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2013年11月11日 (月)

完本『詰将棋 トライアスロン』その25

 TETSUさんの「詰将棋メモ」を見ていたら、"最難解5手詰"というページができていた。
 この中の、最難解5手詰-4 若島さんの作品の初出は「京都民報」1992年6月14日号である。……若島さんが「京都民報」で懸賞出題した作品は全部持ってるかもしれませぬ。

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1991年12月号
えい局の図②

 「図巧」の序文に「年十三作贏局図今在此巻尾」とあるのが何処かということは、ちょっとした“邪馬台国論争”の如し。
 「巻尾」の範囲を91番から99番までとしてみる。100番(611手)を除外したのは、物理的に不可能と思われるからである。
 91番(27手)
 92番(13手)
 93番(45手)
 94番(23手)曲詰
 95番(39手)
 96番(79手)並び歩趣向
 97番(77手)実戦型
 98番(31手)裸玉
 99番(117手)煙詰
 99番と98番は、恐らく100番と近い時期の創作と思われる。看寿は究極の一つの煙詰を作った。すると次はその対極の裸玉ですよ。そしてその次は長手数の究極を求めて100番。順序はわからないけれど、創作とはそのようなつながりがあるものなのである。よって99番と98番の二局も除外。
 「贏局図」とは長編、というわけで94番・92番・91番の三局も除外。すると残るのは97番・96番・95番・93番の四局である。果たしてこの四局の中に看寿が13才のとき作ったという「贏局図」ありやなしや。

 ところで、かつては次のような言が罷り通っていた。
 「看寿は宗印の末子として享保四年に生る。有名な六百十一手の大作は看寿十三才の時の作品にして看寿最初の作品である。看寿十三才は享保十六年にして是より享保末年迄、五年間指将棋の方に現われずして詰将棋の創作のみに精進し図巧百番を完成す。我々は看寿の天才を論ずる前に此の努力を称えねばならない。
 看寿の作品が他の作品に比して特異の存在を示して居るのは指将棋を離れて創作した事による物である。
 尚看寿の六百十一手の大作を作りて幕府より三年間閉門に処せられたと言う伝説があるが史実の上には現れていない」
 看寿を何が何でも神童にしてしまおうというものである。ところが看寿自身はこう書いている。
 「余が家、世この技を業とす。其の勝局の図また世に行わる。余もまた幼童より常に局を設け棋を布くに思いを精くし、力を窮むること年数あり。益其の縦横巻を舒べ、変化窮りなきを覚ゆ。輙ちみずから揆らず前典に倣い、更に百番の図式を作り以て新奇を出し上梓す。
 敢て諸達者に示すに匪ず。抑以て児輩の此の戯を為す者の前駆を為さんと言う。
 宝暦五年(一七五五)看寿」
 「図巧」の跋文で、このとき看寿は37才であった。
 A図は97番。

【A図】
25a

53龍、52金左、同桂成、同金、62金、同銀、81飛成、同銀、43桂、41玉、
31桂成、同玉、32銀、22玉、31角、12玉、21銀不成、同玉、22角成、同玉、
33角成、21玉、32馬、同玉、44桂、22玉、52龍、33玉、34金、同銀、
32龍、44玉、34龍、55玉、54龍、66玉、57龍、76玉、65銀、同玉、
56龍、64玉、65歩、73玉、76龍、82玉、83歩成、同玉、84と、82玉、
93香成、同香、同と、同玉、94香、82玉、83歩、同玉、74龍、82玉、
93香成、同玉、84金、92玉、83金、91玉、92歩、同銀、同金、同玉、
83銀、91玉、94龍、81玉、92龍、71玉、72龍まで77手
 門脇芳雄氏の「詰むや詰まざるや」には本作にふれて、こうあった。
 「一段目に玉金銀桂香を配置した創作型作品。この思いつきは稚気的なもので、看寿の創作初期の作品ではないかと想像される。本書の序文に『年十三にして贏局の図を作り、今、此の巻尾にあり』という有名なくだりがあり、一般に『看寿が13才で百番六一一手詰を作った』と解されているが、作風から判断すると、この作品がその巻尾の局なのではないか、とも考えられる」
 可能性としてはありそうでなさそうでウッフンといった感じである。
 B図は96番。

【B図】
25b

61角成、同玉、72銀成、同玉、74香、同桂、73歩、62玉、63歩、52玉、
53歩、42玉、43歩、32玉、33歩、22玉、21飛成、13玉、14歩、同玉、
15歩、13玉、24金、同桂、11龍、23玉、14銀、33玉、13龍、32玉、
23銀成、41玉、42歩成、同玉、33成銀、51玉、52歩成、同玉、43成銀、61玉、
62歩成、同玉、53成銀、71玉、72歩成、同玉、63成銀、81玉、82歩成、同玉、
73成銀、71玉、11龍、61歩、72歩、81玉、61龍、92玉、93歩、同玉、
91龍、92飛、同龍、同玉、84桂、同金、94香、同金、93歩、同金、
82飛、91玉、92歩、同金、同飛成、同玉、83金、91玉、82金まで79手
 看寿は「並び歩趣向」を二局作った。本作と6番である。すると、なじかはしらねど心わびてといった感じになるよね。どちらが先の作とかね。
 C図は6番。

