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2015年1月15日 (木)

田中鵬看著『詰将棋集』 その8

 本局も「煙詰」である。百二十七手詰の長尺物で「煙詰」史上では三位にランクされる長編だ。筆者の十一号局にあたり、作品完成の日にたまたま"初雪"を見たので表題に採り入れた。どうして消えるのかと心配されるような駒が、いとも鮮やかに「初雪」の消える如く捌けて行く。難解さはないが序盤より数十手、二枚角の連携に持ち込むまでの手順は、「煙詰」であるだけに抜群の巧妙さと自負している。特に67角の八面六臂の大活躍には目を見張るものがあろう。
 余談になるが、「煙詰」にも新機軸を採り入れたものも出現しているので、紹介しておこう。大駒を除き盤上三十五枚の小駒が詰上り三枚になる「小駒煙詰」で現在六局存在する。(筆者も一局あり)盤上四十枚の駒が詰上り三枚になる「双玉煙詰」で筆者のみ三局完成。盤上三十九枚の駒が詰上り四枚で都にて詰む「都玉煙詰」で、某氏が三局だけ完成したのである。「煙詰」よりいずれも創作は至難を窮める。
 余談はさておき本題の玉は雪隠で討ち取られるのだ。

煙詰「初雪」

近代将棋 昭和三十八年四月号に発表
塚田賞受賞

50692848

69龍、59金、58角、38玉、48と、28玉、27と、同銀成、29金、同玉(第一図)

(第一図は29同玉まで)

15jan10a_4

※好手29金
盤上三十九枚の駒配置、詰上り駒三枚になる妙趣をジツクリと味わつていただこう。69龍は"此の一手"で、48とでは89玉と相手にされず歩詰になる。59金は必至。58角~48と~27とは必然の成り行き。29金も絶対手だ。

第一図以下…59龍、39金合、同龍、同玉、49と、28玉、39金、18玉(第二図)

(第二図は18玉まで)

15jan10b_3

※短い龍の一生
59龍と金を奪取。18玉の逃亡には19歩、17玉、18金、同成銀、同歩、同玉、36角以下詰み。39金合は、止むを得まい。同龍と切つて捨て局面の進展を図る。49と、28玉に39金と平凡に迫つて行く。18玉は当然の逃げ。

第二図以下…59龍、39金、同龍、同玉、49と、28玉、39金、18玉(第三図)

(第三図は28銀まで)

15jan10c_3

※金銀の攻撃
19歩は軽手。取れば29金打の即詰だ。17玉に18金と打つて精算銀を入手する。ここで36角のノゾキは27歩合で失敗。29銀から28銀が平凡ながら正着。序の手順は平易の域を出ないが、今後のサバキが楽しみだ。

第三図以下…16玉、26と、同玉、37銀左、15玉、16歩、同玉、27銀、同玉(第四図)

(第四図は27同玉まで)

15jan10d_4

※二枚銀の活躍
16玉は絶対の逃げ、26とと捨てて37銀引が本筋。15玉と一歩遠ざかるが、16歩と叩いて玉を吊り出す。27銀と捌くのが軽手で同玉の一手。58角はグツと玉を睨んでいる。

第四図以下…38と、16玉、27と、同玉、28金、16玉、49角、15玉、26銀、同玉(第五図)

(第五図は26同玉まで)

15jan10e_3

※角の活動開始
38と~27とと捌いて56角に自由を与える。28金、16玉は当然の応酬。49角と引いて玉に長打力を見舞う。15玉は絶対。26銀と捌き一歩一歩と玉を追い込み締め上げて行く。14玉の逃げは24と以下早詰だ。

第五図以下…27金、15玉、16金、14玉、24と、同と、15香、同と、同金、同玉(第六図)

(第六図は15同玉まで)

15jan10f_3

※金のスリ上がり
27金、15玉、16金は必然の推移だ。24とと成香を奪う。同玉は、34角成以下簡単。同とに15強、同と、同金、同玉は当然手の応酬。すでに三分の一の駒は盤上より姿を消し二枚角の活躍を思わす。

