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2014年12月12日 (金)

中合の意味

 中合は玉方応手の一つで、玉方の利きのない地点に打つ(または移動する)合駒です。
 持駒を打つ場合と盤上の守備駒で間に合わせる場合があります。今回は、持駒を打つ場合について書いてみます。
 中合は、攻駒に取られても玉方はその攻駒を取り返すことができません。従って、攻駒を増やすだけに見えて随分損な気がしますが、見た目の損以上の効果が生じます。
 ここで言う効果とは、中合を打つと、中合を打たない場合に比べて2手以上手数が延びるということです。
 詰将棋は必ず詰むようにできているので(詰まないのは作者の見落とし)、玉方としては最長手順で詰むように対応しなくてはなりません。その効果を生む応手の一つが中合です。

①近づけて無力化

 中合を取る

近藤孝作「近代将棋」1958年8月

50691643

29銀、19玉、38銀、39角合、同飛、28玉、37銀、39玉、93角、29玉、
38銀、同玉、48角成、29玉、38銀、18玉、29銀打、19玉、28銀左、同歩成、
同銀、18玉、19歩、28玉、29歩、19玉、37馬、18玉、28馬
まで29手詰

 
18玉は、19銀まで。
 
28玉は、39銀、18玉、29銀打、19玉、28銀打、同歩成、同銀左まで。

 空き王手に対して玉が躱すのは、
の変化で見られるように簡単に詰みます。
 9段目には飛角金銀の合駒しかできないことを利用しています。この図の場合は四銀が出尽くしているので、選択肢はさらに少ない。
 角中合の意味は、飛を紐付きにならない地点まで近づけて、あわよくば39から脱出しようというものです。近づけること自体に意味があります。



 中合を取らない

きしはじめ作「詰将棋パラダイス」1987年5月

Para86900993

39香、
38銀合、34飛、46玉、47銀打、同銀生、36飛、同銀生、45馬、同銀、
47銀打
まで11手詰

 
36合は、45馬~36馬で早詰。
 
37合は、46銀、25玉、24飛、36玉、45馬まで。
 
38歩合は、34飛、25玉、24馬、26玉、37銀、27玉、28銀打まで9手。

 中合を打つ意味は、取らせて26~27~38と潜り込む狙い。
 これは取れないので、56銀を抜かれないように攻めますが、対して連続銀不成で応じるのが好防です。



②複数の攻駒の利きを絞る

 中合を取る

酒井克彦作「近代将棋」1963年4月

50692741

28桂、27玉、38金、18玉、29金、同玉、39金、18玉、16桂、
38銀合、
同飛、19玉、28銀、18玉、27銀、19玉、29金、同玉、39飛、同玉、
38馬
まで21手詰

 
27玉は、28飛~25馬まで。
 
38歩合は、28金、19玉、29金、同玉、38馬以下。銀合なら29金を同銀と取れる。

 飛車と馬、金までいて絶体絶命に見えるところへ38銀合とは。多くの解答者が転倒したのも無理はありません。
 同飛と取ることによって馬の利きが遮られて、途端に面倒なことになります。
 たったこれだけの駒でよくできたものと思います。



森敏宏作「近代将棋」1962年12月

50692733

24歩、12玉、45角、
34桂合、同角、23桂合、13歩、11玉、12歩成、同玉、
23角生、11玉、12歩、22玉、32龍、13玉、25桂、同龍、14角成、同龍、
25桂、同龍、23龍
まで23手詰

 
13玉は、23角成まで。
 
11玉は、12歩、22玉、23角成まで。
 
23桂合は、同歩成、同龍、32飛成、11玉、12歩以下。

 二段合ですが、ここでは34桂合が問題の中合。
 
単に23桂合は取ったあと32龍と突っ込まれるので、龍角の焦点に打って龍の利きを遮って角に絞るための中合です。
 主題から外れますが、次の23桂合は同角成と近づけて、11玉で打歩詰に誘致する意味です。この合駒は中空に打ったものではないので、捨合と呼ぶ、というのが私の理解です。



