2016年11月28日 (月)

類作という言葉

 私の辞書に「類作」という言葉はありません。
 「広辞苑」第6版、「大言海」にも「大辞林」にもない。せいぜい「類似」がある程度です。
 詰将棋では「類作」はごく普通の言葉ですが、否定的な意味を持つ詰将棋用語なのだろうと思っていました。
 ところがある所にはあるもので、『日本国語大辞典』第2版(小学館・
第13巻第5刷2006年4月)に「類作」がありました。

【類作】表現や発想が似た作品。同じような作。

 出典として芭蕉の書簡が示してあったので、該当する書簡を探してみました。

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東藤・桐葉宛【貞享三年三月十四日付】

一、御俳諧よくぞおもひ切て長々敷物を点被仰越候(てんおおせこされそうろう)。乍去余(さりながらあまりに)感心、見るも面白く、判詞、不覚(おぼえず)手の舞足の踏事をしらず候。ケ程(かほど)上達存(ぞんじ)もよらず、凡(およそ)天下の俳諧にて御坐候間、随分御敬(つつしみ)候て御はげみ可被成候(なさるべくそうろう)。
(中略)
句評之事、点は相違有物(あるもの)にて御座候。其段常のことながら、其元(そこもと)に而(て)俤(おもかげ)ある事、爰元(ここもと)にては新敷(あたらしく)、其地にて珍しき句、此地に而は
類作有様(あるよう)の事も御坐候物に御座候へば、句評は心にたがふ事も可有御座候(ござあるべくそうろう)。
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 東藤、桐葉の二人で巻いた歌仙について、芭蕉に、どこが良くどこが悪いかの教え〈点を付ける〉を請うたことに対する返事です。
 歌仙とは、最初は五七五、次に七七、また五七五…と続けて36句になる形式。三十六歌仙にちなんで、歌仙。江戸時代の俳諧はこの形式が多く、現在の俳句は最初の五七五(発句)が独立したものです。俳諧は宴の文芸であり、俳句は孤の文芸。芭蕉は俳諧の宗匠であって、こんにちのような俳句作者ではありませんでした。「発句は門人の中、予におとらぬ句する人多し。俳諧においては老翁が骨髄、と申されける事、毎度也」と弟子の森川許六が書き留めています。
 俳諧には例外的に独吟もありますが、大抵は数人で行います。
蕉風俳諧の傑作と呼ばれる「猿蓑」は芭蕉の監修の下、野沢凡兆、向井去来がまとめたものです。芭蕉は全体の流れを見極めつつ、個々に的確な指示を出す大指揮者でした。
 句評之事に続く文は、評価は間違いのあるものだ、愛知県熱田(東藤、桐葉は熱田の俳人)のあたりでは先行作が知られていても江戸では知られていないために新しいとして評価されることもありその逆もある、というようなことを述べているのでしょう。
 江戸時代の日本は広かったのですね。
 そこで有名な一句「寒波急日本は細くなりしまま」(阿波野青畝)。意味が違いますが。

 さて、ここに「類作」がありました。辞典に引いてあるということはこれが初出なのかも知れません。
 類作? そんな言葉は聞いたことがないな、どうせ詰将棋だけでしか通用しない用語でしょ、と言われたときは、330年前に芭蕉が俳句に関して使ってるよ、と答えておきましょう。
 貞享(1684~1688)といえば、五代宗桂の『将棋手鑑』(1669年)、二代宗印の『将棋勇略』(1700年)の間ということになります。
 この時代の詰将棋作家に類作についての意識はあったのでしょうか…。

2016年10月31日 (月)

玉方連続歩不成

 攻方連続歩不成が可能なら、玉方も可能なはずと考えるのは自然な流れです。

岡田敏作(「将棋文化」1957年12月号)

0014

47馬上、同歩生、48金、同歩生、29桂、同龍、38歩、同龍、26龍、同と、
46馬
まで11手詰

47同歩成は、48金、同と、38歩、同と、46馬、同と、27龍まで9手。

 これが第一号局でしょうか。
 48とでなく、48歩の形でないと38歩と打たれて打歩詰を回避されます。不成のままでは歩が打てないので、取歩駒(19龍)を呼んでくる。これは代表的なパターンです。
 「将棋文化」は1957年9月から1958年12月まで16号発行されたようです。発行人は木村義雄十四世名人。



