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2015年1月 4日 (日)

限定移動集 その4

 今回はまとめです。

 限定移動にはどれくらいの意味付けがあるか、掲載作から考えてみました。順不同ですが、分かりやすいものから。
 『80年代ショート詰将棋ベスト200』以外からも適宜作例を示してみます。


①駒取り狙い
 作意手順ではあらわれず、変化で駒を取る手順になることが多いです。

赤羽守作1983年9月

佐々木康作1988年9月 意味付けが二つあります。一つ目。

古関茂作「詰将棋パラダイス」1967年3月


Para66701207

79角、89玉、57角、88玉、79角打、99玉、66角、同飛、
57角、89角、
同飛、同玉、78角、88玉、66角、77銀、89飛、97玉、75角、同銀、
98銀、同玉、99歩、97玉、87飛、96玉、81飛成、78銀生、85龍、97玉、
89桂、同銀成、87龍
まで33手詰


 
57角は⑥守備駒の利きを止めるため、57角は駒取り狙いで、実際に飛車を取ってしまいます。



②成るため
 岡本正貴作の3手目は成るためと転回のため兼用かと思っていましたが、次に不成でも最後で成れる(成生非限定)ので、より端的な例を挙げます。


太田慎一作「詰将棋パラダイス」1988年11月


Para86902351

44銀、同玉、25角、47馬、43角成、35玉、36歩、同馬、46金、同馬、
25飛成
まで11手詰


 
47他合は43角成、45玉、25飛成以下。



③取られないため

小林敏樹作1984年7月

余詰屋本舗作「詰将棋パラダイス」1996年9月

Para96000764

98飛、37玉、27馬、同玉、39桂、37玉、38飛
まで7手詰


 57玉は、56飛、67玉、85馬、77玉、76馬まで。初手88飛だと、そこで88玉と取られる。
 飛車をヨコに振る作例です。市島啓樹氏の作品。



三谷郁夫作「詰将棋パラダイス」2000年2月


Para96004458

18銀、同玉、45角、17玉、18香、26玉、
19角、46金、36金、同金、
同飛、25玉、26飛、同玉、36金、27玉、37金
まで17手詰


 
28角は、最終手37金に28玉で逃れ。
 角の作例です。



④転回

岡本正貴作1984年6月 限定移動が2箇所ありますが、3手目、5手目ともです。

小林敏樹作1988年4月

塩見倫生作「詰将棋パラダイス」1983年11月


Para81853201

58飛成、
36玉、56龍
まで3手詰


 
24玉なら28への転回を睨んだ限定移動です。

⑤退路封じ
 一箇所だけの封鎖、二箇所を睨んだ封鎖、あとで守備駒を動かさないと利きが届かないものなど、表現方法はいろいろありますが。

長谷川哲久作1980年10月

飯田繁和作1981年9月
 結果的に邪魔駒消去になっていますが、直接の意味は3筋に逃さないためです。


有吉澄男作1983年12月

岡本正貴作1984年6月 5手目です。

橋本樹作1980年8月

赤羽守作1985年3月

赤羽守作1986年6月

吉田芳浩作1987年7月 限定移動が2箇所ありますが、初手です。

小林敏樹作1985年5月

岡部雄二作1985年8月 限定移動が2箇所ありますが、5手目です。

行き詰まり作1988年1月 意味付けが二つあります。一つ目。

岡村孝雄作1988年4月

佐々木康作1988年9月 意味付けが二つあります。二つ目。

六車家々作「詰将棋パラダイス」1979年5月


Para76803814

35金、同桂、
54香、45玉、53香成
まで5手詰


 初手は質駒をつくっておく意味。これで作意では33玉と出来なくなります。
 
52香成は43玉で取られるので、52に利かせるため。53香成も54に利かせるためなので、どちらも退路封じです。

⑥守備駒の利きを止める

金子哲哉作1984年9月

岡部雄二作1985年8月 7手目です。


行き詰まり作1989年3月

武南新一作「詰将棋パラダイス」1976年7月


Para76800622

26馬、24玉、62馬、13玉、22龍、同馬、35馬
まで7手詰


⑥中合(捨合)をさせない
捨てられ人作1981年2月

有吉澄男作1983年6月

原田清実作1984年6月

原亜津夫作1987年8月

森長宏明作「将棋マガジン」1983年12月 桂中合をさせない特殊な例です。


YYZ作「詰将棋パラダイス」
1987年3月

Para86900872_2

94龍、66玉、57金、同龍、64龍
まで5手詰


 
84龍は、74歩合で同角成なら66玉で打歩詰、同龍なら56玉で逃れます。
 
74歩合は、同角成、66玉、96龍まで同手数駒余り。従って①駒取り狙いの意味も兼ねています。
 なお、「行き詰まり」「塩見倫生」「YYZ」「呉一郎」「片山倫生」は同一人物です。


⑦合駒をさせない(無効にする)

波乱万丈作1986年11月

廣瀬崇幹作「詰将棋パラダイス」2013年4月

201304hirose

59角、57と、46香、同玉、56馬、同と、37角
まで7手詰


 
68角は57歩合、55角は、47桂合で逃れ。
 47への合駒は同香で無効です。
57桂歩合は47香まで。57打合が金銀香なら同飛。
 ⑩新たにバッテリーを形成する、にも当てはまる作品です。



