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2016年12月27日 (火)

加藤文卓の「圖巧解説」その2

「将棋月報」(以下同じ)1926年2月号

手順記載についてのお断り
原文は七八角などと漢数字を用いていますが、半角数字に変えています。
「ナル」は「成」に変えています。
当時は駒を打った場合「打」を付けていますが、省略します。
「間」は現在なら「合」ですが、そのままにしています。
原文の変化手順には読点がありませんが、読みにくいので読点を付けています。
なお原文に句点はほとんどありません。そのままです。

將棋圖巧解説
二峯生述

古来詰將棋の作物多き中に三代伊藤宗看の象戯圖式と其弟看壽の將棋圖巧とは今尚今古の傑作として嘆稱されて居ります
前者は從來秘書として世に公にされて居らなかつたのを近年に至つて我月報紙上に連載せらるゝに至り妙手湧くが如き鬼宗看苦心の大作は月を追つて本誌上に詳解發表せられてあります
後者は既に汎く世に刊行されて居りますが其解答たるや只一通りの手順を示すに止まり充分其妙所を味ひ難い憾みが少なくありません
殊に此頃出版せられて居る圖巧の中には圖面及解答の誤と思はれるもの二三にして止まらないやうです
本誌に於て三代宗看の圖式を發表すると共に之が姉妹篇ともいふべき大作圖巧の解説を掲載する事も亦敢て無用の事ではなからうと思ひます

第一番

100001


54銀、75玉、87桂、86玉、66龍、同龍、95角成、76玉、77歩、同龍、
同馬、85玉、15飛、25飛間、同飛、同角、95馬、76玉、26飛、36飛間、
同飛、同角、77馬、85玉、35飛、45飛間、同飛、同角、95馬、76玉、
46飛、56飛間、同飛、同角、77馬、85玉、84飛、同玉、95馬、83玉、
82金、同歩、75桂、同香、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、
72金、91玉、92歩、同角、同銀成、同玉、74角、91玉、82金、同玉、
83歩成、71玉、62馬、同玉、63銀成、61玉、72と、51玉、52成銀、
迄69手



變化
75玉のところ76玉ならば
 67龍、86玉、87龍、75玉、84角成也
86玉のところ76玉ならば
 77歩、86玉、95角成也
25飛間の所
(一)84玉ならば95馬、83玉、82金、同歩、85飛也
(二)75飛間ならば95馬、76玉、16飛、66間、85角、同飛、77馬也
(三)75香ならば95馬、74玉、96馬()85香間、66桂、83玉、82金、同歩、75桂、同銀、73と、同玉、75飛の手順あり
85香間の所()85金間ならば
同馬、同玉、95金、74玉、66桂、83玉、82金、同歩、75桂、同銀、73と、同玉、75飛也
85金間の所85飛間ならば
同馬、同玉、95飛、74玉、75飛右、同銀、同飛以下容易なり
(四)55香間ならば95馬、76玉、16飛、()56歩間、77馬、85玉、76角、同香、95馬、74玉、96馬()85角間、66桂、83玉、82金、同歩、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、12飛成、52桂間、同龍、同角、72金、91玉、83桂也
56歩間の所56香打ならば
同飛、同香、77馬、85玉、76角、同香、95馬、74玉、96馬()85香間、66桂、83玉、82金、同歩、84歩、同玉、95馬の詰あり
85香間の所85金間(飛間にても殆んど同様)ならば
同馬、同玉、95金、74玉、66桂、83玉、82金、同歩、84香也
85角間の所()85香間ならば66桂、83玉、82金、同歩、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、12飛成也
85香間の所85金間(飛間にても難解ならず)ならば
同馬、同玉、95金、74玉、66桂、83玉、82金、同歩、75桂、同銀、13飛成、92玉、81銀、91玉、93龍也
(五)55飛間ならば同飛、同銀、84飛、同玉、95馬、83玉、82金、同歩、73馬也
(六)25香間ならば
95馬、76玉、16飛、26歩、77馬、85玉、76角()同香、95馬、74玉、96馬()85角間、66桂、83玉、82金、同歩、13飛成()73歩間、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、74桂、同角、72銀成、92玉、74馬也
76同香のところ84玉ならば
95馬、83玉、82金、同歩、13飛成、92玉、81銀、91玉、93龍也
85角間の所85飛間(金間にても難解ならず)ならば
同馬、同玉、95飛、74玉、75歩、83玉、82金、同歩、74銀也
73歩間の所53歩間ならば
84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、22龍、52桂間、同龍、同角、72金、91玉、83桂也
73歩間の所に難解とならず故に略す
36飛間の所
(一)66飛間ならば77馬、85玉、25飛()65飛、95馬、76玉、26飛、66間、85角、同飛、77馬也
95馬の所65同飛にても容易に詰む
65飛の所75香ならば
95馬、74玉、63角、83玉、82と、同歩、84歩也
(二)36歩間ならば
77馬、85玉、25飛、()75香、76角、74玉、65角、同銀、同銀、63玉、23飛成、52玉、53銀、41玉、43龍、31玉、42龍、21玉、22馬也
75香の所()65香ならば76角、同香、95馬、74玉、75歩、83玉、82金、同歩、23飛成の詰あり
65香の所「55」へ歩香桂の間駒をせば76角、同香、95馬、74玉、96馬以下の變化(四)及(六)の條下を參照せば容易に知らるべし
以下の變化は難解の所なき故略す
本局は圖巧中屈指の好局で遠飛の妙手を以て敵角を56に導き歩詰を避くる手段絶妙といふ外はありません

---
 二峯生の前文中、三代宗看作を「近年に至つて我月報紙上に連載せらるゝ」というのは月報の懸賞出題として毎号掲載されていたことを指します。これは加藤文卓の所持本によるものでした。図巧について「既に汎く世に刊行されて居ります」というのは、無双が江戸時代にはおそらく市販されなかったことに対して、図巧は市販の刊本があり、明治以降もこのときまでに20年代の吉川半七版、34年(1901年)博文舘版などいくつかあることを指していると思います。(『古今 詰将棋書総目録』参照)

 図巧第一番の変化をこれだけ詳細に記したものは初めて見ました。
 そのわりに評言はあっさりしていますが、江戸時代の詰将棋書に変化を記したものは管見の範囲ではほとんどなく、作者のコメントも評言もありません。
 第一番は名作といわれていますが、私の記憶に残っているのは
「隊長 『初形図で1六角がないと詰まない、という事実には驚きます』」(『詰将棋探検隊』角建逸)
「図巧1番は『図巧』中3位か4位の作である。それが古今の1位作である筈がない」(「詰将棋トライアスロン」駒場和男)
くらいです。


第二番

100002


27金、15玉、16金、同と、27桂、同と、16歩、同玉、25角、同玉、
36角成、15玉、16歩、同玉、27龍、15玉、25馬、同と、16歩、同と、
24龍
まで21手
(※手数記載無し)


變化
16同との所同玉ならば
38角、15玉、16歩、同と、27桂、同と、16歩、25玉、27龍、26桂、36角成也

---
 第二番はこれだけです。
 若島正氏の「夢想の研究②」(詰パラ2015年11月号)に本局のすばらしい分析があるので、読んでみて下さい。

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