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2013年10月28日 (月)

完本『詰将棋 トライアスロン』その11

1990年10月号
七歩連合

 「七歩連合」の1号局は山中龍雄氏作(A図)である。
 ①七歩連合であること
 ②還元玉であること
 ③歩の費消が二段並び歩であること
 以上の三点がセールスポイントであろうか。
 “苦肉の配置”がやや気になる以外は満点の出来栄えであろう。

【A図】
11a

16飛、26歩合、同飛、36歩合、同飛、46歩合、同飛、56歩合、同飛、66歩合、
同飛、76歩合、同飛、86歩合、85角、同玉、86飛、同玉、87歩、75玉、
76歩、同玉、77歩、65玉、66歩、同玉、67歩、55玉、56歩、同玉、
57歩、45玉、46歩、同玉、47歩、35玉、36歩、同玉、37歩、25玉、
26歩、同玉、27歩、25玉、16金、35玉、26金、45玉、36金、55玉、
46金、65玉、56金、75玉、66金、85玉、76金、96玉、86金まで59手詰

★森敏宏氏解説
 一個の駒の王手に対しての連続合駒(移動合駒は含まず)の記録は、近年までは確か、三回が最高、その後、山田修司氏の例の桂四連続合、さらに私の歩五回連続合などがあり、ま、これが一応最高記録になっていた。
 一応と言ったのは、たぶん近い将来この記録は破られることを必定と予想していたからだが、それが意外に早く現れた。しかも七回連続という最高記録を鬼才山中龍雄氏がひっさげて。(中略)
 正直のところ初手1六飛からの王手をみて、私はかすかな興奮を覚えた。何と言う巧妙なからくりを発見したものだと。
 本局は作家にとってひとつの夢を実現したもので、作品の出来具合云々より、この夢を予想外の簡潔な組み立てで表現したことに驚きの念を禁じ得ない。詰将棋の未開発地域が少しずつでも開発されていくことに、我々詰棋人はひそかな喜びを覚えるのである。
★作者の言葉
 「角」は打ち場所が1一と1九の二地点で、どちらも角から馬になる可能性が強く、断念せざるを得なかった。
 「香」は1九-5九(6九~9九は4九~1九と左右対称)の五地点で、実現性は角より“かなり”高いが相当な時間がかかりそうに感じた。
 「飛」は切札的な存在の駒で、縦(筋)の1一~5一、1九~5九、横(筋)の1一~1三と縦からの飛は龍になる可能性が強く、また横の1九飛は合駒が飛角金銀に限定されるので断念。残りの五箇所について熟考して中段(1四~1六)に決定。
 飛横の直接合を作意順に、そして一間以上離した合駒が変化順になる様な図の考案に全力を傾注したところ予想外の短時間で案出。だが、構想を練りはじめてから約十時間で仕上げた作品には致命的な欠陥があり、更に本図の様な“還元玉”でなく、詰上り玉が一筋になるので、玉の往復(還元玉)を目標に推敲を重ねて苦心惨憺したにも拘らず、飛を持駒にする作図に無理があり、堂々巡りの連続で一向に進歩発展しなかった。
 そこで心機一転、飛を持駒にするのを諦め9四飛配置に気付いてからは快調に進行、漸く本図と同一手順の作品を完成した。
 情報入手から本図を得るまでの作図には百時間以上(自作の中では“抜群”の消費時間である)を費しており、その点でも印象に残る作品である。

 「七歩連合」の1号局は「飛」の王手に対するものであった。その後、「龍」に対するもの(添川公司氏作)、「角」に対するもの(OT松田氏作)、「香打」に対するもの(七条兼三氏作と森田拓也氏作)などが現われ、私も試みたのだが……。
 B図の99角打に対し、「七歩連合」というわけにはいかないものか。

【B図】
11b

 「88歩合、同角、77歩合、同角、66歩合同角、55歩合、同角、44歩合、同角、33歩合、同角成、22歩合」という手順の美しさ、これはもうファンタジーである。
 魅せられてしまった。図化するしかない。だが、人は不可能だという。そうかもしれない。しかし、挑戦しないわけにはいかない。不可能といわれていたものに次々に挑戦し、それなりの成果をあげてきたのだから。
 B図を熟視して思えらく、これだけはクリアーしなければ一歩も前へ進めないという点がいくつかある。
①88から22までの直接歩合(作意)は長く、77から22までの離し歩合(変化)は短い、という手順でなければならない。
②離し歩合の場合は、同角意外の手順で詰めなければならない。その手順は、離し歩合の場合は詰み、直接歩合と99角打以外の場合は詰まない、というものでなければならない。
③33歩合のとき同角成と、角が強力な馬になってしまうが……。
 以上の三点か。絶望的なのは、この三点が同じ場所でのものであること。①を立てれば②が立たず、②を立てれば③が立たず、ということになるのではないか。
 いや待てしばし、“三点セット”というわけにはいかないか。①も②も③も同時に立てることはできないものか。
 とにかく一度は熟考すべし。頭がふらふらになるまで考えるべし。浅瀬でポチャポチャやっているだけで名案が浮かぶはずがないではないか。
 あれはS59年1月のことであった。朝から雪が降っていて、創作日和。浅きから深きへ徐々に歩み入る。道なき道をゆきき。頼りになるのは大局観だけである。
 雪の冷気がともすれば熱くなる私の頭を冷してくれる。それがよかったのかもしれない。遂に“三点セット”を得たのであった。
 99角に対し、①77歩合なら12玉、21玉22歩、32玉、24桂以下、②22歩合ならば12歩、21玉、33桂、32玉、24桂以下、③33歩合ならば12歩、21玉、22歩、32玉、24桂以下、というものである。
 そのときの作は不完全。それを今年の夏休みに修正したのがC図である。修正していてつくづく思ったのは、歩は飛・角の代役ができるが、飛・角は歩の代役ができないということであった。
 「角打に対する七歩連合」というのは夢の中の夢である。出来がどうのこうのというのはどうでもいいことである。完成度とやらは二の次三の次なのである。