【C図】
25c

32銀、同玉、43角、同金、同歩成、21玉、32と、同玉、24桂、23玉、
33飛、24玉、23飛成、同玉、24金、32玉、41馬、21玉、31馬、11玉、
22馬、同玉、23歩、32玉、33歩、42玉、43歩、52玉、53歩、62玉、
73歩成、同歩、63歩、71玉、72歩、同玉、84桂、71玉、81龍、同玉、
93桂不成、82玉、92金、71玉、81桂成、61玉、72桂成、同玉、82金、61玉、
71成桂、51玉、62歩成、同玉、72金、51玉、61成桂、41玉、52歩成、同玉、
62金、41玉、51成桂、31玉、42歩成、同玉、52金、31玉、41成桂、21玉、
32歩成、同玉、42金、21玉、31成桂、11玉、22歩成、同玉、32金、11玉、
21成桂まで81手
 本作の折り返しは“二枚金追い”である。いつの頃からか「朝霧趣向」と呼ばれるようになったこの趣向を看寿は好み、何局か作っていた。その集大成が本作だとすれば、本作のほうが96番より先かもしれない。96番の折り返しは“凧金追い”である。単純比較でも“凧金追い”より“二枚金追い”のほうが着想し易いと思われるので、どうやら96番は「贏局図」ではない公算が大きいとみざるを得ないようである。
 D図は95番。

【D図】
25d

62歩、同玉、53金、61玉、64龍、同馬、73桂、同馬、62歩、同馬、
71金、同玉、82角成、61玉、73桂、同馬、51銀成、同馬、71馬、同玉、
63桂、61玉、51桂成、同玉、84角、73香、同角成、同歩、63桂、61玉、
62歩、72玉、71桂成、同玉、61歩成、同玉、63香、51玉、62香成まで39手
 看寿の作風が色濃く出ている作品である。形といい、手順といい。簡素なようで簡素でないのが看寿の作風である。
 本作には彼の体臭を感じる。成熟の匂いである。これが「贏局の図」である筈がない。
 E図は93番。

【E図】
25e

63桂不成、同馬、72銀打、同馬、同銀、同玉、83と、同玉、72角、74玉、
63角成、65玉、54馬、56玉、45馬、47玉、36馬、
38玉、27馬、同玉、
28金、36玉、37金、45玉、46金、54玉、55金、63玉、64金、72玉、
73金、81玉、82金、同金、同角成、同玉、62龍、83玉、63龍、94玉、
93金、85玉、86香、同と、65龍まで45手
 早詰順(奇想天外氏指摘)
54馬の手で64金、56玉、53龍、47玉、44龍、58玉、48龍、69玉、78龍、59玉、37角、49玉、48龍まで
  不詰順(門脇芳雄氏指摘)

38玉の所36同歩で詰みがない。すなわち36同歩、44龍、57玉、48龍、56玉以下
  早詰と不詰のダブルパンチである。早詰順の64金と不詰順の36同歩は、まさにうっかりミスであろう。修正としては門脇芳雄氏の案が妥当と思われる。
  門脇芳雄氏解説
「本局は、斜めに並んだ玉型香頭で、攻方馬が取ってくれ、取ってくれと玉を斜めに追いかける。奇抜な趣向作である。玉方は、この只捨ての馬を同玉とも同香とも取ることができず、38玉まで逃げるが、27馬、同玉とむりやり取らされ、28金以下、こんどは香頭を斜めに追い落とされて詰みになる。
  馬の追撃の正体は、簡単にいうと邪魔駒捌きである。11手目の63角成は妙手であるが、65玉と逃げられてみると、その63馬が邪魔駒になっている。63馬がいなければ62龍で詰むので、54馬と香頭に捨てる。同香なら62龍があるので、56玉と逃げると再び54馬が邪魔駒。そこで45馬と捨て、再び玉は47玉と馬の陰に逃げる。このくり返しが趣向のように香頭で行なわれ、斜めの追撃になるのである。72角打に始まって、只取りの馬が五回まで取られもせず、香頭を傍若無人に玉を追撃する手順は、まことに奇抜で面白い」

 さて、96番が脱落し、95番も脱落した。いよいよ残るのは次の二局である。
 まず97番。
 門脇芳雄氏比定。九州説か、畿内説か。そのどちらかほどの有力な候補ではあるだろう。
 続いて93番。
 北海道説ほどだろうか。手数が45手、これが何といっても弱いよね。長編じゃないといわれたら、それまでだけに。
 ありゃま、紙数がつきてしまった。またしても尻切れトンボですよ。申しわけない。次回こそは結論を出します。ところで、諸君は何処と比定しますか。


-----つづく-----

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