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2016年12月28日 (水)

加藤文卓の「圖巧解説」その3

月報1926年3月号

將棋圖巧解説
二峯生述

三番

100003

77銀、95玉、96金、94玉、86桂、同飛生、85金、同飛、95歩、同玉、
96歩、94玉、86桂、同飛、95歩、同玉、86銀、同玉、83飛、76玉、
85飛成、66玉、55龍、同玉、56馬、64玉、65馬、73玉、83角成、63玉、
74馬右、54玉、65馬、63玉、74馬左、72玉、73歩、61玉、43馬、同歩、
51と、同玉、41馬、同玉、42金也(※手数表記無し45手詰)


變化
76玉の所75玉ならば
85飛成、66玉、55龍、同玉、56馬、54玉、65馬也

◆本局詰手順は甚だ巧妙でありますが變化は皆容易であります
終局近く74馬行の所53歩成、同玉、54金、52玉、43金と指したい形も見えますが此時41玉と引かれて逃れとなります

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 三代宗看と看寿、並び称されていますが、月報の時代は三代宗看の無双の評価の方が高かったように思います。例えば1929年1月・2月の月報に「三代名人伊藤宗看圖式」の図面だけが九九生(=加藤文卓)解説予定で掲載されたことは「加藤文卓の『圖巧解説』」に書きましたが、その紹介として次のような一文がありました。曰く「本書は詰將棋圖式中の最も傑れたもので彼の有名な圖巧以上の名著であることは斯界先輩の普(あまね)く認める所であります」。また「難解の名著」という文言もあります。
 さらに1930年2月、前田三桂の「棋美談語」にも「詰將棋にも數々の書物はあるが、三代伊藤宗看の詰物が其随一である」。1935年8月蒐集狂生「初めて月報を見て」に「第一宗看圖式第二圖巧第三酒井圖式第四九代宗桂圖式」とあり、酒井桂史作は「難解其他の点からして」という観点で高い評価を与えています。
 
三代宗看は無双を知らなかったが、看寿は無双を知っていたから出発点が違うので、並列に論じることはできませんが現代はどうでしょうか。駒場和男のように無双を上位に見る人もありますが、大方は図巧に軍配を上げているのではないでしょうか。
 本局などを見て思うのは、着地がピタリと決まっていて、これが無双との最大の違いではないかと思います。難解さより完成度へという流れで、構想力に差があるとは思われません。おそらく、戦後は看寿の方向性を良しとする詰棋観へ変化したということなのだろうと。例えば次のような表明はこれを端的に示しているのではないでしょうか。
「後に重点を置く思想の裏側は、尻すぼみを嫌うことである。この点では私は初めからはっきりしていて、後半がダレきった長篇というものがどうにも我慢できず、自作にそれが出来てしまうと非常にいやであった」(巨椋鴻之介『禁じられた遊び』)。


四番

100004

35金、同金、46桂打、44玉、35角、同玉、17角、26歩、同角、24玉、
15角、35玉、24角、同飛、25龍、同玉、26金、14玉、15歩、13玉、
22銀生、12玉、11銀成、13玉、14香、同飛、同歩、同玉、15飛、24玉、
25金、33玉、34金、32玉、12飛成、41玉、31と、同銀、52龍迄(※「迄」と「也」が混在している。手数表記無し39手詰)


變化
35同金の所43玉ならば
65角、53玉、42馬、62玉、73銀、同玉、79龍、62玉、52馬、同玉、72龍、62歩間、64桂、53玉、42銀生、同玉、62龍、33玉、32龍也

35同玉の所33玉ならば
42銀生、同玉、51角にても容易なり

26歩間の所26角間ならば
同角、24玉、34金、25玉、35金、16玉、27角也

35玉の所15同玉ならば
16歩、同玉、26金、17玉、27龍也

25同玉の所44玉ならば
54金、33玉、34歩、32玉、22と、41玉、42銀、同玉、43銀也

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 これにも評言はありません。寂しいので、『象棋奇巧図式』(「古図式全書第六巻」1964年9月・全日本詰将棋連盟・門脇芳雄解説)より。

詰将棋の魅力は色々あるが、やはり捨駒に出て捨駒に還ると云うか、捨駒の妙手の味は何時見ても良いものである。図巧の作品は趣向や構想型の作品で他の作品集に比べてズバ抜けて居るが、本作の様に絢爛たる捨駒妙手の作品も優れている。
17角は主眼の第一着で、26歩合を見込んで一歩持駒を増やす為の渋い妙手。15角から24角と飛香の焦点に飛込み、25龍の飛込みには思わず唸らされる。大駒の連続捨てで実に豪快だ。26金以下は容易な攻めとなる。
構想として深みのある作品とは云えないが、捨駒の技巧を発揮した魅力ある中篇であろう。

 『詰むや詰まざるや』の図巧第四番解説と違い、雄弁ですね。
 「一歩持駒を増やす為」とありますが、これは角を歩に換えるためですね。


五番

0005

63角、84玉、93飛成、同玉、92飛生、83玉、84歩、同玉、85歩、83玉、
82馬、同銀、74角成、同玉、94飛成、73玉、62銀生、同銀、74龍、同玉、
84金也(※手数表記無し21手詰)


變化皆容易なれば略す
筆術者所持の將棋新報社發行の將棋圖巧には此圖の91桂を脱落している
然る時は前記82馬の所74角成、同玉、94飛成、84間、92馬の早詰を生ずる

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