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2013年10月24日 (木)

完本『詰将棋 トライアスロン』その7

1990年6月号
「金鋸」のメカニズム

 「金鋸」の金は繰られる人形のようでもあるし、凧のようでもある。おもしろうて、やがて悲しき──。
 金鋸の1号局は無双72番だろうか、それとも妙案59番だろうか。

 A図は無双72番の10手目47香不成まで。

【A図】
7a

 A図から、45金、36玉、48桂、同香不成、46金、37玉、49桂、同香成、48銀、同玉、75角、37玉、47金、38玉、48金、39玉、38金、29玉、39金…
 45からの金の動きが金鋸だが、64と56の角の利き筋を動くのではなく、64の角が75へ移動し、その75角と56角の利き筋を動くのには意表をつかれた。宗看の面目躍如たり。

 B図は妙案59番の8手目85歩まで。

【B図】
7b

 B図から、72金、63玉、62金、53玉、63金、54玉、53金、44玉、54金、45玉、44金、35玉、45金、36玉、35金、26玉、36金、27玉、26金、17玉、27金、18玉、17金…
 これは単純明快。81と71の角の利き筋、72から17までを一気呵成の金鋸である。久留島喜内、盤上で急流下りを試みたか。

【C図】
7c

67飛、同玉、66金、77玉、76金、87玉、79桂、同歩成、77金、88玉、
87金、89玉、88金、99玉、98金、89玉、99金、78玉、88金、67玉、
77金、56玉、66金、47玉(中間図)

(中間図)
7c_2

65角、36玉、45銀、同玉、56金、36玉、46金、37玉、49桂、同歩成、
47金、38玉、37金、39玉、38金、29玉、28金、39玉、29金、48玉、
38金、57玉、17龍、同と、47金、67玉、76銀、同銀、56角まで53手

 どちらが1号局かはともかく、久留島喜内の得意技は“趣向の展開”である。果たせるかなもう一局金鋸を創作し、そしてそれが恐らく彼のベストワンであろう。妙案73番(C図)がそれだが、門脇芳雄氏もこう絶賛している。「5・6筋を中心に左右に金鋸を引く傑作である。まず左鋸。初手67飛、同玉と捨て、66金、77玉、76金以下金鋸が始まる。手順中、79桂、同歩成と、79を封鎖しておくのが重要な手順。金鋸を99まで引いて、折り返し、中間図で65角と角筋を切り換え、今度は45銀、同玉、56金以下右に金鋸を引く。この切り返し、左右対称の構成が本局のすばらしい点であり、久留島の天才的な手腕の見せどころである。これから右に金鋸を引き、29で折り返して、最後には17龍と切り捨て、67玉の位置で詰みになる。金鋸の趣向の面白さを語り尽くした“絶局”である。」
  左金鋸から右金鋸への切り換えが絶妙である。宗看作無双30番の右馬鋸から左馬鋸への切り換えと双璧であろう。どちらも種も仕掛けもないところで行なわれるのには放心。
 C図は易しい。易しいけれど、強いばかりが男じゃない、いや難解ばかりが詰将棋じゃないよね。
 ところで、金鋸を宗看と久留島喜内は作ったが、看寿は作らなかった。宗看は馬鋸と金鋸を作り、久留島喜内は龍鋸と金鋸と銀鋸を作り、看寿は飛鋸と銀鋸を作った。馬鋸は宗看、金鋸は久留島喜内、飛鋸は看寿の“天下三分の計”か。
 さて金鋸だが、あれはS55年のこと、なぜか急に作りたくなった。C図と勝負したくなったのかもしれぬ。
 C図の左右金鋸は二刀流である。宮本武蔵である。すると私は佐々木小次郎か。物干し竿だよねえ。そうか! 思いついたぞ、長さだよ、回数だよ。金鋸の回数で勝負すればいいのだ。
 金鋸二回、いや三回か。往って、戻って、往って、戻って──。
 とはいうものの、これは容易じゃないよねえ。どう図化すればいいのか。例えばB図の金鋸を何回か往復させるわけである。果たして可能か不可能か。わかんねえや、わかんねえや。
 待てよ、金鋸を往復させようとするから難しいのではないか。往路だけなら、或いは復路だけなら何とかなるのではないか。往路は金鋸で、復路は何かで。その逆でもいい。この方法なら何回か可能なのではないか。
 私の頭の中で槍が縦に並んだ。その香が敵陣で成る。成っては消える。金鋸として動いて消えてゆくのだ、次々に。
 これなら図化することができるのではないかと勇躍創作に耽った頃が懐かしい。
 D図は詰パラ55年11月号に発表。

【D図】
7d

84と、75玉、74と、65玉、64と、同玉、65歩、73玉、83と、74玉、
84と、75玉、74と、65玉、75と、66玉、65と、56玉、55と、同玉、
56歩、64玉、65歩、73玉、83香成、74玉、84成香、75玉、74成香、65玉、
75成香、66玉、65成香、56玉、66成香、57玉、56成香、47玉、46成香、同玉、
47歩、55玉、56歩、64玉、65歩、73玉、83香成、74玉、84成香、75玉、
74成香、65玉、75成香、66玉、65成香、56玉、66成香、57玉、56成香、47玉、
57成香、48玉、47成香、38玉、37成香、同玉、27金、同玉、26金、37玉、
38歩、46玉、47歩、55玉、56歩、64玉、65歩、73玉、83香成、74玉、
84成香、75玉、74成香、65玉、75成香、66玉、65成香、56玉、66成香、57玉、
56成香、47玉、57成香、48玉、47成香、38玉、48成香、39玉、37成香、93桂、
38角成まで101手
 解説がこうあって、放心。「駒場氏としては珍しい作品といえるのではあるまいか。それは一見単純に見えるくり返しで誰にも楽しく解ける。むずかしい理屈は不要という作品。しかしその中にロマンというか詩情というか、何かを持っている。」
 折角の“金鋸五回”のメカについては何も書いてくれなかった。
 奥野昌秀…とにかくと金と成香の動きがすごい。ちょうど馬ノコを裏返したみたいだ。階段を昇り降りしているみたいにも見えるし、さびたノコを取りかえているようにも見える。
 もしかしたら、と金と成香は金ではないと言いたかったのかな。純金鋸でないことだけはたしかである。

-----つづく-----

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