平井孝雄作(「近代将棋」1959年10月号)

50691925

79飛打、98玉、87銀、同歩生、88金、同歩生、89角、99玉、23角成、98玉、
89馬、同歩成、99歩、同玉、88銀、98玉、99歩、88玉、78飛上、99玉、
97飛
まで21手詰

 初手は限定打。
 成らせ物かと思ったら、そうではない。89に歩を進めるのは飛車の利きを遮断する目的なのです。つまり取歩駒化するのではなく、89歩成の段階では打歩詰に関係のない駒になっています。
 89角を取らずにいったん躱したり、と金で99歩を取らないなど、これは実にうまく出来ていますね。
 当然、塚田賞候補だったのではと思いましたが、有力作5局の中に本局はありませんでした。



並木睦昌作(「将棋世界」1970年8月号)

46803405

67金寄、同歩生、68角、同歩生、69桂、同歩成、68角、同と、58歩、同と、
47飛
まで11手詰

 あくまで歩を成らせて取歩駒にするパターン。



二上達也作(『将棋魔法陣』第18番 1953年2月・詰将棋クラブ)

018

67銀、同香生、68桂、同香生、86飛、77玉、69桂、同香成、87飛、76玉、
68桂、同成香、86飛、77玉、78歩、同成香、87飛、76玉、77歩、同成香、
86飛
まで21手詰

 玉方香の作例です。



田原宏作(「詰将棋パラダイス」1974年3月号)

Para71753497

44と、46玉、76飛成、56歩合、37銀、47玉、67龍、57歩生、58龍、同歩生、
97龍、57桂合、同龍、同香生、39桂、同馬、48歩、同馬、36銀直、46玉、
45と
まで21手詰

 本局は取歩駒(17馬)を呼んでいますが、盤面に歩を発生させているところが新しいのです。



谷口均作(「近代将棋」1975年8月号)

70851449

57金、同歩生、58銀打、同歩生、37金、同歩生、38銀、同歩生、46飛、同香、
48歩、36玉、18馬、37玉、27馬
まで15手詰

 ゼッタイ誰かがやってるなと思ったら、谷口さんでしたか。15手とは凄い。
 左と右で玉方連続歩不成。



山田康平作(「詰将棋パラダイス」1991年11月号)

Para91950702

67と、同歩生、68と、同歩生、46角、同金、67金
まで7手詰

 どこにも歩を打つ手が出てきませんが、変化で玉方に出てくるのです。

失敗図

16oct30a

 68となら48歩と打てないが、68歩不成、47香なら48歩と打てるというわけです。

2016年10月30日 (日)

攻方連続歩不成

三代宗看(1734年『将棋無双』第49番)

090049

85金、同銀、63歩生、74玉、62歩生、41龍、64角成、83玉、84歩、72玉、
54馬、71玉、61歩成、同龍、72歩、同飛、同馬、同龍、82銀成、同玉、
92飛、71玉、72飛成、同玉、52飛、71玉、62飛成
まで27手詰

 攻方の連続歩不成第一号局です。


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 数年前、詰将棋界で「一枚の歩を連続した二手で不成、不成と捌く作品は、理論的に可能かどうか」というテーマが議論されたことがあるが、後で判ってみれば、二百年も前にこの作品が創作されていたのである。

門脇芳雄(『詰むや詰まざるや』平凡社東洋文庫・1975年12月)
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長谷繁蔵作(「詰将棋パラダイス」1963年1月号)

Para61651567

24香、同玉、42角成、33歩、同歩生、54香、32歩生、34玉、43銀、23玉、
24歩、22玉、44角、同銀、23歩成、同玉、25飛、同銀、24香
まで19手詰


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 昭和37年当時、詰パラ誌上で歩不成連続二回が創作可能かどうかという論議がありました。本局はそれに触発されて創られたそうです。その後、無双49番が歩不成連続二回の作品であることを知って落胆された由ですが、本局はその無双49番に続く二号局ですから、存在価値は充分あります。

