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2015年12月13日 (日)

『将棋駒競』考 その21

 これまで何度も古図鑑版という言葉が出て来ましたが、古図鑑版とは何か。
 「詰将棋古図式鑑賞同好会」(日野秀男)により、1950年代後半に発行された
ガリ版刷りの古図式叢書です(有馬康晴の作品集は古図式とは言えませんが)。松井雪山も深く関わっています。
 戦前、岩木錦太郎、小林豊によって企画されながら頓挫してしまった「詰将棋大全集」がようやく実現したわけで、いろいろな不備はあっても、その意義はいくら強調しても、し過ぎるということはありません。

 田代達生氏によると、古図鑑版の「頒布部数は100部程度と、極めて少ないものと思われる」とのことです。

 私の見ているのは京都府立図書館にある松井雪山寄贈の古図鑑版で、吉田健氏が参照していたものと同じです。全22冊の内、12冊が合本になっています。
 合本の冒頭に田代氏のメモが貼り付けてあり、上記の頒布部数云々はこのメモからの引用です。

02
合本の表装。持出禁止(館内限定)です。

古図鑑版の『将棋駒競』です。
01_3

 古図鑑版全22冊を田代氏のメモに従って書いておきます(伊野辺看斉は伊野部看斎、橘仙貼壁の作者不知は久留島喜内が正しいと思いますが、原文のまま)。

作者・編者 書名(通称) 発行日
八代宗桂 将棋大綱 1955.2.25
三代宗看 将棋無双 55.8.1
九代宗桂 将棋舞玉 55.8.25
桑原君仲 将棋玉図 55.10.25
三代宗桂 将棋衆妙 55.12.25
三代宗与 将棋養眞図式 56.1.25
无住遷良 将棋大矢数 56.2.25
五代宗桂 将棋手鑑 56.3.25
初代宗看 将棋駒競 56.5.25
10 二代宗古 将棋智実 56.6.25
11 初代宗桂 将棋秘伝抄 56.7.25
12 伊藤看寿 将棋図巧 56.11.25
13 久留島喜内 将棋妙案 57.2.15
桑原君仲 将棋極妙
14 伊野辺看斉 将棋手段草 57.4.25
15 二代宗印 将棋勇略 57.9.25
16 宥鏡 将棋勇士鑑 57.12.25
17 添田宗太夫 将棋秘曲集 58.2.20
18 須藤三重郎 (記載無し) 58.3.5
19 二代宗印 将棋精妙 58.4.5
20 赤縣敦庵 将棋綱目 58.6.25
河村古仙 将棋貫珠
21 松本朋雅 将棋万象より30局 58.9.15
作者不知 古作物50局
作者不知 宗助図式10局
作者不知 橘仙貼壁15局
22 有馬康晴 作品集より104局 59.12

京都府立図書館の合本にあるものは右端に○。

合本には、会報も一緒に綴じられています。
第六号ノ一(1956.1.20)
第六号ノ二(1956.1.20)
第七号ノ一(1956.2.20)
第七号ノ二(1956.2.20)
第八号ノ一(1956.3.20)
第八号ノ二(1956.3.20)
第九号(1956.5.25)
第十号(1956.6.25)
第十三号(1957.2.10)
第十四号(1957.4.25)

 会報第十三号にこんな投稿がありました。
「小生は大学四年で忙しい筈なるも、百手越えの趣向局を手がけており、本業との板ばさみで困っています。図巧をこの機会に又並べてみましたが、改めて感心するばかりです。北原君と文通するようになってから、作風の大型化を心がけていますので、図巧により大いに勉強して、力の入った中長篇を少しずつ作ってゆきたいと思っています」
東京都・巨椋鴻之(ママ)

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第69番

040069

85龍、83玉、74龍、同玉、75飛、64玉、55馬、53玉、45桂、42玉、
72飛成、52香、同銀成、同銀、53桂成、31玉、22と、同金、同馬、同玉、
52龍、13玉、17香、16歩合、12龍、同玉、23金、21玉、22銀
まで29手詰

同歩は、74飛、84合、95馬以下。
85同玉は、75飛、94玉、95馬以下。

23金、15玉、12龍以下。また、
16同香、15合、12龍、24玉、16龍以下も詰む。

 初手95龍では詰まず、85龍から74龍と捨てるのがすべて。
 これだけのためにしては大模様になってしまいました。

 「『古図式鑑賞同好会』による日野秀男、松井雪山両氏の研究は高く評価されるが、原書によらず、更に図式に手を加えたことは、原図を混乱させてしまった。特に、この第六十九番の改正図は『改悪図』である。
 本作は、このままで『完全作』なのである」

 上記は清水孝晏ワープロ版の解説ですが、古図鑑版第69番は間違った図ではなく、第100番までの図面、手順記載の後の「昭和版 『將棋駒競』完成章」なる補正が余計なのです。
 献上本の復刻版と比べると、古図鑑版は(図面番号を復刻版と合わせると)22図異なっています。当時手に入ったのは「將棋月報」社の横田幸歩版か『詰將棋精選』第二巻(これも誤図が多い)、せいぜい嘉永版くらいのものだと思われますので、仕方のない面があります。
 


第70番

040070

32金、同玉、21角、22玉、14桂、13玉、23金、同龍、同銀成、同玉、
12角成、同玉、32飛、23玉、22飛成、34玉、25龍、44玉、45龍
まで19手詰

14同龍は、32角成から14角。

 打った21角が後で邪魔になる狙いです。


第71番

040071

72金、同玉、64桂、同歩、62飛、同金、同と、同玉、54桂、同歩、
82飛、72銀合、63香、52玉、72飛成、43玉、32銀、同金、52龍、同玉、
53金、41玉、51角成、同玉、62香成、41玉、52成香
まで27手詰

72桂香合は、63香、52玉、53金、41玉、81飛成、32玉、31龍、以下。
72角合は、63香、52玉、72飛成、43玉、52角、32玉、41角成、同玉、51角成、同玉、52金まで。

32同玉は、21角成、同玉、43桂以下。

 初手81金から71飛は、82玉、72飛打、93玉、85桂、84玉、73飛成、95玉、91飛成、86玉で詰みませんが、67銀を欠くと、以下87香、76玉、74龍以下詰みます。
 作意では64桂、54桂と捨てて空隙をつくるのがうまいところで、収束までまとまっています。


第72番

040072

44桂、同金、61馬、同玉、62金、同玉、63銀、73玉、74金、82玉、
83桂成、91玉、92成桂、同玉、84桂、93玉、85桂、82玉、73桂成、91玉、
92桂成、同玉、83金、91玉、82成桂、同歩、92歩、81玉、72銀
まで29手詰

 角筋を通すために、桂を捨てておくのが肝要な手。
 61角成以降は、物量にものを言わせる式で、あまり妙味が感じられません。

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