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2013年10月19日 (土)

完本『詰将棋 トライアスロン』その3

1989年12月号
煙詰のルーツ

 煙詰というもの、駒を煙らせるということを初めて考え、作ったのは「無双」の宗看か、「妙案」の久留島喜内か。無双14番は初形27枚、終形4枚である。妙案99番は初形28枚、終形3枚である。これらを看寿は目にし、耳にし、そしてあの図巧99番を作った。初形39枚、終形3枚の煙詰の創始者は看寿ではあるけれど、駒を煙らせるということをはじめて図化したのは宗看もしくは久留島喜内である。
 それはそれとして、詰将棋作家は一度は煙詰を作るべし。81格の盤面が広いか狭いかもわかるし、39枚の駒が多いか少ないかもわかる。39枚の駒にとっては81格の盤面は程よい広さであることもわかる。それから大局観を養うのにももってこいである。煙詰を数作っているうちに、ここからの逆算は可能か不可能かということがわかるようになる。これがほかの場合にも役立つのはいうまでもなかろう。

【A図】
3a014

11銀成、同玉、22銀、12玉、13銀引、同金、22歩成、同玉、13銀、同玉、
23金、14玉、26桂、同と、24金、15玉、25金、同と、16と、
同と、
同龍、24玉、25龍、33玉、43歩成、同龍、23龍、44玉、43龍、55玉、
47桂、同金、45龍、66玉、67飛、同玉、47龍、66玉、56金、同と、
同龍、77玉、78歩、同成香、同金、同玉、67龍、88玉、78龍、97玉、
98歩、96玉、76龍、95玉、97香、84玉、83と、同玉、82桂成、同玉、
81桂成、同金、83歩、同玉、56角、82玉、92角成、同金、72香成、91玉、
81成香、同玉、92香成、同玉、72龍、93玉、73龍、94玉、84金、95玉、
75龍、96玉、85龍まで83手詰
 A図は無双14番である。この図、不詰説が囁かれたことがある。
の所24玉以下詰まないというのである。24玉、25と、33玉、43歩成、同龍、13龍、44玉、43龍、55玉、47桂、同金、45龍、66玉、67飛、同玉、47龍、66玉、56金、同と、同龍、77玉、78歩、68玉、69歩、同玉、この時25とが邪魔で25角と引けず成程不詰。宗看は時どきポカをやらかすので、スワまたかと色めき立ったが、この場合は大丈夫だった。の所67金があった。67金、55玉、56金、同と、同龍、44玉、45龍、53玉、54歩、63玉、64歩、同玉、65歩、73玉、83と、63玉、43龍までである。この手順の発見者は岩田茂氏である。つい本手順と同じように追いたくなる所だけに、67金以下の発見には敬意を表さざるを得ない。
 それにつけてもと思うのは、宗看はなぜ可能性を試さなかったのかということ。終形3枚からスタートする案がなかったとは思われないし、もしかしたら全駒配置まで逆算できたかもしれないのに。1号局としては、この程度でいいとは思うけれど。

【B図】
3b099

87飛、同玉、88香、76玉、84角成、65玉、75飛成、56玉、47銀、同玉、
45龍、58玉、48龍、69玉、79金、同玉、57馬、89玉、67馬、98玉、
99歩、同玉、59龍、88玉、89龍、97玉、96と、同玉、78馬、95玉、
94と、同玉、93桂成、同玉、92と、同玉、56馬、91玉、98龍、82玉、
92龍、73玉、83龍、64玉、74龍、53玉、43と、同玉、34馬、42玉、
32歩成、同玉、44桂、42玉、52桂成、32玉、42成桂、同玉、44龍、31玉、
32歩、同玉、43龍、31玉、21香成、同玉、12馬、同玉、32龍、13玉、
23金、14玉、24金、同玉、15銀、同玉、35龍、16玉、25龍、17玉、
18香、同銀成、同金、同玉、29銀、17玉、28銀、18玉、27龍、29玉、
37銀、39玉、28龍、49玉、48龍まで95手詰

 B図は妙案99番である。某氏が「手順から推定してみるに、引きもどし式の創作法ではないように思われる」といっていたが、いやいや、やはり引きもどし式、いわゆる逆算式ですよ。その逆算だが、久留島喜内はなぜ28枚まででやめてしまったのだろうか。まだまだ駒を置ける。一見して全駒配置も可能だと煙詰作家ならば大局観がゴーサインを発するはずである。察するに、妙案99番は完成図ではなかったのではないか。久留島喜内の作品は大部分が失われ、今日伝わっているのは約百五十局だといわれているだけに。
 “完成図”がもしあったとしたらどんな図か。それはこんな図ではないかとものしてみたのは、かれこれ十五年も前のことであった。
 看寿の煙詰は“盤面斜断”である。妙案99番は“周辺めぐり”である。前者の応用は容易でないが、後者の応用は容易である。このことに気づいたのが昭和時代の煙詰量産の主因ではなかったか。
 それはともかく、B図からの逆算は無理である。B図の玉位置は初形の玉位置である。すでに全駒配置でなければならぬのだ。まずはB図までの逆算の点検、再点検である。微調整だけで駒を何枚置けるか。それによっては大手術を必要としないで済む。ただ収束は作者の命なのでかえられない。だから右辺には手を入れられない。するといじれる空間は上辺と左上隅と左下隅の三ヶ所である。それだけで果たして11枚の駒を置けるかどうか。作風の問題もあるし、それより何より香気を失ってしまうようでは何にもならぬ。なりふり構わずというわけにはいかぬのである。

【C図】
3cmaboroshi33

78金右、同と、86と、同玉、68馬、同と、87歩、同玉、88香、77玉、
76と、同玉、79龍、同と、73飛、65玉、75飛成、56玉、47銀、同玉、
45龍、58玉、48龍、69玉、79金、同玉、57馬、89玉、67馬、98玉、
99歩、同玉、59龍、88玉、89龍、97玉、96と、同玉、78馬、95玉、
94と、同玉、93桂成、同玉、92と、同歩、同銀成、同玉、91桂成、同玉、
92歩、同玉、56馬、91玉、98龍、82玉、92龍、73玉、83龍、64玉、
74龍、53玉、43と入、同桂、同と、同玉、34馬、42玉、41と、同玉、
31香成、51玉、41成香、同玉、32歩成、同玉、44桂、42玉、52桂成、32玉、
42成桂、同玉、44龍、31玉、32歩、同玉、43龍、31玉、21香成、同玉、
12馬、同玉、32龍、13玉、23金、14玉、24金、同玉、15銀、同玉、
35龍、16玉、25龍、17玉、18香、同銀成、同金、同玉、29銀、17玉、
28銀、18玉、27龍、29玉、37銀、39玉、28龍、49玉、48龍まで119手詰

 さてC図、どうにか全駒配置までの逆算に成功した。B図の雰囲気を持ちこたえられたか。微調整だけで済んだのは妙案99番の構想そのものが優れていたからである。久留島喜内も恐らくC図のように逆算したのではないか。散逸してしまった彼の作品の中に、C図とそっくりのものがあったとしても不思議ではない。すると初形39枚、終形3枚の煙詰は看寿以前に誕生していたことになる。
 「本名久留島義太(よしひろ)。和算の大家で日本三大和算家(関孝和、建部賢弘と共に)の一人。生年は不明、没年は宝暦七年(一七五七)である。」門脇芳雄氏はこう紹介している。さらにこうも。「彼は風変りな人物で、いろいろと逸話が伝わっているが、天才で無欲恬淡とした酒仙であった。」

-----つづく-----

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