湯村光造(「詰棋めいと」第16号・1994年4月)
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酒井克彦作(「黒潮」第20号・1962年8月)

19620812

23歩生、
32玉、22歩生、同玉、24飛、31玉、21飛成、同玉、22歩、31玉、
21飛、42玉、41馬、同金、43金、51玉、41飛成、同玉、42金打
まで19手詰

11玉は、12歩、同玉、13馬、11玉、12馬、同玉、14飛、13合、24桂、11玉、13飛まで13手。
31玉は、13馬、32玉、22歩成、同飛、同馬、同玉、14桂、11玉、12歩、同玉、22飛、13玉、23飛成まで15手。

42玉は、43歩、31玉、21歩成、同玉、24飛、22桂合、同飛成、同玉、23桂成、21玉、22飛、31玉、32成桂、同金、同飛成まで同手数駒余り。
31玉は、21歩成、同玉、24飛打、22歩合、同飛成、同玉、24飛、11玉(31玉は、13馬、42玉、43歩)、12歩、同玉、23馬以下17手。


 「黒潮」は早川茂男が発行していたミニコミ誌。これが終刊号になりました。
 酒井作は初入選。「新人コンテスト」に出題されています。
 こちらが第二号局のようです。

2016年10月27日 (木)

『酒井桂史作品集』の雑誌未発表作

 今回は『酒井桂史作品集』の雑誌未発表作を紹介します。『將棋王玉編』と重複するものは省きます。

酒井桂史作品集第54番

054

32馬、25玉、14馬、16玉、28桂、27玉、36馬、28玉、37馬、39玉、
48銀、49玉、39金、58玉、59銀、同龍、同馬、同玉、49飛、58玉、
48金
まで21手詰

 ただ玉を追っているだけの手順のようで、今一つです。
 『酒井桂史作品集』創作メモ16と同一図です。

 『酒井桂史作品集』を編集した清水孝晏は『將棋王玉編』を知っていただけではありません。
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 酒井桂史に魅(ママ)られた私は、その作品集を多くの仲間に知らせたいと思い、酒井氏ともっとも親しかった「ヘタの横槍」の前田三桂翁に手紙を出し、再三にわたって校閲を願い上下各五十局二冊の本※1にまとめた。
 しかし、「酒井桂史作品集」上下だけがすべてではない。各誌に発表されてはいるがまだ作品集にも未集録のものもあれば、前田三桂翁からいただいた酒井氏の「創作メモ」がある。これは名刺二枚分ぐらいの帳面に線を引いて、エンピツ書きの本当の創作メモで、詰将棋(不完全もあるようだ)四十一局※2と必至図二つが記されてある。
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(清水孝晏「知られざる詰将棋」近代将棋1970年3月号)

※1 1951年・1955年、詰将棋クラブ刊
※2 1976年の『酒井桂史作品集』には42局あります。

 ここに掲げる5局は、前田三桂からもらったという「創作メモ」にはなく、別の形でもらったものがあったのかも知れません。



酒井桂史作品集第64番

064

31歩成、同玉、32銀右成、同角、21歩成、同角、同と、同玉、32角、11玉、
22銀成、同玉、23馬、31玉、43桂、42玉、41角成、同龍、同馬、同玉、
51飛成、32玉、31龍、43玉、42飛、54玉、34龍、65玉、45飛成
まで29手詰

41玉で不詰。

 あぶり出し曲詰「シ」。
 駒交換が多いですね。



酒井桂史作品集第75番

075

37龍、同金、17角、28桂成、49飛、38玉、39香、同成桂、同飛、48玉、
57銀、47玉、37飛、同玉、48金、36玉、26金、45玉、46銀、同玉、
28角、45玉、37桂、46玉、57金、55玉、45桂、46桂合、同角、45玉、
56金、54玉、55金、63玉、64金、72玉、63金、83玉、73角成、94玉、
85桂
まで41手詰

