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2013年10月17日 (木)

完本『詰将棋 トライアスロン』その1

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例によって、篤志家にいただいたのである。
「近代将棋」1989年10月号から1994年12月号まで61回にわたって掲載されたのである。
泣く子も黙る、天才・駒場和男なのである。
ええい、一同、ご老公の御前である。頭が高いッ!

(断っておくが、私がもう一度見たいテレビ番組ベストスリーは1位「宇宙少年ソラン」、2位「レインボー戦隊ロビン」、3位「キンカン本舗提供 キンカン素人民謡名人戦」であって、主役・東野英治郎、敵役・山形勲が柳沢吉保役でちょこっと出演していた「水戸黄門」は圏外である。なぜ、ちょこっとしか出ないかというと、黄門様は諸国を漫遊しているので江戸にいる柳沢吉保と接触する機会がないからである)

これから、その全文を掲載するのである。
ご本人に怒られたときは、速やかに全部削除するのである。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

-----はじまり、はじまり-----

1989年10月号
詰将棋界の鉄人、駒場和男が創作の可能性について語る究極のエッセー

  六種不成は11手、七種合は15手で創作可能なはず。
 むかし「詰将棋パラダイス」の新年号の表紙を頼まれ、作ったのがA図。
 表紙作は15手まで。で、とりあえず15手詰の六種不成を作ってみた。ホップ(15手)、ステップ(13手)、ジャンプ(11手)のホップのつもり。

【A図】
Photo_2

52銀生、31玉、23桂生、同飛生、33香生、同角生、41銀成、同玉、73歩生、85歩、
32銀、51玉、52歩、62玉、74桂まで15手詰
 誰かステップし、ジャンプしてみないか。形とか手順とかは気にするな。一番大事なのは可能性を試すことである。これが進歩。それから形なり手順なりをよくしていけばいいのであって、これが発展である。

 ところで、盤面五枚、持駒五枚以内の作品を簡素図式というそうだが、盤面十枚、持駒なしの作品は簡素図式とはいわないのかな、条件は同じはずだし、いや、むしろ後者の方がムズかもしれぬ。内容も後者の方が濃いはずで、たとえば捨駒にしても、持駒があるときの捨駒と持駒がないときの捨駒とでは妙手感がちがう。簡素図式大いに結構だが、使用駒何枚以内とすべきであろう。

 あるとき妙なことを考えた。打歩詰を避ける手筋の一つに“不成”がある。その逆を考えたのである。“成”で打歩詰を避けることはできないものかと。いうなれば“逆手筋”だが、果たして創作可能か不可能か。
 飛成・角成・歩成の場合は不可能かもしれぬ。とりあえず香成で試みたのがB図。

【B図】
Photo_3

34桂、同歩、44香、43桂、同香成、31玉、32歩、41玉、33桂、同桂、
同成香、47角、31歩成、同玉、22成香、41玉、33桂、42玉、44香、43歩、
32とまで21手詰
 香不成では打歩不可避。香成で打歩詰を避け、その32歩打に万斛の味ありやなしや。
 銀成・桂成の場合も可能だし、香成の場合ももっといろいろ考えられる。飛角歩の場合は本当に不可能なのかな。試していただきたいものである。

 いま、蝉の鳴き声がハタと止んだ。八千代台の朝は早く、その分夕景にもやや変化がみられるのかもしれぬ。市川から移ってまだひと月だが、閑寂、そして何よりも人の心があたたかい。
 フト宗看のことを思う。宗看は23才のときに名人位に就き、29才のときに図式百番を献上した。してみると、五年間で百局の目標を立てたのに違いない。全格玉配置も予定の一つ。恐らく一室に閉じ籠もり、家人を遠ざけて盤上没我、それこそ詰将棋の鬼と化していた五年間ではなかったか。

【C図】
Photo_4

54金、同銀、43金、同銀、同桂成、同玉、32龍、同玉、92飛、
31玉、
13馬、41玉、14馬、51玉、15馬、61玉、16馬、71玉、17馬、81玉、
18馬、同馬、82銀、72玉、73銀引成、71玉、82飛成、61玉、62龍まで29手詰
 C図は宗看作無双26番である。54金の所43桂成、同玉、54金、同玉、64金以下の余詰と、
31玉の所23玉以下の不詰があった。これを宗看はどう直したか。昭和時代の補正マニアは玉方「75銀」を置いたり詰方「66歩」を置いたりした。宗看は玉方「12桂」を置いただけである。目の付け所が違うとしかいいようがない。「玉方12桂は流石に名人の考案とてまことに一石二鳥の感あり」補正マニアシャッポを脱ぐの図。
  その無双26番と勝負したのは、私が23才のときであった。
  無双26番は趣向作である。13から18まで馬を引くのがそれ。19馬の位置変更をもくろむもので、その雄大さに私は魅せられた。加うるに絶妙な12桂配置。これはもう勝負するっきゃない。
  勝負するとしたら、どう勝負するのか。
  無双26番の“馬引”の狙いは19馬の位置変更である。19馬の存在大であるわけである。その19馬を取り除く。それでも13から18まで馬を引かねばならないようにはできないものか。問題は、その意味づけである。どう意味づけるか。
 まず馬を遠ざけることによるメリットを考えてみた。考えられるのは二つ。質駒奪取と打歩詰回避である。質駒奪取というのは私はあまり好きじゃない。よって打歩詰回避の方に決定。ではどうやって打歩詰回避に結びつけるか。考えるしかない。考えに考える。するとかならず何かがひらめく。そのひらめきは形を伴わない場合が多い。それからほんのちっちゃなもので、そしていつどこでひらめくかもわからない。それをキャッチできるかできないかが勝負である。
 彼女と会っているときにひらめくと悲劇である。上の空になり、しどろもどろになる。そんな男に誰が惚れるものか。男にすれば、そのとき一刻も早く盤の前に座りたいのである。
 D図を得たのは数日後であった。“馬引”の意味づけは打歩詰回避である。これにより無双26番と勝負できたかなと思う。
 詰将棋作家は歴史とも勝負する。

【D図】
Photo_5

21銀生、23玉、33歩成、同玉、43と、同玉、42と、同玉、62飛成、33玉、
22龍、同玉、12飛、21玉、31角成、同玉、13角成、41玉、14馬、51玉、
15馬、61玉、16馬、71玉、17馬、81玉、18馬、27歩、同馬、91玉、
92飛、同玉、93歩、同玉、83金、同銀、同歩成、94玉、93と、同玉、
94歩、同玉、72馬、95玉、96銀まで45手詰

※ 注記
原文では【A図】の次行に
(解答末尾)
とあるが、通読の利便性を考え手順は、それぞれの図面の下に置いた。また、原文ではその末尾の手順は数字+漢数字だが、すべて半角数字にした。
A図は「詰将棋パラダイス」1980/01
B図は「近代将棋」1987/10
D図は「詰将棋パラダイス」1957/08=『ゆめまぼろし百番』第4番「さらば友よ」

-----つづく-----

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