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2017年7月 5日 (水)

江戸文芸に見る「将棋」その5

 井原西鶴特集。

『獨吟一日千句』(1675年刊)『定本西鶴全集』第十巻(1954年 中央公論社)より
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片手では思ひもよらぬ將棊盤
なくさみかへて發句あそはせ

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 上掲書の註に「力競べに将棋盤を片手にてさし上げる」とある。


『西鶴俳諧大句數』(1677年刊ヵ)
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適の御出に豆腐さへなし
是からは將棊をやめて秀句つめ

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 註に「適-タマ」。また「秀句つめ-秀句詰。秀句に言ひ勝ちたるもの豆腐の田楽を取る咄あり」とある。「秀句」はこの場合、地口、軽口の類であって必ずしも俳句とは限らない。この豆腐田楽の咄は広本系写本『醒睡笑』巻之六の「児の噂」にある。

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豆腐二、三でうを田楽にせしか、人おほなり、いさ、むつかしき三字はねたる事を言ひて、くはんと義せり、雲林院、根元丹、せんさんびん、さまざま言ひつゝとりて、みなになるまゝ、小児たへかねて、茶(ちや)うすんといひさまに、二つ三つとり事は
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(『假名草子集成』第四十三巻 2008年 東京堂出版)
 「せんさんびん」は陶器製の水差しで「仙盞瓶」と書くそうな。
 「三字はねたる事」なので「ん」が三つ入っていなければならないのに、「茶うすん」は一つしか入っていない。それにしても「茶うすん」とは何だろうか。茶臼に「ん」を付けただけなのか、さらに意味があるのだろうか。


『物種集』(1678年刊 井原西鶴編)。
付合集。秀逸な付句を蒐集し、編纂したもの。
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取(とり)ずてにする浦の貝がら
   中将棊和歌吹上にさし懸り 
仏眼寺喜祭

ついて出る鑓と云より香車かゝ
   大手の木戸の鑰腰につけ 
梶山保友

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 「取ずて」から中将棋を連想したもの。中将棋では持駒はなく、取り捨てになる。
 和歌吹上は和歌の浦の吹上の浜、即ち佳境の意味だろう。

 「香車かか」は既にあったようにやり手婆のこと。「かか」は「嚊」。
 註に、「鑰腰につけ」は「遣手の風俗。腰に鍵を提ぐ」とある。


『西鶴大矢數』(1681年刊)『定本西鶴全集』第十一巻下(1975年 中央公論社)より
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始末して居喰に暮す山の秋
隙ならさそう獅子の勢い

將棊の金銀こかね山吹
玉川の蛙も隙に相手とり

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 前句の居喰を獅子の動きに見立てた付である。
 註に言う。「居喰」は無為徒食。「隙ならさそう」はひまなら将棋を指そうの意。

 玉川…歌枕である井手の玉川(京都府)を指すのであろう。
 蛙なく井手の山ぶきちりにけり花のさかりに逢はましものを 
読人しらず
(『新日本古典文学大系5 古今和歌集 巻第二』 125 1989年 岩波書店)
 山吹から玉川を連想したのだろう。

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