46香合は、作意のほかに73金や73桂成、82ととする手順も成立する。

 48に打った金が63までせり上がっていく動きが狙いでしょうか。



酒井桂史作品集第84番

1563

87飛、76玉、78飛、66玉、67飛、56玉、58飛、46玉、47飛、36玉、
38飛、26玉、28飛、16玉、18飛、26玉、27飛、36玉、38飛、46玉、
47飛、56玉、58飛、66玉、67飛、76玉、78飛、86玉、87飛、96玉、
97歩、95玉、75飛、同と、84銀、94玉、83銀右生、同馬、同銀生、93玉、
94銀成、同玉、61角、95玉、96歩、同玉、52角成、95玉、96香
まで49手詰

45銀、66玉、67飛、76玉、78飛以下。

 飛車を二段に打って、横に追う一往復の趣向です。



酒井桂史作品集第87番

087

47馬、同玉、49龍、56玉、46龍、65玉、66龍、54玉、64龍、45玉、
55龍、36玉、46龍、27玉、37龍、18玉、17龍、29玉、19龍、38玉、
48金、同玉、39龍、47玉、37龍、56玉、46龍、65玉、66龍、54玉、
55龍、63玉、64龍、52玉、62龍、41玉、51と、31玉、21歩成、同玉、
22歩、11玉、12歩、同玉、24桂、同香、21歩成、同玉、23香、31玉、
22龍
まで51手詰

 一往復半の龍追い。単に55龍から追っていくと、攻方18歩が残っているので、
12歩が打てません。
 この図も28角が残ってしまいました。

 『酒井桂史作品集』創作メモ9と同一図です。



 以上5局は、雑誌にも『將棋王玉編』にもない図ですが、前田三桂以外からの提供とは考えにくいと思います。

2016年10月25日 (火)

『將棋王玉編』の雑誌未発表作 その4

將棋王玉編第92番

Para71750216

推定作意
46歩、55玉、45飛、54玉、44飛、同玉、54飛、同玉、36馬、55玉、
45馬、64玉、63と
まで13手詰


52飛、53歩合、43飛成、同玉、25馬、54玉、36馬、43玉、53飛成、同玉、63馬、44玉、45馬、43玉、55桂以下。

 邪魔駒消去と絡めて飛二枚を捨てる狙いだと思いますが…。



將棋王玉編第93番

Para71750217

82銀成、同と、81桂成、同玉、71龍、同玉、62角、81玉、71飛、92玉、
84桂、83玉、95桂、93玉、91飛生、92歩合、同桂成、同と、94歩、82玉、
71飛成
まで21手詰

 この図の作意は推定ではありません。『將棋王玉編』には解答がありませんが、『琇玉篇』に同一図があり、作者自筆の解答があります。



將棋王玉編第94番

Para71750218

推定作意
26金、14玉、15金、同玉、26銀、14玉、13と、24玉、23と、同玉、
35桂、13玉、33飛成、23歩、同桂成、同飛、14歩、同玉、34龍、13玉、
35角、24桂、25桂、14玉、15銀、同玉、24角、同飛、27桂、14玉、
26桂
まで31手詰

14と、同玉、34飛成、24銀合、25銀、13玉、24銀、同飛、25桂、同飛、14銀、23玉、32龍以下。

 四桂が並んだところで幕。これが作意かどうか…。



將棋王玉編第95番

Para71750219_2

15馬、同玉、27桂、同と、35龍、同歩、16飛、24玉、15角、14玉、
33角成、25玉、34馬
まで13手詰

16玉、25銀、27玉、16角、26玉、36飛、15玉、24銀、14玉、25角、同玉、34龍、14玉、16飛まで4手変長(歩余り)

 詰パラ1971年3月号の図は誤りで、これが
『將棋王玉編』第95番です。『琇玉篇』に同一図と解答があります。



將棋王玉編第98番(酒井桂史作品集第92番)

1566

34飛、25玉、35飛、16玉、36飛、25玉、26飛、15玉、56飛、26歩、
25金、同玉、26飛、15玉、66飛、26歩、25金、同玉、26飛、15玉、
76飛、26歩、25金、同玉、26飛、15玉、86飛、26歩、25金、同玉、
26飛、15玉、96飛、48成桂、16歩、同成銀、24角、25玉、26歩、同成銀、
同飛、同玉、35角、36玉、37銀打、25玉、26銀、16玉、17銀、15玉、
24角、25玉、26歩、36玉、37歩、45玉、55成桂
まで57手詰

