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2017年7月29日 (土)

稲富豊好作集

 1930年4月生まれ。長崎県の人。『三百人一局集』に、「昭和30年代、各誌で短中編で活躍した」「発表数約80局」とある。作品発表期間は1955年から1968年までのようだ。

1.1956/09 詰将棋パラダイス(修正図)



Para61651252

66金、同飛生、67桂、同飛生、48馬、57桂合、同馬、同飛生、87桂、同飛生、
77飛、同飛成、76歩、同龍、84銀、同金、64馬
まで17手詰

 「私のベストテン」(詰パラ1962年5月号)の劈頭を飾った作品。17手だが、当時の小学校である。
 37飛が龍だったために余詰を生じた。即ち、5手目48馬のところ、84銀、同金、48馬、57桂合(先に馬を動かしてからの84銀も成立)、同馬、同飛成、76歩、74玉、64馬、83玉、84香、94玉、93金、85玉、75馬、95玉、86馬、84玉、75馬、95玉、94金、同玉、34龍以下詰んでしまう。
 この点、惜しまれる作品。


2.1960/09 将棋世界

46802118

23金、同玉、24香、同龍、32飛成、13玉、33龍、同龍、25桂、23玉、
33桂成、13玉、23飛、同歩、31馬
まで15手詰

 24香、同龍で質駒にした方針に添って、33龍と体当たり。ここ43龍では23歩で何事もない。以下、駒取りにはなるが、すぐに捨てての詰上りも良い。
 この年11月、中学校に掲載された11手詰で半期賞を受賞しているが、それほど良い作とは思えなかったので省略。



3.1960/09 近代将棋

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15金、同玉、25金、16玉、36龍、26飛合、27龍、同飛成、15金、同玉、
27桂、26玉、25飛、16玉、15飛、26玉、25馬、同香、16飛、同玉、
15角成
まで21手詰

26銀成は、同金、同香、15角成、17玉、26馬、18玉、27馬、29玉、47馬、38合、同馬左、同歩、同龍まで19手。

 第16期塚田賞(中篇)受賞作。

塚田九段
(中篇)変化に重点置いた妙作
 稲富作は形が悪い。しかし驚くほど巧い手が続く。差引計算してもやはり巧い手が比重大きく、競争相手の巨椋氏、山中氏をおさえた。
 26飛の合駒以後、みなよくさばけて、あざやかなもの。変化手順に新手がある。(15金、同玉、25金、ここで同玉なら36龍、14玉、45龍以下詰み)
 山中作は以前も今回も僅差で敗れて気の毒だった。

作者
 自作について=指棋は好まず詰棋一辺倒で通してきた私だけに、このたびの受賞は非常に嬉しく思います。本局は難解味をねらいとして、古典風な味で仕上げました。したがって近代的な詰棋の新味はありませんがまぎれが豊富でさばきも多少はあり、中篇作品として生きていると思います。
(「近代将棋」1961年2月号より)

 『近代将棋図式精選』はもちろん、『古今中編詰将棋名作選』にも紹介されている。
 並べた感じでは、飛合が強防で、ここ26香合などでは15金から25龍で詰む。
 以下の捌きも鮮やかだ。玉方19とは余詰防止駒ではなく、変化
で19玉と潜り込まれないための駒。
 「変化手順に新手がある」という評はピンとこない。36龍でなく、37龍なら16玉で直ちに逃れるので、36龍から45龍は必然手に見えるからである。



4.1961/06 近代将棋

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35飛、26玉、17金、同玉、15飛、27玉、17馬、同玉、24桂、27玉、
17飛、同玉、13飛、27玉、16飛成
まで15手詰

 『古今短編詰将棋名作選』補遺第18番。
 大駒を物陰に隠し、明き王手で世に出すのは、この作者が好んで使った手法。



5.1961/09 詰将棋パラダイス

Para61650514

24桂、同飛、14飛、同飛、13角成、同飛、24桂、22玉、21角成、同玉、
32と
まで11手詰

 単に14飛では22玉で詰まない。そこで飛車を呼んでおく。
 複合捨駒。これも作者愛用の手筋。易しいが、良く出来ているのではないだろうか。



6.1962/02 詰将棋パラダイス

Para61650832

18銀、同と、25飛、17玉、26銀、27玉、37銀、17玉、35角、同歩、
27飛、同玉、45角成、36金合、23飛成、17玉、26龍、同金、29桂、同と、
18香
まで21手詰


