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2015年1月14日 (水)

田中鵬看著『詰将棋集』 その7

 二局目は「趣向詰」を解剖してジツクリと楽しんでいただこう。「趣向詰」とはどんな詰将棋か、簡単に考えるなら、同一手順の繰り返しが三、四回以上である詰将棋のことである。その趣向が難解か斬新奇抜であればある程、趣向の繰り返しが長ければ長い程、趣向が単発でなく複数で変化に富んでいるもの程、「趣向詰」としては優秀なのだ。
 「趣向詰」は長手数詰になるにもかかわらず、同一趣向の作が生じ易く、後者が知らずに発表されることがしばしばある。その場合後者の作品は、趣向の類似している度合いで作品価値はゼロになるのだ。"趣向詰は早い者勝ち"とよくいわれるのはその由縁だ。本作の後半の趣向の一部分に類似したものがすでに江戸時代の作品にある。もちろん筆者があとから知つたことではある。しかし本作の趣向は単発ではなく、右に左に玉を追う道程は非常に面白く楽しめよう。玉の往復二回半、「津波」の如き動きに一~四の線はキレイに消えて「煙詰」となる。あたかも"津波"に押し流されてしまつたかのように……。

趣向詰「津波」

詰将棋パラダイス(発行所名古屋市南区呼続町1-32文勝ビル402号)昭和三十六年四月号に発表
詰パラ大学院賞受賞

Para61650243

64成香、同玉、54と、74玉、65と、同玉、56銀、74玉、65銀、同玉(第一図)

(第一図は65同玉まで)

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※ジヤマ駒消去
64成香と捨て、54とは、遠く12角が23金の質駒を見越して道を開けたのだ。65と~56銀~65銀と消すのは39馬のニラミを通すに他ならない。56の地点へ玉が出れば23角成が待つている。

第一図以下…29馬、38香、同馬、同と、56と、74玉、64と、同玉(第二図)

(第二図は64同玉まで)

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※好手56と
29馬と寄つて合駒を強要する。38銀合では同馬、同と、56と、同玉、23角成以下の早詰。38香合が正手。同馬と切つて56とが好手。取れば23角成以下の早詰。74玉の逃げは必至。64とと手順の攻撃を続行。

第二図以下…65香、74玉、73と、同玉、93飛、72玉、62歩成、同金、同香成、同玉(第三図)

(第三図は62同玉まで)

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※"趣向"の幕開き
65香は絶対手。これで香が三本並んだ。一波乱起きそうだ。73とと飛を奪取して93飛の離し打ちは当然手。72玉の逃げにこれより本番の"趣向"に突入する。62歩成から精算して金を入手する。

第三図以下…52歩成、同金、同香成、同玉、42歩成、同金、同香成、同玉(第四図)

(第四図は42同玉まで)

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※香襖
52歩成、同金、同香成、同玉でまた金を入手。このように一連の手順を繰り返すのが"趣向詰"なのだ。42歩成、同金、同香成、同玉で玉方の金三枚はキレイにはがされて、玉の守備陣も手薄になつた。

第四図以下…32と、52玉、42金、62玉、52金打、72玉、71金、同玉(第五図)

(第五図は71同玉まで)

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※妙着71金
32とは取れない。31と、同玉、21金以下の早詰があるからだ。52玉に42金、62玉に52金打と今度は金の並べ打ちだ。72玉に62金打では82玉、92飛成以下不詰だ。71金が絶妙の一手で局面は進展する。

第五図以下…61金、同玉、51金、同玉、41と、同玉、23角成、同龍、33桂、同龍(第六図)

(第六図は33同龍まで)

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※桂を一掃
61金、同玉、51金と順次桂をハガシに掛かる。41と、同玉、ここで31とと手拍子に桂を取つてしまつては同玉で失敗。23角成と金を入手しておかないと後続手に窮する。同龍に33桂と"新趣向"の展開。

第六図以下…31と、51玉、43桂、同龍、41と、61玉、53桂、同龍、51と(第七図)

(第七図は51とまで)

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※桂と"と金"の変奏曲
31とは手順だが同龍は43龍で簡単。51玉と逃走。43桂に逃げる手は龍の守備力が止まつていて容易な詰み。同龍に41ととダニの如く喰いつく。61玉に53桂、同龍の一手だ。こうして逐次玉を寄せるのだ。

第七図以下…71玉、63桂、同龍、61と、72玉、62金、同龍、同と、同玉(第八図)

(第八図は62同玉まで)

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※龍の捕獲
51とと趣向は続く。71玉に63桂、同龍と同手順の応酬だ。61とに初めて72玉と二段目へ上がる。62金と打つて精算飛を獲得する。一~四線の筋は飛以外の駒はなくスツキリとして気持よかろう。

第八図以下…65飛、64歩合、同飛、52玉、54飛、42玉、44飛、32玉、43飛行成(第九図)

(第九図は43飛行成まで)

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※妙防64歩合
65飛は限定打。変化が多くて書き尽くせぬが35成銀にネライをつけて打つた飛だ。64歩合が最善の防手。桂では早詰。同飛から52玉、54飛~44飛と寄り、43飛行成で玉の御臨終も近づいた。

第九図以下…21玉、22歩、31玉、91飛成、22玉、82龍、11玉、13龍、21玉、22龍(詰上り図)まで九十一手詰

(詰上り図は22龍まで)

15jan10k

※二枚龍の収束
21玉が最善の逃げ、22歩に31玉と最後の抵抗を試みる。91飛成と二丁龍で追撃されては玉もたまるまい。82龍、11玉に13龍と回つて22龍までの完結をみる。"二丁飛車に追われた夢を見た"である。



 引用者注記
 本局は、63飛上成、41玉、42歩、31玉、33龍、21玉、81龍、12玉、32龍、22合、21龍寄以下の余詰があります。


 とりあえず思い出すのは
九代大橋宗桂『将棋舞玉』第8番(1786年)でしょうか。

12mai0008

11角成、31玉、23桂、同龍、21馬、41玉、33桂、同龍、31馬、51玉、
43桂、同龍、41馬、61玉、53桂、同龍、51馬、71玉、91飛成、72玉、
73金、同龍、61龍、83玉、73馬、同玉、72飛、84玉、64龍、95玉、
92飛成、86玉、97龍、同玉、67龍、86玉、97龍、76玉、66金、同玉、
67龍
まで41手詰



つづく

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