 この図は紹介済み。『將棋王玉編』には解答が付いています。なぜか第99番の解答が先で、
98番はそのあとになっています。
 『將棋王玉編』第66番(中合入り馬による連取り)の姉妹作でしょう。雑誌に発表されていないのは不思議です。



將棋王玉編第99番(酒井桂史作品集第62番)

062

53桂、42玉、51馬、同玉、61龍、42玉、41龍、33玉、34歩、23玉、
43龍、12玉、13歩生、21玉、22歩、同玉、33歩成、13玉、14歩、12玉、
22と、同玉、34桂、21玉、22歩、12玉、13龍
まで27手詰

 攻方歩不成。やや単調な手順です。



 以上、『將棋王玉編』の雑誌未発表作は、イロハ字図26局を除くと今のところ14局ということになります。

2016年10月23日 (日)

『將棋王玉編』の雑誌未発表作 その3

將棋王玉編第17番(酒井桂史作品集第95番)

095  

49金、同玉、58銀、同玉、69角、59玉、48銀、49玉、58角、48玉、
49飛、38玉、39飛、27玉、37飛、26玉、29龍、15玉、24龍、同玉、
33飛成、14玉、15歩、同玉、35龍、25飛合、27桂、14玉、15香、同飛、
同龍、23玉、24飛、32玉、12龍、41玉、44飛、43香合、53桂生、51玉、
61桂成、41玉、43飛成、同桂、51成桂、同玉、53香、61玉、52龍、71玉、
81と、同玉、72金、92玉、73金、93玉、92龍、同玉、83歩成、81玉、
72金
まで61手詰


53飛、32玉、12龍、22歩合、52飛成、42銀合、22龍、同玉、42龍、32飛合、33桂成、13玉、22銀、12玉、11銀成、13玉、12成銀、同飛、14歩、24玉、44龍以下。

 今一つ主張がハッキリしない龍追いだと感じます。58角が残るのも残念なところ。




將棋王玉編第23番(酒井桂史作品集第12番)

012

32銀、同玉、43歩成、同歩、31飛、同玉、86角、同龍、75馬、同龍、
22歩成、41玉、42歩、51玉、61と、同玉、71歩成、51玉、41金、62玉、
72と引、同龍、同と、同玉、92飛、82歩、同飛生、61玉、62歩、71玉、
81飛成、62玉、63歩、73玉、84龍、72玉、82龍、61玉、62龍
まで39手詰

 この図も紹介済みです。『將棋王玉編』第15番の姉妹作ですね。龍を連続で捨てるのに対して、本局は角馬連続捨て。意味付けは同じ打歩詰回避です。



將棋王玉編第91番

 「九〇番迄の作品と九一番以降の作品では、駒文字の書体が明らかに違っており、しかも、九一番からは詰手順の記入もありません。…九一番以降は前田三桂翁が追記したものと見る事ができます」(大塚播州氏・詰パラ1971年3月号)。
 「九一番からは詰手順の記入もありません」というのは正確ではなく、98番、99番は詰手順の記載があります。駒文字の書体が違うのと同様に手順の字も違います。
 山村兎月が作成、頒布していた写本は全部が手書きなのではなく、作品の部は印刷された盤面に駒文字印を押したものです。手順は手書きですが「第○番」の部分は印押しです。

Para71750215_2

 第91番の図はこうなっています。
左の図は、持駒が何枚あっても詰まないので誤図でしょう。
 削除された右の図は、将棋月報1931年7月号掲載作(
將棋王玉編第53番、酒井桂史作品集第6番)に似ています。

1065_2

94金、同玉、93金、同玉、92飛、同玉、91飛、同玉、73角、92玉、
82角成
まで11手詰

2016年10月22日 (土)

『將棋王玉編』の雑誌未発表作 その2

 『將棋王玉編』に収録された雑誌発表作ではない作品の続きです。
 清水孝晏は塚田名人(当時)宅で
『將棋王玉編』を見たと書いています(近代将棋1970年3月号「知られざる詰将棋」)。
 その後大塚播州氏の手に渡り、現在に至っています(詰パラ1971年3月号)。



將棋王玉編第10番(酒井桂史作品集第15番)

