« 北川邦男好作選8 | トップページ | 打歩詰大賞2 »

2014年8月 7日 (木)

打歩詰大賞

 かつて打歩詰大賞という名の賞がありました。   

 本誌13号から連載をしてきた湯村光造氏の「歩詰手筋総まくり」が完結したのを機会に詰将棋研究会において「打歩詰大賞」を創設することになりました。
 この賞は、毎年発表される打歩詰作品の中から優れた作品を選んで表彰するもので、これにより、構想派作家の創作意欲をかき立てようというのが狙いです。
 大賞委員長には湯村氏が就任し(賞金も提供)、森田銀杏、柳田明、橋本哲、山下雅博の四名が委員として選考に当たり、平成7年度から実施いたします。

 打歩詰大賞の概要
①目的
 独創的な打歩詰手筋の創造と優れた打歩詰作品の創作を促すことを目的とする。
②対象
 当該年度に発表(1~12月号に掲載)された全ての打歩詰作品を対象とする。
 但し、打歩詰作品とは「歩詰手筋総まくり」第一章第二項(本誌13号)の定義による打歩詰手筋を含む詰将棋という。
 なお、発表時に完全であることを条件とするが、極めて優れた作品で、打歩詰と関係のない箇所で不完全の場合に限り、修正作品を対象とすることがある。
③賞の種類と副賞
  大 賞[金二万円]一局
  優秀賞[金一万円]一局
  佳 作[金五千円]二局
 但し、各賞に該当する作品の有無によっては授賞局数を加減することがある。
④選考方法
 詰将棋研究会に打歩詰大賞委員会を設け毎年初に前年度の候補作品の中から選定する。
⑤評価基準
 選考に際しては、打歩詰手筋の独創性・作品の完成度・その他(記録性や面白さなど)を基準として評価する。なお、他の賞との重複は問わない。
⑥発表方法
 詰将棋研究会の特別例会で表彰し、詰棋めいと誌上に授賞作品を発表する。

以上、「詰棋めいと」19号(1995年11月)より

 では順次受賞作を紹介します。

発表「詰棋めいと」1996年5月

第1回大賞
斎藤吉雄氏作「詰将棋パラダイス」1995年11月

325

23桂成、同龍、15銀、同玉、16香、24玉、27香、26桂合、同香、25桂合、
35角、34玉、46桂、同歩、同角、44玉、35角、34玉、53角成、37桂成、
同香、同銀生、46桂、同銀成、43銀生、45玉、55金、同馬、54銀生、34玉、
38飛、37桂合、同飛、同成銀、46桂、同馬、35歩、同馬、43馬
まで39手詰

 同玉は、33香成、同龍、同角成、同玉、43飛以下。
 35角は、14玉、15銀、同玉、16香、25玉、27香、26桂合、同香、34玉、46桂、同歩、同角、44玉、35角、34玉、53角成、39銀成で打歩詰。
 さて、何が悪かったでしょうか。この紛れでは、26香の利きが通っているために35歩と打てません。そこで、25桂合をさせておいて香の利き筋を遮断させるのが作意です。
 13玉は、14香、同龍、同銀、同玉、16香、15桂合、同香、25玉、26飛、15玉、27桂以下。
 25歩合は、35角、34玉、17角、39銀成、35香、44玉、36桂まで。
 
26歩合は、同香、25歩合、35角、34玉、53角、39銀成、35歩、24玉、36桂まで。
 
25桂合は、同香、同玉、26歩、24玉、35角、34玉、46桂、同歩、同角、44玉、35角、34玉、53角、39銀成、35歩、24玉、36桂まで。
 
25桂合は、35角、34玉、17角、37桂成、同香、同銀成、35香、36桂打以下。
 25に合駒をすると、17角と香を抜かれてダメ、いったん26合ですが、歩合はあとで35なり26に打たれてダメ。桂の二段合しかありません。
 25歩合は、同香、同玉、26歩、24玉、35角、34玉、46桂、同歩、同角、44玉、35角、34玉、53角、39銀成、35歩以下。
 37桂成は26香の利きを通して打歩詰に誘う意味です。ここは成限定。
 46同銀成であくまで打歩詰に誘いますが、46成銀を46馬にすれば良いというわけで65馬を連れてきて打歩打開。
 香の利きと、35地点をめぐる攻防が圧巻で、実に密度の濃い作品ですね。