第六図以下…16角成、24玉、34と左、13玉、14歩、同玉、58角、13玉(第七図)

(第七図は13玉まで)

15jan10g_4

※二丁角の威力
16角成。14玉の逃げは58角、24玉、34と行、13玉、24と、同玉、34馬以下、一歩使用せずに本筋に入るので早詰を生じる。24玉が本筋。34と行、13玉に14歩のタタキで58角と玉を射程に入れる。

第七図以下…24と、同玉、34馬、13玉、12馬、同玉、67角、21玉(第八図)

(第八図は21玉まで)

15jan10h_3

※馬の最後
24とのサバキから34馬と馬角の協力で玉は次第に後退の一手を辿る。13玉の逃げに12馬は英断。同飛は14金の一発だ。同玉に67角とのぞく。よくチョロチョロする角で玉にとつては憎き奴だろう。

第八図以下…22金、同飛、同と、同玉、23飛、31玉、42と、同玉、51銀不成、同玉(第九図)

(第九図は51同玉まで)

15jan10i_3

※大物飛の入手
22金で飛を入手する。23飛の直打が急所で、24飛と離しては31玉で不詰になる。31玉に42とは当然手。51銀不成と桂を奪取、同玉以外の逃げはいずれも簡単な早詰。

第九図以下…53飛成、61玉、71歩成、同玉、73香、82玉、72香成、同玉(第十図)

(第十図は72同玉まで)

15jan10j_3

※新スター龍の誕生
向かつて右半分の盤上はキレイに消滅してしまつた。53飛成。新しき主役の誕生で、後半の追い込みの立役者となるのだ。61玉に71歩成と香を獲得、73香が軽手。82玉に72香成と軽く成り捨てる。同玉以外仕方あるまい。

第十図以下…94角、81玉、93桂、91玉、51龍、82玉、62龍、93玉、85桂、同成香(第十一図)

(第十一図は85同成香まで)

15jan10k_2

※角の跳躍
よく活躍した角ではあるが最後の御奉公の三段跳94角だ。81玉に93桂は必至。91玉も絶対手。51龍と突つ込む。82玉に62龍と近づかねば73玉とトン走される。93玉に85桂は当然ながら軽手。

第十一図以下…73龍、94玉、85と、同玉、86と、同桂、同歩、94玉、95香、同玉(第十二図)

(第十二図は95同玉まで)

15jan10l

※収束近し
73龍と迫り94玉に85とと香を入手。86と、同桂、同歩も必然の手段。86同玉では73と以下早詰。94玉と後退するのが本筋。95香には同玉の一手。最早大半の駒は消え失せ週末の侘びしさを感じる。

第十二図以下…96歩、同玉、88桂、同金、97香、86玉、77と、97玉(第十三図)

(第十三図は97玉まで)

15jan10m

※小味な手順の妙
96歩と香を奪取、同玉に88桂が好手。同金で金の守備位置は変更した。97香の追打ちをかける。同玉は88と以下簡単。86玉の逃げは玉の最後のアガキだ。77とに止むなく97玉と逃亡する。

第十三図以下…88と、同玉、87と、99玉、98金、同玉、78龍、99玉、88龍(詰上り図)まで百二十七手詰

(詰上り図は88龍まで)

15jan10n

※雪隠で御臨終
88と、同玉、87と、99玉で玉は雪隠まで追い詰められた。98金が最後の軽手で78龍と急降下、99玉に88龍までの大往生となる。延延百二十七手、"煙詰"の解後感は如何なる詰将棋よりスカツとしよう。



煙詰」史上では三位
この時点では
黒川一郎作「金烏」(詰将棋パラダイス1964/02)141手詰
近藤善太郎作「初夢」(詰将棋パラダイス1970/02)131手詰
に次ぐものです。
 