015

29金、同馬、同飛、18玉、19飛、27玉、17飛、26玉、18桂、17玉、
29桂、27玉、37飛、16玉、36飛、15玉、26角、25玉、35と、16玉、
37角、27玉、26飛、18玉、16飛、29玉、19飛
まで27手詰

 飛角がカタコト動く箱庭詰将棋。73角から28角成の筋を見せて迫りますが、27玉なら以下、26飛、18玉、16飛、29玉、19飛でその狙いが実現し、2手短くなります。
 49とは、37角、36玉、35飛、47玉、73角成、58玉、38飛とする余詰防止駒です。



將棋王玉編第11番(酒井桂史作品集第9番)

009

82歩成、73玉、55角成、84玉、73馬、同玉、83飛、74玉、66桂、同成香、
65銀、同成香、66桂、同成香、75歩、65玉、63飛成、同龍、55金
まで19手詰

 この図は紹介済みです。2種類の邪魔駒消去。



將棋王玉編第15番(酒井桂史作品集第10番)

010

72金、同玉、77飛、同と、76飛、同成桂右、82角成、62玉、63歩、52玉、
42歩成、53玉、44成桂、42玉、64馬、同成桂、43成桂、31玉、32銀、22玉、
33角、12玉、21銀生、23玉、32銀生、14玉、15角成、同玉、16香、25玉、
26銀、24玉、15銀、25玉、26金
まで35手詰

 この図も紹介済みです。縦に並んだ飛車が打歩詰の元凶になっているため、72玉のタイミングで2枚とも捌いてしまわないといけないというしくみです。



2016年10月17日 (月)

『將棋王玉編』の雑誌未発表作

 1943年頃に頒布されたという山村兎月編『將棋王玉編』100局(2局は重複しているので実質98局)には雑誌未発表作が最大で39局あります。最大、というのは「將棊の國」に掲載された作品が不明だからです。
 これらの作品は雑誌からでないとしたらどこから来たのか。当然、酒井桂史自筆作品集『王玉篇』50局から来たというのが自然でしょう。
 このうち第25番から第50番はイロハ字詰(ノまで)ですが、『王玉篇』にもあったことは、さまざまな証言から確実だと思われます。高橋與三郎は
「詰上がり片假名文字形態に構成したる詰手既に二十六局も成案ありしといふ」とハッキリ26局と書いています。
 現在確認できる雑誌発表作の最も古いものは1925年1月号掲載作です。『王玉篇』は1925年には出来ていたと言われていますが、全局が『王玉篇』作成時点では未発表作だったかも知れません。残る24局のどれが『將棋王玉編』に組み込まれたのか? それが分かれば苦労はしませんが。(笑)

『將棋王玉編』第3番(『酒井桂史作品集』第13番)

013

72と、同玉、63金、同玉、54銀、同玉、66桂、同と、43飛成、63玉、

36角、74玉、63角成、同玉、54龍、72玉、63龍、同玉、52馬、54玉、
46桂、44玉、45歩、35玉、25馬、46玉、47馬、35玉、37香、36桂合、
同馬、34玉、35馬、43玉、44歩、同銀、同馬、同玉、45銀打、43玉、
55桂
まで41手詰

解答は54銀とのみ。成っても成らなくても良い。


54龍は、同歩、52馬、72玉で逃れ。
『酒井桂史作品集』では玉方32歩脱落のため36歩合で詰まない。

 邪魔駒だらけの図です。43銀は52馬から85馬とする変化の邪魔。47飛と58桂は69角の邪魔。47飛は43飛成となった時点では34馬の邪魔なので、歩を取ったあとの角で引き戻し、54→63と押し込むのが良い味。



『將棋王玉編』第4番(『酒井桂史作品集』第11番)

0072


13香成、同玉、14銀、同玉、15金、23玉、32馬、34玉、26桂、同と、
46桂、同銀、24角成、44玉、33馬引、53玉、42馬、44玉、33馬左、53玉、
44馬、52玉、53馬、同玉、42馬、44玉、45歩、35玉、24馬、36玉、
46馬、27玉、28銀、18玉、19銀、27玉、28馬、36玉、46金
まで39手詰

