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2017年2月11日 (土)

加藤文卓の「圖巧解説」その12

月報1927年2月号

圖巧解説
二峯生述

第二十七番

0027

此図に對する小生の研究は未だ甚だ不完全なのでありますが兎に角之を誌上に發表して汎く讀者諸君の御高見を御うかがいしたいと思ひます
先づ原書記載の詰手順に就いて變化を解説しませう

52角成、63歩合、65金、同成桂、73金、同玉、65桂左、72玉、62銀成、同香、
61馬、同玉、53桂生、72玉、73歩、同玉、75飛、74歩合、65桂打、72玉、
74飛、同馬、73歩、同馬、同桂成、同玉、74歩、72玉、83角、82玉、
73歩成、同玉、65桂、82玉、74角成、91玉、64馬、同歩、83桂、82玉、
71桂成、同玉、82金也(43手詰)


變化
63歩間の所
(一)63香打ならば前記本文の手順及後に記す餘詰の順を參照すべし
(二)63香ならば65金、同成桂、73金、同玉、65桂、72玉、62銀成、同金、同馬、同玉、42飛成以下容易に詰む
(三)63金間ならば65金、同成桂、63馬、同玉、73金、同玉、65桂左、63玉、73金、54玉、66桂にても容易なり
(四)63飛間ならば前記三に準ず
(五)63銀間ならば
65金、同成桂、73金、同玉、65桂左、72玉、63馬、()同玉、54銀、()同玉、66桂、63玉、53桂成、()72玉、73歩、同玉、75飛、74歩、65桂、72玉、74飛、同馬、73歩、同馬、同桂成、同玉、62角、同金、同銀生、同香、83金
63同玉の所63同香ならば
73銀、61玉、53桂生、51玉、41飛成也
54同玉の所72玉ならば
42飛成()62角間、同銀成、同香、83角、82玉、92角成、同玉、62龍、82間、93香、81玉、73桂生の詰あり
72玉の所53同玉ならば
54歩、63玉、43飛成の詰あり
62角間の所に種々變化あれど難解ならず

62同香の所同金ならば同馬、同香、73桂成、61玉、41飛成、51間、53桂生にても容易なり

61同玉の所同金ならば
73桂成、同玉、75飛、74間、65桂、72玉、73歩、71玉、81歩成也

74歩間の所74角間ならば
65桂打、72玉、74飛、同馬、73歩、同馬、同桂成、同玉、84角、72玉、83角、82玉、92角成、同玉、93歩成、91玉、73角成也

73同玉の所91玉ならば
92角成、同玉、93歩成、同玉、83と、94玉、84と也

○本局は前記の如く巧妙なる傑作でありますが局中最も妙味ある62銀成、同香、61馬の所に餘詰があるやうに思はれます
即ち62同香に對し61馬と指さずに同馬と指す時は次の詰手順があるやうです
62銀成、同香、同馬、同玉、42飛成、52香合、53桂成、73玉、74歩、同馬、
65桂打、72玉、73香、同馬、同桂成、同玉、65桂、74玉、83角也

變化
62同玉の所同金ならば
73香、同金、同桂成、同玉、65桂、62玉、42飛成、52香間、73金、61玉、53桂生にても詰む
73同金の所61玉ならば
41飛成、51香間、71香成、同玉、51龍、72玉、81龍也

73玉の所72玉ならば
52龍以下容易に詰む

○此圖の解説は此所に止めたい充分の自信なくして之れ以上に深入りする事は無謀極まる事と思ひますが只之れ丈けではあまりに物足らぬ感がある、かつは讀者諸君の御研究を乞ふ爲めにも一寸愚見を發表して置く方が好都合かとも思はれますので次に記載する事に致しました

○此圖には玉方31銀が脱落し詰方72金は成銀の誤植はないでせうか
斯くすれば本文の詰手順は前記の73金の所が73成銀と改まる丈けにて他は全く同一であります
又變化は
63歩間の所
(一)63香打なら本文に合す
(二)63香ならば65金、同成桂、73成銀、同玉、65桂、72玉、62銀成、同金、同馬、同玉、53桂成、同玉、65桂、52玉、53歩、62玉、54桂の詰あり
(三)63金間ならば65金、同成桂、63馬、同玉、73成銀、同玉、65桂左、63玉、53桂成、同玉、65桂打、52玉、42金、63玉、43飛成也
(四)63飛間ならば65金、同成桂、63馬、同玉、73成銀、同玉、65桂左、63玉、73飛、52玉、53飛成也

62同香の所同金ならば同馬、同玉、53桂成、同玉、65桂、52玉、此時53金にても53歩にても容易に詰む

の變化は前記の手順に合す

○此圖に於て62銀成、同香、61馬、同玉、53桂生の順は實に妙味津々たるものがあります若し62銀成る所に73桂成、同玉、75飛と指せば74桂間と指されて逃れとなります
---

 加藤文卓補正図

Photo

 『詰むや詰まざるや』では、62同馬、同玉、42飛成以下の余詰の指摘者は島村俊雄六段となっていますが、これは1953年7月の「風ぐるま」誌上での指摘なので、加藤文卓の方が早いです。

 ところでこの図は、あえて銀、馬を捨てて、桂馬を渡さないという面白い狙いです。
 73桂成、同玉、75飛には74桂合と応じられて、65桂打、72玉、74飛、同馬に73歩と打つ歩がないというわけです。桂を捨てると桂合ができるので、62銀成で退路を塞いでおいて61馬で打歩詰を回避しながら桂を53に跳び込んで取らせないというしくみ。
 同じ狙いを端的に図化した作品を紹介します。

武島宏明作 解答選手権2014 チャンピオン戦6(2014/03)

201403takesima

43香、同角、31金、51玉、43桂生、42玉、41金、同玉、31桂成、51玉、
42角、同玉、54桂、43玉、63龍、同馬、44銀
まで17手詰

54桂は、43玉(桂を取られた)、63龍、53桂合(逆王手)で失敗。
桂を取られないように31金を捨てて31成桂に替え、渡さないのがミソです。

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コメント

『加藤文卓補正図』とあるものは、宝暦版の第二十七番であり、不完全作は一般に伝えられているようですが文政版のものであり、それ以前に発表された宝暦版が正図と思われます。  参考資料  古図式全書(第6巻) 象棋奇巧図式

『詰むや詰まざるや』は文政版の解説書ですね。

大橋さま

コメントありがとうございます。
門脇氏の『詰むや詰まざるや』の底本は内閣文庫及び家元刊本と凡例にあるので、そのように思っていましたが、底本は文政版だったのですか。
古図式全書第六巻を確認しましたが、なるほど27番は加藤補正図と同じですね。
これは杜撰の誹りを免れないと思いますが、『詰むや詰まざるや』はなぜ誤ったのでしょうか…。

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