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2017年8月25日 (金)

「詰棋界」 その58

 通巻第21号のつづきです。全体のページ構成はこちら

両王手の研究
=両王手の諸形態=
長田富美夫

 創作を始めて丸五年にもなるが、いまだ模倣作の域を出ない私が、"両王手"という大それたものと取り組んで研究するのも、いわば新人作家の登龍のためと思って、拙文を綴った次第であり、読みず(ママ)らい点は、生来の悪筆とお許しの上、読み流していただきたい。

 一、両王手の研究
 両王手分類法には、色々な方法もあるだろうが、ここではもっとも簡明な使用駒による分類法を採った。

 両王手(Double・Check)
①大駒のみによるD・C
②小駒のみによるD・C
③大駒と小駒によるD・C
 注、両王手を略してD・Cとする。
①は飛角の両駒から生ずるD・Cであり、
②は香車と他の駒より生ずるものである。

 二、両王手の種類
 一般に両王手というのは、攻方の効きが同時に玉に効く場合をいうのであり、この際、二つの効きを持つものをいうのではあるが、これを一応直接両王手と呼びたい。(甲図)

甲図

Photo_4

 その他には両王手は考えられないが、一見両王手の感じをあたえるものも両王手と呼んではどうか。
 例えば、乙図、丙図がそれである。

乙図

Photo_5

丙図

Photo_6

 乙図は13金と龍はとれない。それは開き王手となるからである。これを間接両王手と名付けたい。
 丙図となると、73銀を74銀不成と開王手した場合で、これも王手は63飛の効きしかないわけだが、63香と取った際、83金で詰みとなる。即ち83へ駒が三つ効いており、一つ除去することのできぬのを見越しての開王手である。これを心理的両王手と呼んではどうだろうか。下らぬ名称だが、こういう風に呼ぶのも面白いと思う。
 また、これは両王手と全く関係ないが、両王手と見せかけて実は両王手によっては不詰となる作図も考えられる。この意味で丁図は疑似両王手と名付けてみたい。但し、これは両王手の筋がまぎれとして残っているものであるから、両王手に入らないと言える。

丁図

Photo_7

 三、大駒のみによる両王手
 大駒のみによる両王手は、飛角の関連以外にはあり得ない。そして、この種の図式には、何か行き詰まりが感ぜられるようである。
 基本図として、A図、B図をあげておこう。

A図

A

B図

B

A’図

A_2

 A図は14銀の一発で両王手が登場する。なおA図はこの両王手が変化してかくれている場合である。
 A、A’両図は作意変化の違いはあれ、玉との間に、一カク以上の間隔を保っている場合だが、B図となると一方の大駒が玉と密接に結びついた両王手である。

 第一図(大道棋銀問題81玉、94金型)

Photo_8

 大道棋は、本説にもってこいの両王手を多く含んでいるようである。
 第一図は、確か升田八段が朝日新聞紙上に掲載されたと記憶している。
 先日も大阪の南で本図を見掛けた。
 本作は最終局面に両王手が出て詰上るもので、54馬の筋で詰む好作である。特に玉方の応手は味い深い。
 この種の大道棋は、銀問題といわれるものの中でも変型で、普通のものは75が桂であるが、本作は75馬引の筋の詰物ではない。
 銀問題81玉型には、この他94飛型のものがあり、また41桂がなかったり、いろいろと厄介なもので、また、そのつど詰筋がことなる。銀問題については、川崎弘氏がパラ誌上で詳細に研究されているから、是非参照して頂きたい。一読して身につけば、この種の大道棋はすべてOKとなること受け合いである。なお、本作は残念な事に最終両王手をせずとも詰むようであるが廻り道なので大目にみたい。
 しかし惜しい図式ではある。

第二図(将棋精妙第五番)

Photo_9

 将棋精妙は、伊藤家二世初代宗印の図式である。一番から九十九番まで不成を配し、百番のみに不成だと詰まぬといった作品をかえた。皮肉なものだが、私一人の考えでは、本図式やや難解味に欠けるかと思う。
 しかし、それだけに初心者にもってこいの図式ともいえるのではないだろうか。
 百番も不成を作るといった労力は相当のもので、北村研一氏が精妙百番に不成の手を入れるのに大変苦労した点から考えても並大抵の事ではなかったろう。
 本作では、7手目
にA型の両王手が出現する。すなは(ママ)ち5手目※254金以下、同玉、34飛不成(A型)
 なお、この不成は、玉が66に逃げた時、67歩と打てるためのもので遠大なる飛不成といえる。この点さえわかれば、本作は解けたも同然で92で終束する。