36飛合は、23飛成、17玉、35馬、同飛、26龍まで19手。

 出番を待っているような13飛と23角だが、逆算による産物と推測する。守備駒がよく動いて好印象。



7.1962/03 詰将棋パラダイス

Para61650895

22角成、同金、21飛成、同金、13歩、同玉、24銀、同玉、21桂成、13玉、
24馬、同玉、14金
まで13手詰

22玉は、21桂成、同玉、12銀、22玉、23銀上成、31玉、42金まで同手数駒余り。
12玉は、23銀成、11玉、21桂成、同玉、22金まで同手数駒余り。

 中学校半期賞受賞作。
 21に金を動かしておいて、あとで明き王手で取る。馬を捌くのが当然とはいえ、気持が良い。



8.1965/03 詰将棋パラダイス

Para61653354

28香、37玉、27香、同玉、28飛、36玉、46金、同歩、18馬、37玉、
27馬
まで11手詰

 初手、28飛なら36玉、18馬、37玉で逃れ。

駒三十九
素晴らしい作、特に46金などは両王手という有名手筋を変化に利用した絶妙手と思う。久しぶりに稲富氏の好作に接し難解新鮮派稲富氏健在を思わせる作品である
(「詰将棋パラダイス」1965年5月号結果稿より)

 香から打つのは平凡だが、27香の一目上がりがよい。当たり駒が少ないのでさわやかな印象を受ける。
 中学校半期賞受賞作。『三百人一局集』に掲載されているが、執筆は吉田健氏。『詰将棋工学母艦』にも採られている。



9,1965/03 詰将棋パラダイス

Para61653369

24歩、同玉、27龍、34玉、43銀生、45玉、57桂、同金、46歩、同玉、
38桂、同と、58桂、45玉、47龍、同金、46歩、同金、34銀生、同玉、
46桂、24玉、25金、同玉、43馬、24玉、34馬
まで27手詰

 龍のソッポ行きの意味付けは明快で、26龍はあとで打歩詰になってしまう。取歩駒をめぐる打歩物らしい応酬。桂を跳ねて駒を取るのはクセというものだろうか。

山田修司(大学担当)
全般的には27龍、47龍の好手を始め、桂打の手順前後を許さない微妙な味、軽い収束など、まずバランスのとれた中篇と思います。あえて難をいえば主眼手が少し弱かったこと、1~2筋の駒があまり働いていない感じがあることでしょう
(「詰将棋パラダイス」1965年5月号結果稿より)



10.1965/07 詰将棋パラダイス

Para61653683

34桂、同金、13桂成、同玉、46角、35金、同角、24歩、14金、同玉、
15金、同玉、23銀生、25玉、15飛成、同玉、26銀
まで17手詰

 初手桂を金で取らざるを得ない(同歩は33角~31飛成)ので、34金が退路を塞いでしまう駒となる。46角(57以遠でも良い)にそこで35金が玉方の邪魔駒消去。
 銀不成から、飛車を捨てての収束も決まっている。

 『三百人一局集』の作者キャッチフレーズ(服部敦氏作?)に「妙手が第一 形は第二」とあるが、1980年代初頭でも、悪形作家の一人とみなされていたのだろうか。
 こんにちでは、それほどの悪形作家とも思われないのだが。

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コメント

九州の、町の散髪屋のおっちゃん。
「手順本位で形を気にしない」というのが、5~60年代での主幹や担当者の評。
悪形というよりも形・駒数を気にしないという印象で、好形作もあった。

奥鳥さま

コメントありがとうございます。
散髪屋さんですか。
三百人一局集には左官業とありますが。

パラ65年2月号表紙も確認した結果、散髪屋さんの件は毎度おなじみの奥鳥のガセネタと判明。
他の方と勘違いしていたようで、妄言多謝。

10代の頃に名作選等を読んで好きだった作家でして、紹介いただきありがとうございました。
3,4,7,8は存じ上げておりましたが他の作品は初見でした。このセンスを真似をしようと試行した
思い出が・・。ただ結構難しく、うまくいかなったです。

有吉さま

コメントありがとうございます。
一風変わった感触で、ユニークな作家だと思います。
8番は傑作ですね。

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