 余談ながら、攻方にもこの手法があります。複数の守備駒の利きを絞るために、その焦点に打つのです。

鮎川まどか作「詰将棋パラダイス」1994年5月

Para91952582

45桂、同銀、39香、
同馬、34香、同銀、48飛
まで7手詰

 
48飛は、99飛成、23金は同銀上で逃れ。
 
25桂は同銀で逃れ。
 
55角は、44歩合、同角、43玉、99角、45歩合で逃れ。
 
37香は同馬で、38香は35歩合でそれぞれ逃れ。
 
39同飛成は、24金まで。
 
35歩合は、34香、同銀、48飛まで同手数駒余り。

 玉方の飛と馬がよく利いていますが、45桂から39香と焦点に放り込むのが絶好で、同飛と取ることができず、39同馬と玉方飛の利きを塞ぐ形となるので、あとは馬の利きだけ止めれば良いということになります。
 初形から48飛と馬を取っては詰まず、39馬の形なら一手で詰むわけですね。



 中合を取らない

高坂研作「詰将棋パラダイス」2003年4月

Para01052714

63角成、66飛合、36馬、17玉、62角成、同飛、27馬、同香成、16飛
まで9手詰

 
35玉は、36飛、44玉、62角成、55玉、66銀まで7手。この変化で初手が限定移動であることが分かります。
 
37玉は、36馬、48玉、84角、57合、同角、同玉、58馬まで同手数駒余り。
 
同飛は、37玉、36馬、48玉で84角とできない。

 タダで取れる飛合が出てきて、それを取ると詰まなくなるという狙いです。利きを絞り込まれたことがあとで分かるので遅延性がありますね。さらに17玉、62角のときこれを取れる合駒は飛車しかありません。
 変化で95角が84、62、51に動くあたりも見事な作品。


 攻駒の利きを絞るための伏線の中合

佐々木浩二作「詰将棋パラダイス」1987年7月

Para86901156

17香、同玉、71角、62歩合、 53角、35歩合、同角成、28玉、82角成、46歩合、
同馬左、39玉、48銀、49玉、58銀、同玉、68馬、49玉、59馬、38玉、
39歩、28玉、37銀、19玉、28銀、同玉、46馬、17玉、18歩、同玉、
19歩、27玉、28歩、16玉、26馬、同玉、37金、16玉、27金
まで39手詰

 35歩合は、同角成、28玉、73角、46歩合、同角成、39玉、48銀、49玉、58銀、同玉、68馬、49玉、59馬、38玉、39歩、28玉、37銀、19玉、28銀、同玉、46馬、17玉、18歩、同玉、19歩、27玉、28歩、16玉、26馬、同玉、37金、16玉、27金まで37手詰

 なんだかややこしそうです。
 まず虫のいい手順を思い描いてみると、17香、同玉、
53角、28玉、73角(A図)、

A図

A_2

39玉、75角成(B図)、

B図

B_2

38玉、37角成、49玉、48馬までとなります。

 さて、どこがおかしかったでしょうか。
 B図になっては紛れるところはありません。
 実はA図で、64歩合と焦点に打つと、同角左成なら39玉、75馬、28玉、64角成、27玉でどうやっても詰みません。同角右成でも27玉で逃れます。
 
53角が良くないらしいと気づき、62角と打ってみると、28玉、82角、73歩合(C図)でやはり同じことです。

C図

C

 71角ならどうでしょうか。28玉には、73角、39玉、93角成(D図)で、B図同様紛れる余地がありません。

D図

D

 そこで、ここに至る前に玉方としては角を重複させる手を打つ必要があります。それが62歩合で、これを同角成と取ると、28玉、82角、73歩合でC図の形になり失敗です。取る手がなければ
53角と打つしかなさそうです。28玉なら82角成で、二枚角の焦点に歩が打てない!(E図)

E図

E1

 64桂合なら同角成、27玉、37金、16玉、28桂、17玉、53馬、28玉、36金、39玉、75馬、38玉、37馬、49玉、48馬までで詰みます。
 これで玉方の狙いが分かりました。62角成と歩合を取らせて、あとで焦点に歩を打とうというわけですから、これを取らずに
53角と打てば良い。しかしこれだけでは済みません。まだ焦点が残っています。それが35歩合から46歩合です。5筋に歩が打てないので44歩合、55歩合という焦点にはできません。
 しかし、二歩を得た上に馬を近づけることができたので、ようやく詰みに至ります。
 
単に35歩合と打つと、同角成で作意に入ってしまって駒も余らないので2手短い手順が正解と即断しそうですね。また、右下6×6の範囲に収まっていて余分な駒が左辺にないあたりも遠打作品として見れば理想的です。
 角を打つ場所によって、焦点の位置が変わる紛れがあること、利きを絞るための玉方の伏線の中合に加えて、作意にも焦点の中合があらわれる素晴らしい作品でした。


 つづく

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