 7手目ではなく、11手目。
※2 5手目ではなく、9手目。

第三図(短篇傑作集41番 谷向奇道氏作)

Photo_10

 谷向氏の作品としては珍らしい軽快作である。
 64香は離れすぎた感じだが、案外釣合っているのではなかろうか。
 A型のものとしては案外数が少い。その他としては第四図を紹介しておこう。

第四図(原田八段作百題第20番)

Photo_11

 54飛の意味は、手順前後を防いだもので、簡潔な構図の両王手で割合いただける。
(ツヅク)

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マド

 三号および賞品先日拝受いたしました。解説および作品が少くてがっかりしましたが、次号に特大号発行の由、大いに期待しております。また、同姓であるというわけではありませんが、私個人としては藤井朗という人の作品を見たことがありませんので、是非解説をお願いしたいと思います。
 貴誌では、詰棋、読物の他、パズル、必死図、実戦に関連した記事、作品のスペースはないのですか(詰棋界ですから詰棋一本槍なのだと思いますが)いずれも無理な注文で恐れ入りますが。(東京 藤井国夫)

★藤井朗作品は機会を見て紹介いたすつもりでおります。パズル、その他将棋に関する遊び等をご投稿下されば掲載いたしますからドシドシお寄せ下さい。
 なお実戦譜を見たい方が多ければ掲載いたしますが、この点についてご意見お聞かせ下さいませ
-編集部-

 詰棋界四巻三号の表紙を見て非常に美しくステキでしたが作品掲載が少くがっかりしました。もっと作品を載せるよう、少々無理な注文ですが今後このような線で進んで下さい。(東京 角二桂三)

★詰将棋を多くという人と、読物をという人と種々いられるので当方でも工夫をこらしておるわけです。次号より解答付けて発表する欄を設ける予定でありますからお(ママ)利用下さい。
-編集部-

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名作探訪(3)
浅野博

 柴田君よりバトンを受け継ぎまして、今回は、私が傑作短編の門を叩いてみたいと思います。私は蒐集に興味を持ち、現在までに集めましたその詰将棋の数は、一万余の多きに達しましたが、いざ傑作好作となりますと、仲仲、これと思う物が見当りません。素晴らしいなァ!と思うと、終りがダレており、うまくまとめたな、と思うと、二十数手を要しています。してみれば私が一所懸命にヒネッてみて"どんなもんです"といばっても、威勢よく没籠へ跳び込んでしまうのも、無理からぬ事と、安心致しました(私事で恐縮です)
 傑作か否かと申しましても、このような抽象的な言葉は、多分に主観的要素が入りますので、諸兄においてそれぞれ多少ことなる事と思います。また幾ら沢山見た経験があると申しましても、到底すべての詰将棋を観賞する事は不可能であります故、この作品が絶対とは申せません。そのお積りで御観賞下さい。

爪正紀氏作


Kyupara1581

33桂、同龍、53桂、同香、51金、31玉、43桂、21玉、13桂、同龍、
31桂成、同玉、32金
まで13手詰

 夏向きのあっさりした、これといった妙手の無い局ですが、四枚の桂を二枚づ(ママ)つ二間に分け、右から左え(ママ)と、巧みに打ち分ける所は、真夏の太陽のガンガン照りつけるプールの中で、大人ならビール、子供ならコカコラでも飲んだ如き爽快な気分を味あわせてくれます。また飛二金二桂四香二という使用駒にも、なにか面白さを感じます。香竜(恐竜)と金桂(金鶏)の争いとは某氏の評
※2ですが、言い得て妙かと思います。
 "美女と野獣"はちと大袈裟でしょう 以上


 「旧パラ」1951年6月号の作。結果稿に「新人ながら今後の精進を期待します」(小学校担当 谷向奇道)とあるが、他にこの名前での発表作は見当たらないようだ。「爪」であり「瓜」ではない。
※2 飛鳥棋人の短評(8月号)に「恐(香)龍と金鶏(桂)の取組はまるで「美女と野獣」そつくり、甚だよろし」とある。

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