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2015年8月17日 (月)

『将棋勇略』管見 その5

 それでは作品を見ていくことにしましょう。

第1番

060001_3  

83銀、同馬、94飛、同馬、63角成、83玉、73馬、93玉、72馬、
33歩合、
同龍、同桂、82銀、92玉、93歩、同馬、81銀生
まで17手詰

【山】

83同玉なれば72角成、同玉、71飛、同玉、73龍、72飛合、62角、61玉、72龍、同玉、73銀、63玉、53飛、74玉、54飛成、83玉、84龍、92玉、82龍迄
又72金合、62銀、81玉、72龍、同玉、73金、81玉、72角、92玉、83金迄なり
前に戻りて83銀打の時84玉なれば94飛、83玉、72角成、同玉、54角、
82玉、93飛成、同玉、73飛成、83香合、84銀、94玉、93龍迄
54角に対して61玉、62玉の二変化あれ共何れも駒残りて俗詰になる。


92玉なれば83銀、93玉、82馬、84玉、73飛成迄なり又83銀、同馬、同馬、81玉、21飛成、71歩合、73桂迄なり

83香合なれば82銀、84玉、73飛成迄

本圖は一度大道詰将棋にて見たる事
あり。手駒の飛銀の打捨て巧みなり
(※兎月の感想には句読点がないので、適宜句点を補います)

【清】
盤上に桂四枚を配置したのは72馬の時33桂合で不詰になる予防である。平凡作。

 【山】は山村兎月が「将棋月報」に記した変化、【清】は「詰棋界」での清水孝晏の評です。
 ただし、
同玉のとき71飛では作意より短くならず、ここは54角、61玉、71飛、同玉、73龍以下13手が現代の手順です。
 本局は、玉方の馬を退路封じに逆用する作品。凡作ですかね?
 古典を鑑賞する場合、今日の目で見てつまらんというのは簡単ですが、当時の文脈の中に置いてみてどうなのかが大事なのです。

 初手いきなり94飛なら、84銀打が最善で逃れます。そこで83銀と退路に先着。同馬と63への利きをそらせば94飛に合駒は打てず、84馬なら63角成、83玉、84飛、同銀、62角、92玉、81馬、同玉、83龍、82合、72角成まで15手。
 合駒制限は残念ですが、壁として役に立っており、それほど悪い作ではないと思います。
 ただし、構図が広がっているので、私ならこんな感じにします。

060001_2

 角は54まで近づけられますが。
 改良図は余計ですが、「将棋月報」の山村変化と「詰棋界」の清水評は毎回載せます。ただし清水評の第17番以降は「詰棋界」を所持していないので、古図鑑版から引用します。
 ところで、月報には二度『勇略』の図面と解が掲載されています。最初は1932年1月から1933年12月号まで。このときは第60番まで解答募集形式、第61番からは図面と手順同時。二回目は1935年7月から1935年12月号まで。これは図面が三回に分けて掲載され、最後の12月号は手順も一括掲載。変化等の記載や評価はありません。
 最初の出題のときは、あらかじめ有力解答者「十數名に各八題解答を依頼」(月報1932年4月号)したものの、わずか三名だけの解答で思うように集まらなかったため、誌上で広く解答を募集したものです。では第61番以降はなぜ解答募集をしなかったのか。山村兎月が解いたのでしょうか。
 これはおそらく、岩木錦太郎が上野の図書館で解答本を発見し、兎月に送ったので解答募集の必要がなくなったのではないかと思います。



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