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2014年12月24日 (水)

不定期講座 遠打 その3

2.遠打の目的 つづき

④成るため

 遠打は第一義的に距離の問題だと考えていますので、成るための打ち場所選択も遠打の仲間にいれてもかまわないと思います。
 成るだけの意味付けなら誰でもつくれるやんけ、ドアホ。と息巻いているアナタ。誰でもつくれないのを紹介しましょう。(笑)

山田修司作「稲妻」「近代将棋」2006年8月

20068

87歩、同玉、79桂、同と、
43角、同馬、88銀打、86玉、87歩、同馬、
同銀、同玉、43角、86玉、76角成、97玉、98歩、同と、同馬、86玉、
76馬、97玉、75馬、87玉、65馬、86玉、64馬、87玉、54馬、86玉、
53馬、87玉、43馬、86玉、87歩、97玉、42馬、同金、98歩、87玉、
88歩、86玉、81飛成、85歩、87歩、同玉、85龍、86飛、同龍、同玉、
87歩、同玉、88飛
まで53手詰

 
54角は、76歩合、同角で香の利きが塞がるので逃れ。54角も同様。

 二回とも角打の直接の意味は成るためです。玉方が角打に反応するのも成られては堪らないからですし。これを取歩駒(42馬)を動かして打歩詰を回避するのが目的とか、二度目の角打は守備駒移動のためとか言っていると細分化しないといけなくなるので、ざっくりやります。



宮原航作「詰将棋パラダイス」2014年6月

2014064


92角、83角合、同角成、同龍、58金、37玉、91角、82角合、同角成、同龍、47金、同玉、92角、同龍、87飛まで15手詰

 
58金は、37玉、91角、64香合、同角、同龍で逆王手となり失敗。
 
83歩合は、同角成、同龍、58金、37玉、38歩、27玉、26飛まで。
 
83桂合は、同角成、同龍、58金、37玉、49桂、27玉、26飛まで。
 
46歩合は、同角成、27玉、37馬、同玉、49桂、27玉、26飛まで。

 三回とも成るための遠打だというと異論が出るかもしれませんが、実際のところ、化成区域に打たないと躱されたり捨合を打たれたりして詰まないのです。
 92角を打つ時点で、玉方は龍の位置が変わっただけ。龍は背後に強くて前には弱いということを学びました。


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⑤守備駒の利きを外す

伊藤看寿作「将棋図巧」第66番1755年

100066

38銀、18玉、19香、同玉、82角、同歩、29飛、18玉、81馬、27歩、
19歩、17玉、27馬、同桂成、同飛、16玉、28桂、15玉、17飛、24玉、
14飛、同玉、25金、13玉、12と、同玉、22歩成、同銀、23金、同銀、
同銀成、同玉、24歩、33玉、43金、22玉、32と、11玉、22銀、12玉、
23歩成、同玉、33金、12玉、11銀成、13玉、12成銀、同玉、22と、13玉、
23金
まで51手詰

 
73角は、46歩合で逃れ。
 
82同飛は、同馬、同歩、29飛、18玉、19飛打まで。

 わざわざ歩頭に打つ82角! 同歩と取らせて背後に潜り込めば飛車には取られないというわけです。
 なお原図は
19歩、17玉、18香、同桂成、同歩、同玉、16飛、17歩合、29銀、27玉、38角以下の余詰があり、攻方16桂が追加配置されています(駒場和男氏補正案)。



小林敏樹作「詰将棋パラダイス」1986年3月

19863

79角、
同龍、46角、同銀、23と、14玉、34龍
まで7手詰

 
68歩合は、同角、同と、25歩、同龍、23銀成まで同手数駒余り。

 角打は簡単に合駒で止められそうですが、歩合でも桂合でも入手すれば簡単に詰みます。これを角から他の駒への持駒変換が狙いとしても良さそうに思えるかもしれませんが、龍の利きに打ち、作意で取られるからには、あくまで守備駒移動が目的としておいた方が分かりやすいです。



上田吉一作「将棋世界」付録第10番2005年3月

10

27香、
同龍、87角、同龍、25飛
まで5手詰

 
27同角成は25飛まで。

 複数の守備駒の利きを絞るための遠打。別項目にしてもいいかなと思いましたが。
 既に一局は紹介しました。

 龍と角の利きの焦点に打って、守備駒の利きを一本化する狙いです。


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⑥動けるスペースを空けておく

小林敏樹作「詰将棋パラダイス」1998年11月

199811

12飛、43玉、46香、54玉、52飛成、同馬、64角成
まで7手詰

 
22飛は、43玉、46香、33玉で逃れ。
 
33玉は22飛成まで。

 打った飛車が動くスペースを空けておくための遠打。実に簡潔な構図で実現しています。



宮浦忍作「詰将棋パラダイス」2005年4月

200504miyaura

59金、78玉、58飛、同と、
 12角、87玉、78角打、76玉、77香、65玉、
85龍、64玉、65龍、同玉、66香、54玉、55香、43玉、44香、33玉、
23角右成、44玉、34馬、55玉、45馬、66玉、56馬、77玉、67馬
まで29手詰

 
23角は、作意をなぞって33玉、34角成、22玉、23馬、21玉、12馬、31玉で逃れ。
 
67歩合は、79香、同玉、88角、78玉、79香以下。
 
23歩合は、同角成、87玉、78角、76玉、77香、65玉、66香、54玉、55香、43玉、44歩、42玉、52香成、同玉、34角、51玉、61香成、42玉、43歩成、31玉、32馬まで27手で2手早い。

 スペースを空けるための角の遠打と言えば山本民雄作が有名ですが、本局は2枚目の角ではなく、自らが動くためのスペース確保。
 23角でなく、12角と打つのは23角成と成り返るためです。四香は角の利きを遮らないように短く打ちます。この趣向(四香追戻詰)は三代宗看の無双第73番や駒場和男作「朝霧」に見られるもので珍しくありませんが、遠打の狙いに良く似合っていると思います。


 つづく



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コメント

遠打シリーズの掲載、ありがとうございます。

上田さんの5手詰、初手87角は65歩合で逃れがさすが。
テーマとしては中合の意味の方に入りますが。

奥鳥さま

コメントありがとうございます。
65歩合は攻方を重複させようという手ですね。作意は玉方の重複狙い。
遠打と中合って、相性がいいですね。

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