黒川一郎作「金烏」「詰将棋パラダイス」1964年2月

Para61652373

28銀右、29玉、39金、18玉、27銀、同と、29金打、17玉、28金直、16玉、
27金、同玉、28金、16玉、17歩、15玉、25と、同玉、36銀、15玉、
16歩、同玉、27金、15玉、14と、同玉、24と、同玉、35銀、14玉、
15歩、同玉、26金、14玉、13と、同玉、23と、同玉、34と、同と、
同銀、13玉、14歩、同玉、25金、13玉、12と、同玉、22と、同玉、
32歩成、同歩、53香成、77歩、同馬、同銀成、33銀左成、同歩、同馬、同桂、
同銀生、11玉、23桂、21玉、22歩、12玉、13歩、同玉、24金、12玉、
11桂成、同玉、21歩成、同玉、32銀生、11玉、12歩、同玉、23金、11玉、
21銀成、同玉、32香成、同龍、同金、同玉、42成香、同玉、44飛、52玉、
43飛上成、61玉、63飛成、71玉、41龍、82玉、81龍、同玉、92香成、同玉、
84桂、82玉、72龍、93玉、73龍、83桂、94歩、同玉、95香、同桂、
同成桂、同玉、75龍、94玉、95歩、83玉、72龍、84玉、96桂、95玉、
75龍、96玉、85龍、97玉、87金、同成銀、98歩、同成銀、同金、同玉、
89銀、97玉、88銀、98玉、87龍、89玉、77銀、79玉、88龍、69玉、
68龍
まで141手詰

23と、同玉、22と左、24玉、35銀、14玉、41馬、32銀合、同馬、同歩、26桂、15玉、16銀までの余詰あり。

 この余詰については、「将棋雑記」黒川一郎研究128に記載されています。




近藤善太郎作「初夢」「詰将棋パラダイス」1970年2月

Para66704509

12飛成、同玉、13と、同玉、14歩、12玉、13歩成、同玉、24と、12玉、
22歩成、同玉、32香成、同と、同香成、同玉、33と右、41玉、42銀、同金、
同と、同玉、43と、51玉、52金、同金、同と、同玉、63歩成、同と、
64桂、同と、53歩、同玉、54歩、同と、63金、同玉、54龍、62玉、
17馬、26桂、同馬、同歩、63歩、61玉、73桂、同歩、62歩成、同玉、
73香成、同玉、74と、同成香、83と、同玉、74龍、82玉、84香、83歩、
同香生、91玉、92歩、同玉、93歩、91玉、81香成、同玉、82歩、同玉、
94桂、81玉、92歩成、同玉、72龍、93玉、82龍、94玉、85銀、95玉、
96銀、同玉、85龍、97玉、98歩、同馬、同金、同玉、43角、99玉、
96龍、89玉、34角成、79玉、99龍、68玉、88龍、59玉、49金、同玉、
67馬、39玉、57馬、29玉、47馬、18玉、27銀打、同歩成、同銀、同玉、
36馬、17玉、77龍、28玉、37龍、29玉、47馬、18玉、19歩、同玉、
17龍、18金、37馬、29玉、18龍、同玉、28金、19玉、38金、29玉、
28馬
まで131手詰



この時点での小駒煙は次の6局?

作家名 作品名 発表誌 発表年月 手数
黒川一郎 嫦娥 詰将棋パラダイス 1963/10 103
駒場和男 驟雨 近代将棋 1965/05 101
藤井孝一 詰将棋パラダイス 1966/01 101
黒川一郎 雪女 詰将棋パラダイス 1966/01 111
花田尚一 詰将棋パラダイス 1970/04 105
田中鵬看 神武東征 詰将棋パラダイス 1970/07 115

黒川作と駒場作の間に、作者は小駒煙を「ある地方新聞に発表」(『近代将棋図式精選』P198)とありますが、それが「神武東征」の原図なのかどうか分かりません。

「都玉煙詰」の某氏とは、いうまでもなく駒場和男氏です。



つづく

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