 この図は紹介済みの將棋月報1925年6月号作。上記作品に似た雰囲気があります。
 発表図は玉方58とがなく、21馬、23玉、13香成、34玉、43馬、同歩、45銀、25玉、29香、28角合、同香、27歩合、15飛、26玉、48角以下の余詰がありました。

月報1928年8月号
加藤文卓
此餘詰ある事を作者酒井氏に通知しました所同氏よりは極めて謙譲なる御解答に接しました而して此圖に玉方「五八と」を加へたならば餘詰は消失すると思ふ(即ち前記四八角打の手がなくなるから)との御意見を寄せられました


『將棋王玉編』第5番(『酒井桂史作品集』第63番)

063


54角左成、42玉、52角成、33玉、42馬、22玉、31馬、同金、同飛成、13玉、
22銀、14玉、36馬、25金合、13金、同銀、同銀成、24玉、33銀、13玉、
22銀生、14玉、11龍、24玉、15龍、同玉、27桂、16玉、19飛、17合、
28桂
まで31手詰

19飛は作意。

52角成、44玉(52同玉は43銀から41飛成)、34馬、55玉、54角成、46玉、41飛成、57玉、58銀、同玉、36馬、68玉、78金以下の余詰。

 この図は前半の馬の動きに面白さはありますが、後半は腰砕けの感。


2016年10月15日 (土)

『將棋王玉編』と『酒井桂史作品集』対比表

 今回は、「詰棋めいと」第10号12頁、『將棋王玉編』と『酒井桂史作品集』の対比表の検討です。着色は訂正が必要な箇所。

將棋王玉編 酒井桂史作品集 初出誌 備考 訂正事項
1 90 將棋之友1925/06
2 4 將棋之友1925/03
3 13
4 11 將棋月報1925/06
5 63
6 3 將棋之友1925/04
7 93 將棋月報1934/12
8 將棋月報1934/05 初出誌あり
9 將棋月報1926/02 初出誌あり
10 15
11 9
12 74 將棋新誌1925/08
13 70 將棋月報1934/06
14 7 將棋月報1925/08
15 10
16 76 將棋月報1925/07
17 95
18 22 將棋新誌1925/07 86と重複
19 20 將棋月報1925/03
20 51 將棋新誌1925/04
21 89 將棋月報1925/12
22 81 將棋月報1925/09
23 12
24 8 將棋月報1932/09
25 25 イの字
26 26 ロの字
27 27 ハの字
28 28 ニの字
29 29 ホの字
30 30 ヘの字
31 31 トの字
32 32 チの字
33 33 リの字
34 34 ヌの字
35 35 ルの字
36 36 ヲの字
37 37 ワの字
38 38 カの字
39 39 ヨの字
40 40 タの字
41 41 レの字
42 42 ソの字
43 43 ツの字
44 44 ネの字
45 45 ナの字
46 46 ラの字
47 47 將棋月報1935/02 ムの字
48 48 ウの字
49 49 ヰの字
50 50 ノの字
51 83 將棋月報1931/09
52 5 將棋月報1931/07
53 6 將棋月報1931/07
54 2 將棋月報1932/03 100と重複
55 18 將棋月報1932/04
56 57 將棋月報1932/05
57 17 將棋月報1932/12
58 96 將棋月報1931/03 初出誌あり
59 66 將棋月報1931/05
60 72 將棋月報1931/06
61 14 將棋月報1931/07
62 100 將棋月報1931/08
63 86 將棋月報1931/10
64 65 將棋月報1931/11
65 16 將棋月報1931/12
66 99 將棋月報1928/08
67 56 將棋月報1927/05 ×將棋月報1932/02
68 1 將棋月報1932/06
69 將棋月報1932/07
70 61 將棋月報1927/06
71 78 將棋月報1926/05
72 79 將棋月報1926/10
73 94 將棋月報1926/08
74 80 將棋月報1926/07
75 67 將棋月報1926/09
76 85 將棋月報1927/03
77 82 將棋月報1926/12
78 98 文藝倶楽部1927/11
79 53 將棋新誌1925/02
80 68 文藝倶楽部1927/11
81 71 將棋月報1925/01
82 91 將棋月報1926/06
83 88 將棋月報1934/01
84 23 將棋月報1934/02 75→23、×將棋月報1935/01
85 55 將棋新誌1925/02
86 22 將棋新誌1925/07 18と重複 12→22
87 將棋新誌1926/08
88 69 將棋新誌1926/09
89 59 將棋新誌1926/11
90 77 將棋新誌1926/08
91
92
93
94
95
96 60 將棋新誌1925/06
97 將棋月報1933/10 初出誌あり
98
99
100 將棋月報1932/03 54と重複

