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2014年12月15日 (月)

不定期講座 遠打 その2

 1.遠打の定義 をアップしてから2年が経過していました。不定期すぎる。(笑)
 気が向いたので、続編を書きます。もともと、概括的なことは99年頃には書いていて、森田銀杏さんにその話をしたら「是非めいとに書くように」と督励を受けたのですが、分類の仕方にあれこれ迷ったあげく結局頓挫してしまったものです。
 ブログなら誰かに怒られるわけじゃなし(ただし、ご教示は歓迎。酷いコメントは削除します)、気軽に書けばいいやという気持ちになりました。
 それにしても、1.遠打の定義 は気取ってる割りに中身がないですね。(^^;
 もういちど、定義やり直し。

1.遠打の定義
 遠打は、持駒である飛角香が盤上に移動する着手である。

 以下は、里見義周「捨駒の目的」の"駒の性能"の要約。
 持駒としての飛角香は、避難(敵に取られない)と潜効(いつでも打てる威嚇力)の二つの存在性能を有する。
 盤上に移動した駒は、受難(いつでも取られるおそれ)、優占(その場所に敵駒及び自駒を打てない、自駒はその場所に移動できない等)、遮効(その駒以遠への敵駒及び自駒の利き筋を遮断する。ただし、遠打の場合盤端から打つようなときは「以遠」はない)、有効(駒の利きがある)の四つの存在性能を有する。
 盤上に打った遠駒は移動、捕獲、化成の活動性能を有する。
 ここまでは遠打に限らない一般論です。存在性能はさらに分解すれば「があること」=優占、「であること」=【持駒】避難・潜効、【置駒】受難・遮効・有効で、活動性能は「すること」になると思いますが、どうでもいいか。(笑)

 遠打は、敵玉に直に打たない着手である。
 遠打は、離し打ちの一種であるが、その一点に打つ限定打でなくても、以遠打でも良い。
 遠打という語感から、三間以上の離し打ちの呼称であることが望ましい。個人的には四間以上であってほしいと思います。

2.遠打の目的

①取られないため

 近くに打つと取られるので遠くから打つ。当然といえば当然ですが。

山田修司作「近代将棋」1965年1月

19651

16角、39玉、38金、同金、29金、同玉、38角、同玉、37飛、同玉、
31飛、28玉、27金、同玉、38金、26玉、37金、25玉、36金、24玉、
35金、23玉、34金、22玉、33飛成、21玉、12香成、同玉、23金、21玉、
22金
まで31手詰

 
31飛の前に37飛の近打が入るのが凄いところ。32飛なら、金を押していって34金、32玉と取られます。実際には34金のところ34飛成ですが、玉位置の関係で隅に追いやることができないので詰みません。



山田修司作「近代将棋」1965年7月

19657

88金、同と、99香、同と、68龍、78香、同龍、97玉、96金、同玉、
97歩、85玉、76金、同歩、
86角成、同玉、31角、85玉、87龍、74玉、
76龍、63玉、65龍、52玉、54龍、41玉、43龍、31玉、33香、22玉、
32香成、12玉、13歩、11玉、41龍
まで35手詰

 
87龍は、74玉、76龍、63玉、65龍、53玉と取られてしまいます。

 中途半端な位置にある角を打ち換えて遠打。打ち換えた角も取られてしまうのですが、2段目で取られては詰みません。この図も上の図と同様、遠打をする近辺に駒がないのでクッキリと印象が残ります。



柏川悦夫作「詰将棋パラダイス」1953年5月

19535

24桂、同金、13角成、同玉、25桂、同桂、12飛、同玉、
92飛、11玉、
13香、21玉、12香成、31玉、22成香、41玉、32成香、51玉、42成香、61玉、
52成香、71玉、62成香、81玉、72飛成、91玉、28角、37桂打、同角、同桂成、
83桂
まで31手詰

 飛車をヨコから打つ遠打。やはり、飛車を打つ近辺には何もありません。



伊藤看寿作『将棋図巧』第90番1755年

1755090

32歩成、同金、13桂生、11玉、21桂成、同玉、12銀、同玉、
17香、21玉、
32龍、同香、12金、31玉、22金、41玉、32金、同玉、39香、41玉、
51歩成、同玉、59香、61玉、71馬、同玉、82と、62玉、72と、63玉、
73と、同玉、84銀、64玉、74銀成、同玉、75銀打、65玉、66銀、同玉、
67歩、同と、同金、同玉、68歩、同玉、79金、59玉、69金、49玉、
59金、39玉、49金、29玉、39金、18玉、88龍、27玉、38龍、 17玉、
18香、同金、同龍、同玉、28金打、19玉、29金
まで67手詰

