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2015年11月 5日 (木)

『将棋駒競』考 その8

 『将棋駒競』考 に掲げた各種異本のうちに、『宗看首書象戯作物』という本がありますが、正確には『宗看首書 象戯作物 一百箇』だそうです。
 首書(かしらがき・しゅしょ)とは頭注のことです。本文の上部に別記してある注釈等を指します。その場所が本文の下部なら脚注。行間にあれば傍注。
 この「首書」は寛文年間あたりから流行しはじめたらしい。
 『増益書籍目録』(元禄9年=1696年)には7000点ほどの書籍が掲載されていますが、『◯◯首書』と名乗っているものがかなりあります。
 詰棋書では、図面が続いていて、そのあと解答篇として小ぶりな図面と解答、解説がまとまっていることが一般的なスタイルだと思いますが、江戸時代の詰将棋書は解答篇で小ぶりな図面を省略しているので、いちいち図面の頁に立ち帰らなくてはならず読むのが面倒です。そこで、図面の上部に解答(これが詰将棋の首書!)を書いておけば、分かりやすくて頁の節約にもなります。うまく考えたものですね。そもそも作品集は問題集ではないので、同じ頁に図面と解答があっても何等かまわない。
 これ がそうです。


第17番
040017
73銀、同玉、85桂、72玉、52飛成、同銀、73桂成、同玉、51角、63玉、
62角成
まで11手詰

52飛成は、同銀、73銀、63玉で逃れ。

 この作品は『新撰詰将棋』、『日本将棋大系』、「駒競私記」のいずれも採り上げています。狙いが明快で配置もくどくないところが良いです。
 邪魔駒消去なのですが、85桂と足場を固めておく必要があり、単なる飛車消しではすまないところが値打ちです。
 もう一路左に寄せて、攻方2枚の歩の代わりに金か銀を置けばさらにスッキリしますが。



第18番
040018
33桂生、同桂、32銀、同銀、同桂成、同玉、41角、42玉、43銀、同玉、
52銀、同金、55桂、53玉、52角成、同玉、54龍、53飛合、43桂成、61玉、
62金、同玉、53龍、71玉、61飛、82玉、62飛成、72桂合、73龍寄、92玉、
72龍右、93玉、94歩、同玉、64龍、同馬、95香、84玉、96桂
まで39手詰

32銀から精算するのは、34龍回りのあと42玉で逃れ。

33同銀は、23龍、31玉、41歩成、同玉、32銀、42玉、43銀成、同玉、32角、44玉、55銀、53玉、54銀、52玉、43角成以下。

73龍引も可。

 初手はあとで41角と打つための伏線です。
 好手はいくつかあるのですが、全体に散漫な印象。主張点というか、的が絞り切れていない気がします。



第19番
040019
84銀、同玉、95銀、73玉、65桂、62玉、73金、61玉、71金、同玉、
63桂、61玉、53桂生、同飛、51桂成、同玉、62金打
まで17手詰

82玉は73金、71玉、63桂以下作意に合流し2手早い。

 桂を温存して84銀から95銀が攻方の好手。62玉が玉方の好手。取れる強力な駒を取らずに躱すのですから、これは見事です。



第20番
040020
44銀、同銀、42角、同金、23金、34玉、24金、同玉、25金、33玉、
23角成
まで11手詰

44同香は、32角成、34玉、25金、同金、43角、35玉、25角成、46玉、47金まで同手数。
44同玉は53角、同玉、65桂、44玉、45金以下。

42同玉は、32成桂、53玉、65桂、64玉、74金まで。

 34から35、44から53へという脱出路が見えています。そこを狙って44銀、42角と先着します。ここまでが見所で、その後の収束は冴えません。
 22は成桂でなければならない必然性はなく、現在ならと金にするところです。何かしらの法則でもあるのかと小駒成駒の出現具合を調べてみましたが、特に主張はなさそうです。


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