉、32と、同金、同龍、同玉、33歩、同玉、35香、34香合、同馬以下。
作意では33歩と叩く歩がないのでこの手順にならない。

 単に16香と打ってはなぜいけないか。
 以下、22玉、33歩成と作意をなぞって34玉、32龍、25玉で逃れ。
 14~16香なら詰まないが、19香、22玉なら詰む。合駒は18歩合か17歩合(非限定)しかない、その結果、と金が移動するので34玉なら32龍、25玉、35角成、15玉(16玉は26金、17玉、27金まで)、26金、14玉、25金まで。と金を動かした効果があらわれる。
 作者には珍しい遠打。



7.1966/12 近代将棋

50693758

22桂成、42玉、54桂、同飛、53桂成、同角、32成桂、同玉、12飛、23玉、
41馬、34玉、23馬、同玉、24金、同飛、同銀成、12玉、13飛、22玉、
33飛成、11玉、12歩、同玉、13龍
まで25手詰

 初手三択だが、後の飛打を見た22桂成が正着。香成ではあとで桂が邪魔になる。
 3手目、飛車を動かすのは5段目から利きを外しておく意味。



8.1967/04 将棋世界

46802939

22角、同歩、23金、同歩、22銀生、24玉、33馬、同龍、25金
まで9手詰

 初手は限定で、31角なら24玉、42角成、34玉で逃れる。22歩と質駒をつくっておけば23金に同銀とは取れない。以下、らしい収束。



9.1968/02 詰将棋パラダイス

Para66702234

33馬、12玉、21飛成、同玉、12角、同玉、13香成、同玉、25桂、12玉、
13歩、21玉、32馬、同玉、33金、41玉、42金打
まで17手詰

 初手が強手で、何で取っても簡単なので、躱す玉に、いかにも実戦型風の手順。どちらかの桂は消したかったと思う。



10.1994/01 近代将棋

86992663

16飛、15銀合、23角成、25玉、24飛、同銀、34馬、同馬、26金
まで9手詰

 第83期塚田賞(短篇)受賞作。

作者
自分としても好く出来たとは思ってましたが、受賞など全く期待していませんでした。塚田賞も82期
になりますか。私も貴誌創刊以来の読者、塚田先生の事など思い出されます。健康を害して永い歳月、作品の発表を中止しておりましたが、また最近詰将棋村へ帰って来ました。…

本誌にも82期と記載されているが、正しくは83期。

岡田敏
今期の短篇は数が少ないこともあってか、これといった作はなかった。該当作なし、にしようと思ったが、1月号の有田氏作がスッキリとまとまっており、これに1点を進呈。
(「近代将棋」1994年10月号より)

 この期は格段に優れた作がなく、僅差の受賞だったようだ。
 簡素図式。24飛と重く打つあたりに作者らしさがほの見える。

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