2016年10月13日 (木)

『酒井桂史作品集』と『將棋王玉編』対比表

 『酒井桂史作品集』(1976・野口益雄刊)と『將棋王玉編』(1938年頃・山村兎月写本)の対比表は「詰棋めいと」第10号(1990年3月)20、21頁に掲載されていますが、いくつかの誤りがあります。
 それを訂正したのがこの表です。着色した部分が訂正箇所。

酒井桂史作品集 將棋王玉編 初出誌 備考 訂正事項
1 68 將棋月報1932/06
2 54・100 將棋月報1932/03 重複 ×將棋月報1932/04
3 6 將棋之友1925/04
4 2 將棋之友1925/03
5 52 將棋月報1931/07
6 53 將棋月報1931/07
7 14 將棋月報1925/08
8 24 將棋月報1932/09
9 11
10 15
11 4 將棋月報1925/06
12 23
13 3
14 61 將棋月報1931/07
15 10
16 65 將棋月報1931/12
17 57 將棋月報1932/12
18 55 將棋月報1932/04
19 將棋月報1934/07
20 19 將棋月報1925/03
21 將棋月報1931/09
22 18・86 將棋新誌1925/07 重複
23 84 將棋月報1934/02 なし→84
24 將棋月報1926/02
25 25 イの字
26 26 ロの字
27 27 ハの字
28 28 ニの字
29 29 ホの字
30 30 ヘの字
31 31 トの字
32 32 チの字
33 33 リの字
34 34 ヌの字
35 35 ルの字
36 36 ヲの字
37 37 ワの字
38 38 カの字
39 39 ヨの字
40 40 タの字
41 41 レの字
42 42 ソの字
43 43 ツの字
44 44 ネの字
45 45 ナの字
46 46 ラの字
47 47 將棋月報1935/02 ムの字
48 48 ウの字
49 49 ヰの字
50 50 ノの字
51 20 將棋新誌1925/04
52 將棋月報1927/04 ×將棋月報1931/09
53 79 將棋新誌1925/02
54 85→なし
55 85 將棋新誌1925/02 67→85
56 67 將棋月報1927/05 ×將棋月報1932/02
57 56 將棋月報1932/05
58 將棋月報1933/06
59 89 將棋新誌1926/11
60 96 將棋新誌1925/06
61 70 將棋月報1927/05 ×將棋月報1927/06
62 99 5→99
63 5 なし→5
64 シの字
65 64 將棋月報1931/11
66 59 將棋月報1931/05
67 75 將棋月報1926/09
68 80 文藝倶楽部1927/11
69 88 將棋新誌1926/09
70 13 將棋月報1934/06
71 81 將棋月報1925/01
72 60 將棋月報1931/06
73 將棋月報1943/10 84→なし、×將棋月報1935/01
74 12 將棋新誌1925/08
75
76 16 將棋月報1925/07
77 90 將棋新誌1926/08
78 71 將棋月報1926/05
79 72 將棋月報1926/10
80 74 將棋月報1926/07
81 22 將棋月報1925/09
82 77 將棋月報1926/12
83 51 將棋月報1931/09
84
85 76 將棋月報1927/03
86 63 將棋月報1931/10
87
88 83 將棋月報1934/01
89 21 將棋月報1925/12
90 1 將棋之友1925/06
91 82 將棋月報1926/06
92 98
93 7 將棋月報1934/12
94 73 將棋月報1926/08
95 17
96 58 將棋月報1931/03 初出誌あり
97 將棋月報1943/10 初出誌あり
98 78 文藝倶楽部1927/11
99 66 將棋月報1928/08
100 62 將棋月報1931/08

 52、56番は「甲矢龍之介」名義が早い。2、61、73番は初出年月誤り。
 磯田征一氏に感謝。

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