 題して「凌雲閣」。私の代表作中の代表作である。コンピューター顔負けのメカニズムを堪能して戴きたい。

【C図】
11c

作意
31と、同銀、11歩成、同玉、99角(途中1図)
 主要紛れ
①43角は、32銀、同角成、同玉、24桂、43玉、34銀、54玉、45銀引、65玉、56銀、76玉、67銀打、87玉、78銀打、96玉、87金、95玉、94と、同玉、86桂、83玉、94金、92玉、93歩、同金、同金、同玉…不詰
②22歩は、32玉、24桂、43玉、34角(34銀は、54玉、45銀引、65玉、56銀、76玉、67角、77玉、69桂、68玉、78金、59玉、37角、同飛…不詰)、54玉、45銀、65玉、56銀、66玉、67銀、57玉、58金、46玉、37角、同玉、36飛、28玉…不詰

【途中1図】
111

 途中1図より
88歩合、同角、77歩合、同角、66歩合、同角、55歩合、同角、44歩合、同角、33歩合、同角成、22歩合(途中2図)、
 主要変化
77歩合なら、12歩、21玉、22歩、32玉、24桂、43玉、34銀、54玉、45銀引、65玉、56銀、76玉(75玉なら86銀、①84玉、85金、83玉、94金、同玉、85と、83玉、94金、92玉、84桂まで、②76玉、68桂、87玉、88金、96玉、97金まで)、67銀打以下
55歩合なら、12歩、21玉、22歩、32玉、24桂、43玉(33玉なら55角、44歩、34金、42玉、52香成、同金、53歩成、同金、同と、同玉、44角、64玉、76桂以下)、34銀、54玉(44玉なら45歩、54玉、46桂以下)、45銀上、同銀、同銀以下
33歩合なら、12歩、21玉、22歩、同銀(32玉なら24桂以下)、同桂成、同玉、33角成、同玉、24銀、同飛(43玉なら44銀、同玉、45銀、同銀、36桂、同飛、45歩以下)、34銀、同飛、同歩、43玉、45飛、44角、同飛、同玉、22角以下
22歩合なら、12歩、21玉、33桂、32玉、24桂、43玉、34銀以下
 主要紛れ
12歩は、21玉、22歩、32玉、24桂、43玉、34銀、54玉、45銀引、65玉、56銀、76玉、67銀打、87玉-不詰
12歩、21玉、22歩、32玉、24桂、43玉、34銀、54玉、45銀引、65玉、56銀、76玉、87銀、同玉、88金、96玉-不詰
12歩、21玉、22歩、32玉、24桂、43玉、33角成、同玉、34金(34銀は24玉で不詰)、42玉、52香成、同金、53歩成、同金、同と、同玉、56香、64玉-不詰

【途中2図】
112

 途中2図より
12歩、21玉、43馬、32銀、22桂成、同玉、32馬、同玉、24桂、43玉、
34銀、54玉、45銀引、65玉、56銀、76玉、67銀打、87玉、78銀打、96玉、
87金、95玉、94と、同玉、86桂、83玉、94金、92玉、93歩、同金、
同金、同玉、94歩、82玉、83歩、同玉、84歩、同玉、85歩、同玉、
76銀、95玉、96金打、84玉、85金、83玉、84歩、82玉、73と、同玉、
74金、62玉、63歩成、71玉、72歩、同金、同と、同玉、73歩、62玉、
63金打、61玉、72金まで81手

※ 注記
添川公司氏作、龍に対する七歩連合は「近代将棋」1986年6月号
OT松田氏作、角に対する七歩連合は「近代将棋」1983年12月号
七条兼三氏作、香に対する七歩連合は「近代将棋」1977年4月号
森田拓也氏作、香に対する七歩連合は「詰将棋パラダイス」1971年9月号

-----つづく-----

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