 16歩合は、同香、21玉、32龍、同香、12金、31玉、22金、41玉、51歩成、同玉、54香、53歩合、52角成、同玉、53馬、61玉、62歩以下。
 
16香は、16玉で逃れ。
 
38香は、38玉で逃れ。
 
58香は、58玉で逃れ。

 収束に備えた3香遠打です。いずれも取られますが、8段目で取られると詰まず、9段目で取られれば詰むという仕掛けです。


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②背後に潜られないため

森田正司作「近代将棋」1966年6月

19666

23桂、同香、43桂、21玉、31金、12玉、23と、同玉、34銀、13玉、
23銀成、同玉、
29香、12玉、11角成、同玉、21金、12玉、22金、13玉、
23金、14玉、24金、15玉、25金、16玉、26金、17玉、27金、18玉、

28金、19玉、18金打
まで33手詰

 飛車の場合、利きの関係で背後に回り込むのは難しそうですが、角香なら大いにあり得ます。
 
28香は、28金と引けないので詰みません。
 
25桂合は同香、12玉、11角成、同玉、21金、12玉、23金、21玉、33桂打、同角、同桂生、11玉、22金まで27手。
 
23金は、21玉、33桂生、同角、同金、23金合で逃れ。



田島暁雄作「近代将棋」1971年5月

19715

59角、68歩合、
31角、75歩合、68角、同香成、87金、95玉、98龍、84玉、
93龍、同玉、75角成、同と、83飛、94玉、95歩、同玉、93飛生、94銀、
96歩、84玉、83と、同銀、95飛成
まで25手詰

 
42角は、95玉、68角、77金合(86金合は、同角、同歩、96歩、85玉、74銀、96玉、97金、95玉、86馬、同金、75龍、85合、86金、94玉、85銀、同桂、95金打まで23手)、98龍、96歩合、同龍、同玉、97歩、95玉、77角、同と、96金、84玉、74銀成、同玉、75金、63玉、64金、52玉、53金、41玉で逃れ。
 
95玉は、42角の手順に準じて41玉は42金までなので、62歩、51玉、42馬までで詰む。

 遠打の意味が変化に隠れた作品です。最遠地に打たないとウナギのように捕まらなくなります。


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③駒を取るため

三代宗看『将棋無双』第51番1734年

1734051

75銀、同玉、64銀、86玉、
26飛、同銀、75銀、同玉、B25飛、同馬、
76金、74玉、65金、63玉、54金、52玉、53金、51玉、52金、同玉、
43馬、41玉、33桂、31玉、21馬、42玉、43歩成、51玉、41桂成、同玉、
32馬、51玉、42馬
まで33手詰

 
64同銀は、74飛、同玉、65金、63玉、64金、52玉、43銀以下。
 
56飛は、66歩合で逃れ。
 
66歩合は、75銀、同玉、25飛、74玉、83銀、63玉、54馬、同玉、52飛、44玉、54金、33玉、22飛上成まで。
 
35桂合は、65金、86玉、26飛、46歩合、75銀まで。

 遠飛車2回の妙技です。
 直接の狙いは銀を取ることですが、
同馬となって76金が打てて詰みます。この点では、真の狙いは守備駒移動とも言えそうです。



小林敏樹作「詰将棋パラダイス」1989年9月

19899

37金、同と、
21飛、38玉、29飛成、同玉、18龍
まで7手詰

 
22飛は、35 36玉で逃れ。
 
35 36玉は、31飛成、27玉、37龍まで同手数駒余り。

 遠打の意味を端的に表現した作品。先に質駒をつくっておくのがうまいところです。


 つづく
 続編は、また2年後か…(笑)

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コメント

こんにちは!

A22飛は、35玉で逃れ。
 イ35玉は、31飛成、27玉、37龍まで同手数駒余り。

の記述は

A22飛は、36玉で逃れ。
 イ36玉は、31飛成、27玉、37龍まで同手数駒余り。

ではないでしょうか??

ヒロジロウさま

ご指摘ありがとうございます。
直しました。

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