 なお、作者は『四百人一局集』(2011年7月刊)で改良図を発表しておられますので、参考までに掲げておきます。

325

 初手、26金、24玉、15金、同玉、16香以下39手詰。


第1回佳作
首白龍氏作「園裡の虎」「近代将棋」1995年7月

2837

18歩、16玉、17歩、同玉、15飛、同桂、71角生、44歩合、同角成、16玉、
43馬、17玉、53馬、16玉、52馬、17玉、62馬、16玉、61馬、17玉、
71馬、16玉、25角、同歩、17歩、27玉、37金、同玉、28金、46玉、
37金打、57玉、93馬、75角合、同馬、67玉、66馬、同玉、93角、75角合、
67歩、57玉、75角生、66歩合、同角、67玉、68歩、76玉、77歩、66玉、
93角、84歩合、同角成、75角合、同馬、77玉、66馬、同玉、93角、75角合、
同角生、76玉、77歩、同玉、78歩、76玉、65銀、同玉、64と引、76玉、
77歩、同玉、66角、76玉、77歩、66玉、93角、84歩、同角成、75角、
同馬、77玉、66馬、同玉、93角、75角、65と、同銀、75角生、76玉、
77歩、同玉、78歩、76玉、67角
まで95手詰

 ありゃー。エライもんが出てきました。しっぽを踏まないように気をつけないと。
 『般若一族全作品』(現在発売中)を熟読・・・。
 71角成は、歩合をせずに16玉で一歩不足になります。
 62歩合は、同角成、16玉、61馬、17玉、71馬で作意に短絡します。
 
26桂合は、18歩、16玉、26角成、同桂、28桂、同金、17歩、同玉、28金以下。
 
16玉は、25角、同歩、17歩以下、作意と同様の手順になりますが、馬鋸で遠ざかる必要がなく、単に93角不成とできるので早く詰みます。(変化図)

2837

 43歩合は、同馬、34桂合、同馬、同歩、28桂以下、26桂合の手順と同様。
 93馬が93角ならどうなるか。44歩合を省略した場合の手順ですが、これには66歩合なら同角成の一手詰なので、いったん中合する他ありません。75桂合は同角成、67玉、79桂まで。75角合は、
  同角生、66歩合、同角、67玉、68歩、76玉、77歩、66玉、93角、84歩合、
  同角成、75角、同馬、77玉、66馬、同玉、93角、75角、同角生、76玉、
  77歩、同玉、78歩、76玉、65銀、同玉、64と引、76玉、77歩、同玉、
  66角、76玉、77歩、66玉、93角、84歩合、同角成、75角合、同馬、77玉、
  66馬、同玉、93角、75角、65と、同銀、75角生、76玉、77歩、同玉、
  78歩、76玉、67角
  まで73手詰


 ということでしょうか・・・。

 84歩合は、
 同角成、75角合、同馬、67玉、66馬、同玉、93角、75角合、67歩、57玉、
 75角生、66歩合、同角、67玉、68歩、76玉、77歩、66玉、93角、84歩合、
 同角成、75角合、同馬、77玉、66馬、同玉、93角、75角合、同角生、76玉、
 77歩、同玉、78歩、76玉、65銀、同玉、64と引、76玉、77歩、同玉、
 66角、76玉、77歩、66玉、93角、84歩合、同角成、75角合、同馬、77玉、
 66馬、同玉、93角、75角合、65と、同銀、75角生、76玉、77歩、同玉、
 78歩、76玉、67角
 まで83手詰

 つまり、44に打診中合を打てば手間がかかるが、省略すると馬鋸がなくなり、すぐに93に行けるので早く詰むというわけですね。作者はこれを「時間差打診中合」と呼んでいます。大変良く分かるのですが、84歩合を打ったり打たなかったりするのはどうなんでしょうね。
 識者に尋ねたところ、77歩が取れる時のみ局面変化があるので有効合、それ以外は元の局面に戻って歩が一枚増えるだけの無駄合ということだそうです。
 無駄合とは言いきれない気がするのですが・・・。やっぱり無駄合かな?
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・
・・・・・・次行こ、次。


第1回佳作
三角淳氏作「詰将棋パラダイス」1995年8月

2838

51飛、52香合、65桂、43玉、52飛成、同玉、53桂成、同玉、65玉、56と、
54香、43玉、44歩、同玉、34銀成
まで15手詰

 52歩合は、65桂、43玉、34銀成以下。52香合だと、43玉の瞬間に逆王手。
 初手から54飛と打てば、43玉で打歩詰ですが、香合を取って54香なら打歩詰にならないというわけです。飛香不利交換ですが、逆王手を絡めているのが新鮮な感じがします。