⑧邪魔にならない位置へ

捨てられ人作1982年7月

行き詰まり作1988年1月 意味付けが二つあります。二つ目。

小林敏樹作2006年9月

川崎弘作「詰将棋パラダイス」1955年4月


Para54600715

27金、25玉、36金、15玉、16歩、同玉、
32香成、15玉、42馬、16玉、
52馬、15玉、43香成、59龍、16歩、同玉、44成香、15玉、42馬、16玉、
43馬、15玉、26龍、同香、16歩、24玉、33馬、13玉、22馬、24玉、
34成香、同玉、33馬
まで33手詰


 
32香成は馬の邪魔にならないため、43香成は⑪攻駒の利きを止めて打歩詰を回避するためです。



行き詰まり作「詰将棋パラダイス」2001年5月


Para01050430_2

97飛、65玉、87馬、56玉、47金、同玉、65馬
まで7手詰


 99角の利きと87馬を邪魔しないのは97飛だけです。


⑨直列にする

柳原裕司作1987年4月

武島宏明作「詰将棋パラダイス」2014年4月

201404takesima2

69角、13銀、58馬、16玉、15龍、同玉、25馬
まで7手詰



⑩新たにバッテリーを形成する

吉田芳浩作1987年7月 3手目です。

谷口均作「詰将棋パラダイス」2009年11月


⑪攻駒の利きを止めて打歩回避

橋本樹作1980年5月
 「ブルータス手筋」と呼ばれています。理由は次図の解説。

栗原壽郎作「詰将棋パラダイス」1952年2月


149

11飛、92玉、21角成96角合、同香、同桂、81角、同玉、54馬、92玉、
81飛成、同玉、71歩成、同玉、74龍、61玉、71龍、同玉、72銀
まで19手詰


 71飛は、92玉、54角、96歩合、同香、同桂、81飛成、同玉、71歩成、同玉、74龍、61玉、71龍、52玉で逃れ。
 51歩合は、同飛成、92玉、93桂成、同玉、91龍、92合、94歩、同玉、76角まで。
 96歩合は、同香、同桂、93歩、81玉、54角まで。11飛の利きが止まっているので、93歩と打てる。

 解説-郷田五郎
 シーザーはいえり"ブルータスお前もか"と。
 二月号本校で最大の問題を提示したのが、本・栗原氏作であった。あまりにも感に衝たれた私は、本稿の筆を執りながらも頻りに血が騒ぐのを如何ともし難い。この、今までさして名を知られていない作者が僅々20手足らずに醸成した類い稀なる構想を稚拙な私の筆で説こうとするさえ空恐ろしい。
 本作品を不詰と解答された相当数の生徒さん方よ、貴方がたは不幸だった。続々と寄せられる不詰解答には、成績優秀者名簿中に見える方のもあり、思わず"○○君、貴君もか!"と叫ばずにはいられなかった。
 この傑作(と私は信ずる)身をもって体験されなかったことは返す返すも口惜しいことであった。非力な私への不信と誤植危惧とが相乗されて、不詰解答した方は誰よりも先に此処を読んでいるであろう。誤植ではなかった。絶対に正しい図面であった。絶対に詰む詰将棋であった。だからここで一寸待ってくれ給え。アトの説明を読むのは待って呉れ給え。どうかもう一度、今からでもおそくはないから、詰まなかった人々は自力で考えて解いて呉れ給え。そうしなくては、解答する真のダイゴ味を味わう機会が本題に限っては、永久に去ってしまうだろうから……。



山田修司作「詰将棋パラダイス」2010年5月


201005yamada

16歩、同と、59角、26と、48龍、51飛、16歩、同と、24銀、同銀、
45龍
まで11手詰




 なお、この狙いの初出は『将棋図巧』第49番辺りかと。

Hudume091

98歩、同馬、同銀、同玉、99角成、同玉、11角、98玉、99金、97玉、
67飛、同と、98銀、86玉、87銀右、同成銀、同銀、同玉、88金、86玉、
87銀、75玉、22香成、25角合、同龍、同成桂、93角、84歩合、同角成、同香、
76歩、66玉、12成香、56玉、55角成、47玉、48歩、同玉、37馬、39玉、
28馬、48玉、37馬、39玉、29金、同玉、28馬
まで47手詰



⑫控えて動き打歩回避
原田清実作1983年10月


 他の作例が思いつきませんが…。


⑬不成で打歩回避

岡本眞一郎作1989年4月

加藤徹作「詰将棋パラダイス」1973年11月


Para71753117

23飛生、26玉、33桂生、35玉、53角生、34玉、35歩、43玉、41桂成、23龍、
42角成
まで11手詰


 
23飛成は、26玉、33桂生、35玉、53角生、44歩合で36歩が打歩詰。
 いかにも作者らしい遊び心に満ちています。



 あと思いつくのは…。

⑭四桂連合回避

若島正作「近代将棋」1979年12月

 玉方に四桂持駒があれば、四桂
連続合駒ができない場所まで遠開きします。

 他にもあると思いますが、いったん終了。

 

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