第1回佳作
斎藤仁士氏作「近代将棋」1995年9月

2839_

59香、57歩合、64龍、45玉、55龍、36玉、35龍、27玉、29香、同と、
37龍、16玉、17龍、25玉、15龍、36玉、35龍、47玉、37龍、56玉、
57龍、45玉、55龍、34玉、35龍、43玉、44龍、32玉、42龍、同玉、
33銀打、41玉(途中図)、

(途中図)作意32手目の局面

28392

52香成、同玉、62角成、41玉、63馬、52金、同馬、同玉、53歩、同玉、
44金、52玉、53歩、51玉、42銀成、同玉、33銀成、51玉、52歩成、同玉、
43金、51玉、42金

まで55手詰
 

 58香は、47玉で逃れ。
 43玉は、53角成、同銀、同龍、34玉、33龍、25玉、27香以下。
 
55歩合は、64龍以下作意をなぞり、36玉とはできないので34玉以下、44龍、32玉、42龍、同玉、33銀打、43玉、44銀成、52玉、56香、41玉、42歩、32玉、33成銀、21玉、22歩、12玉、23銀成以下。
 
56歩合も、36玉でなく34玉となり、55歩合と同様の詰手順となります。
 
58歩合は、64龍以下作意をなぞり、47玉なら37龍、56玉、67銀で早い。従って27玉のコースになりますが、36玉では35龍以下、やはり67銀があって早いので34玉が最長となるものの、これでは作意に短絡。
 
34玉は、35龍、43玉、44龍、32玉、42龍、同玉、33銀打、43玉、44銀成、32玉、33成銀、41玉(最長手順ではありませんが作意との比較のため)となり、42歩が打てます。(早詰図)

(早詰図)28手目の局面

28392_2

 37龍は、18玉で逃れ。
 27玉は、37龍、16玉、17歩以下。
 
47玉から56玉と歩を取らせて香を素通しにするのが狙いで、不利逃避です。

 残念ながら、これには作例がありました。

変幻自斉(坂東仁市)氏作1978年4月『戯玉集』上第19番

259

14歩、同玉、24飛、15玉、25飛、14玉、24飛、13玉、14歩、12玉、
11桂成、同玉、21飛成、同玉、24飛、23歩合、同飛生、31玉、32歩、同玉、
43飛成、21玉、22歩、11玉、41龍、12玉、13歩成、同玉、25桂、22玉、
33桂成、同玉、43歩成、23玉、32龍、13玉、14歩、同玉、25銀、15玉、
12龍、25玉、23龍、35玉、24龍、45玉、54龍、35玉、44龍、25玉、
24龍、16玉、26龍
まで53手詰

 13玉は、14歩、12玉、11桂成、同玉、21飛成、同玉、24飛に23歩合が二歩でできないため、早詰。

 ただし、斎藤氏作は、取らせる歩が最初から盤上に無く、中合で発生させているところが変幻氏作とは違います。
 ところで、81龍の役割ですが、これは29香に対して28飛合をなくしたものです。


第1回佳作
拙作「詰将棋パラダイス」1995年11月

Para91953989_2

36飛、同銀、46桂打、同と、35飛、同玉、71馬、44飛合、26銀、34玉、
46桂、同飛、35香、43玉、44歩、同飛、61馬、53玉、52馬
まで19手詰

 飛車二枚を捨てて香を残す、二飛先飛香です。
 36香は44香合となって、44歩を取れずに打歩詰になります。
 香を渡して飛を残しておくと攻方の利きが強いので打歩詰になる、というのはよくありますが、本局は香を渡すと玉方の利きが弱い(香は後ろに利きがない)ために打歩詰になるという狙いです。

« 北川邦男好作選8 | トップページ | 打歩詰大賞2 »

打歩詰大賞」カテゴリの記事

コメント

初めまして斎藤(吉)です。「めいと」誌 懐かしい。当時金子さんも骨のある作品を投稿されてましたよね。少しずつブログを読ませていただきます。これからもよろしくお願いします

斎藤さま

初めまして。コメントありがとうございます。
凄い人からコメント来ちゃったな~。
たいしたブログではありませんが、よろしくお願い致します。

斎藤仁士作、T-Baseの近代将棋掲載図には玉方23歩があります。(めいと掲載図にはなし)

EOGさま

ご指摘ありがとうございます。
確かに歩がありますね。「詰棋めいと」しか見ていませんでした。
以後、念を入れて調べますので、ご容赦下さい。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1793064/57017690

この記事へのトラックバック一覧です: 打歩詰大賞:

« 北川邦男好作選8 | トップページ | 打歩詰大賞2 »

サイト内全文検索

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